南蛮漬けは片栗粉でなく小麦粉を使え!

タレがジュワ〜っと染み込んだ南蛮漬け。片栗粉ではなく小麦粉をまぶし、低温で揚げることで、香ばしく中骨までやわらかくなった南蛮漬けが出来上がります。

南蛮漬けは油で揚げたり焼いたりした素材を、ネギや唐辛子の入った合わせ酢につけた料理。このレシピはご飯のおかずにするために酸味を控え、甘みと塩味をしっかり目にしました。

魚の南蛮漬けが、昔よく作られていたのは、多少鮮度が落ちた魚でもおいしくできるからです。油で揚げることで臭みのある水分を抜き、酸を加えることで臭みの原因であるトリメチルアミンという成分を中和します。じつに巧妙な料理法です。とはいえ現在流通している鮮度のいい魚を使えば昔よりずっとおいしくつくれるのも確か。今回は小鯵(豆鯵)でつくりますが、イワシやサンマ、サバなどの他の種類の青魚、あるいは鶏の胸肉などを使っても同様につくれます。骨つきの魚を揚げる場合は今回のように低温から揚げ、切り身の場合は170度くらいのやや高めの温度でカラリと揚げましょう。


小鯵の南蛮漬け

材料

小鯵…200g
小麦粉…適量
揚げ油…適量

■南蛮酢
米酢…50cc
水…150cc
昆布…5×5cm角
砂糖…大さじ3
醤油…大さじ2
酒…大さじ1
塩…小さじ1/2
たまねぎ…半分(100g程度)
粉唐辛子…適量(または鷹の爪1本)


1.南蛮酢をつくる。ボウルに米酢、水、昆布、砂糖、醤油、酒、塩を入れてよく混ぜ合わせる。砂糖が溶ければOK。


2.玉ねぎを粗いみじん切りにして、1の合わせ酢に加える。粉唐辛子か鷹の爪(ハサミで小口に切る)を加えれば南蛮酢の出来上がり。


3.小鯵を処理する。(ついていれば)包丁でうろこを引き、胸びれの位置を目安に斜めに包丁を入れて、頭を切り落とし、次に腹の部分をまっすぐに切る。


4.包丁の刃先で内蔵をかきだし、お腹のなかを流水できれいに洗い、キッチンペーパーで水気を拭き取っておく。


5.揚げ油を準備し、4の鯵に小麦粉を薄くはたき揚げていく。小麦粉をまぶす時はお腹の内側にもきちんと小麦粉がつくようにしてから、両手で叩くようにして余分な粉を落とすとよい。油の温度は140℃くらいが目安。火加減は弱火で、時間をかけて温度を上げながらゆっくりと揚げていく。(Tips 1 片栗粉ではなく、小麦粉を使う理由)


6.あまり触らず4分経ったら裏返し、2分30秒ほど経過し、油に浮かぶ泡が少なくなり、表面がこんがりしてきたら、火を強め、油を切りながらとりだす。(Tips 2 南蛮漬けにすると骨まで食べられる理由)

取り出すときは鯵の一部分を油の表面につけるようにするとそこから油が流れるので、油をきれいに切ることができます。


7.揚げたての鯵を2の南蛮酢に漬ける。1時間以上経ったら食べごろ。


★レシピの解説

【Tips 1】片栗粉ではなく、小麦粉を使う理由

魚を揚げるときは「片栗粉をまぶす派」と「小麦粉をまぶす派」の二つの流派があります。どちらも主成分はデンプンですが、片栗粉が100%デンプンなのに対し、小麦粉にはタンパク質が含まれていることが特徴です。このタンパク質が揚げたときに独特の香ばしさと味をつくります。一方の片栗粉には味はありませんが、揚げたときにカリッとした食感が出るのが特徴。南蛮漬けの場合は酢につけてしまうのでカリカリ感を求めても仕方がなく、小麦粉を使うのがベターだと思います。

【Tips 2】南蛮漬けにすると骨まで食べられる理由

南蛮漬けは、「油で揚げる」「酢に漬ける」という二つの工程を踏むことで、中骨やぜいご(尾に近い側面にある刺のような鱗)もやわらかくなり、食べることができます。魚の種類によって異なりますが、魚の骨は肉と比べるともろい(カルシウムの石灰化の度合いが低く、骨と骨のあいだをつなぐコラーゲンも弱い)ので、加熱を続けると食べられるようになります。

ただ、高い温度で揚げると先に表面にこんがりとした焦げ目がついてしまい、骨まで熱を伝えることが難しくなってしまいます。そこで骨付きの魚はやや低温からゆっくりと温度を上げながら加熱していくのです。

その後、酢につけることで骨のリン酸カルシウムが酸によって溶け、食べられるほどやわらかくなります。骨をやわらかくしようと加熱した魚の身はややパサパサになってしまいますが、そこに南蛮酢が浸透することで、しっとりとおいしく食べることができる、というわけ。イメージとしては油で揚げることでつくられた隙間に酸が入り、それが骨を溶かす感じです。

もしも、小鯵(豆鯵)が手に入らなくても、普通の鯵でもおいしくつくることができます。
その場合はやや高温の油(170℃)でカラリと色よくなるまで揚げましょう。

その場合はすでにおろされた状態のものを購入するか、魚屋さんに三枚におろしてもらうように頼めばいいでしょう。

普通の鯵の場合はぜいごが口に刺さるので、とりのぞくのが普通です。

一枚の切り身を半分に切るくらいが適当な大きさだと思います。あとは同様に粉を振ってから油で揚げ、南蛮酢に漬ければOKです。この場合は低温の油ではなく170℃〜180℃くらいの温度でさっと揚げたほうが魚の身から水分が失われず、おいしくできます。表面にこんがりとした焦げ目がついたら引き上げてください。


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食の博識、樋口直哉さん(Travelingfoodlab.)が、味噌汁、ハンバーグ、チャーハンなどの定番メニューを、家庭でいちばんおいしく作る方法を紹介します。どういう理由でおいしくなるのか、なぜこの工程が必要なのかを徹底的に紹介し、...もっと読む

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コメント

megamurara 料理をしないのに料理の画像は面白くて見入ってしまいます。 17分前 replyretweetfavorite

komuneko_ しっかり揚げて酸で柔らかくするから豆アジの場合はぜいご取らなくて良いのかな。今までちまちま取ってたけど。 約4時間前 replyretweetfavorite