2019/07/30
最近、愛犬の元気がない、毛が抜ける、皮膚が弱くなった…。「年齢のせい」と見過ごされがちな症状ですが、もしかしたら「クッシング症候群」かもしれません。ホルモンの過剰分泌が原因で起こる「クッシング症候群」とは、どのような病気なのでしょうか。獣医師の三宅先生にうかがいました。
—クッシング症候群とはどのような病気ですか?
クッシング症候群は、内分泌系の疾患の一つです。
腎臓のすぐそばに「副腎」という器官があり、そこからコルチゾールというホルモンが分泌されています。
コルチゾールは代謝に関わる重要なホルモンなのですが、それが何らかの原因により過剰に分泌されてしまい、健康に悪影響が出る疾患です。
—具体的に、どのような症状が表れるのでしょうか?
飼い主さんが気づきやすいのは多飲多尿、たくさんお水を飲んでたくさん尿を排泄する症状です。
そのほか、脱毛や皮膚の黒ずみ、呼吸が早くなる、お腹が膨れてくる、足腰が弱くなって散歩に行きたがらない、などの症状があります。
どれも加齢のせいだと思われて見過ごされやすい症状なので、注意が必要です。
特徴的な症状として、水をたくさん飲んで尿をたくさん排泄する「多飲多尿」があります。
—なぜ、コルチゾールが過剰分泌されてしまうのでしょうか?
脳下垂体、または副腎にできる腫瘍が原因です。
副腎にホルモンを出すよう司令しているのは脳下垂体です。その脳下垂体に腫瘍ができてしまうと、「ホルモンを出せ」という指令がたくさん分泌され、それにより副腎からのホルモンが過剰分泌されてしまいます。
あるいは副腎自体に腫瘍ができ、コルチゾールが過剰分泌されてしまうこともあります。
犬のクッシング症候群の場合、ほとんどが脳下垂体の腫瘍が原因だと言われています。
—クッシング症候群は、犬に多い病気なのでしょうか?
人間や猫と比較すると、犬に多い病気だと言えます。
犬の場合、500頭に1頭程度の割合で発症すると言われているので、ありふれた病気ではありませんが、とても稀な病気というわけでもありません。
—どのような犬が、クッシング症候群になりやすのでしょうか?
中齢以降(8才以上)の犬がクッシング症候群になりやすい傾向にあります。
犬種としては、プードルやダックスフンド、ビーグル、ボストン・テリアに発症が多いと言われています。
—クッシング症候群になったことで、別の病気を併発することもありますか?
脳下垂体に腫瘍ができると、神経症状を起こして夜鳴きや徘徊することがあります。これらも高齢犬によく見られる症状のため、病気だと気づかずに見過ごしてしまう飼い主さんが多いようです。
また、皮膚が脆弱化するため、皮膚感染のリスクが高くなります。
高齢犬がかかりやすい病気については、「老犬(高齢犬)のケアの基本。健康診断でかかりやすい病気をチェック」もあわせてご覧ください。
—どのような症状が気になったら、受診すべきでしょうか?
飼い主さんが気づきやすいのは多飲多尿ですが、最近元気がないな、毛が抜けるな、今までと違うな、と感じたら、健康診断をするつもりで受診することをおすすめします。
「最近、なんだか元気がない」と感じたら、クッシング症候群の可能性もあります。
—クッシング症候群と診断されたら、どのような治療を行うのでしょうか?
脳下垂体の腫瘍が原因で、その腫瘍が小さい場合は、内服薬での治療になります。
もし腫瘍が大きい場合は、放射線治療が必要です。また、脳外科手術という選択肢もあります。
しかし、放射線治療の設備がある動物病院は少なく、また、犬の脳外科手術も行える施設や獣医師が限られており、大変難しいのが現状です。
ほとんどの場合は、そのときにできる治療を、獣医師と相談しながら行うことになるでしょう。
また副腎の腫瘍が原因の場合は、外科手術で腫瘍を切除します。腫瘍が良性であれば寿命まで元気に過ごすことができるケースも多いですが、悪性の場合は予後が悪いこともあります。
異変を感じたら、「健康診断を受ける」気持ちで受診してみましょう。
—副腎を切除しても、健康に影響はないのでしょうか?
副腎は腎臓同様に二つある器官なので、一つ切除しても問題ありません。
—クッシング症候群だと診断されたら、どのような生活を送れば良いのでしょうか?
特に何かを変える必要はありません。食事も運動も、今まで通りのことを続けてください。
定期的な健康診断が、早期発見につながります。
—クッシング症候群を予防する方法はありますか?
腫瘍性の疾患のため、予防方法はありません。定期的に健康診断を受け、早期発見を心がけることが重要です。
クッシング症候群は、食欲の低下や、痩せる、痛がるなどの激しい症状がないため、見過ごされやすい病気です。
愛犬の元気がない、覇気がないと感じたら、年齢のせいだと思わずに一度受診してみましょう。
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