記念すべき第1回東京国際映画祭は、世界の映画界から待ち望まれた日本開催の国際映画祭として盛大に幕を開け、オープニングを飾った黒澤明監督の「乱」を含む140本の作品が上映されました。開催にあたっては、世界の映画人からメッセージが届けられました。
開催エリアの渋谷では、初日にパレードが行われ、大通りに面した屋外ステージで連日イベン トが催されるなど、街が映画祭一色となりました。また駅前広場には、歴史に名を残す映画人たちのイラストが焼きこまれた陶板のモニュメントが飾られ、映画 評論家・淀川長治さんによる除幕式が行われました。
当時、渋谷区の映画館は同年に常設映画館としてオープンしたユーロスペースや、シネセゾン渋谷を含め16館。東京国際映画祭は今や世界有数の“映画の街”となった渋谷とともに、その歴史を歩み始めました。
ヤングシネマ'85受賞結果
応募総数519本(40ヵ国)
※コンペティション形式の上映部門「ヤングシネマ’85」では上映作品とそれぞれの監督から提出された次回作の企画書を対象に審査が行われました。
大賞・都知事賞
相米慎二監督 (「台風クラブ」)
最優秀監督賞
ペーテル・ゴタール (「止った時間」)
小津安二郎記念賞
アリ・オズゲントルク監督 (「At」)
審査員特別功労賞
フランソワ・ブーヴィエ/ジャン・ボードリー監督 (「ジャックと11月」)
ヘクトール・バベンコ監督 (「蜘蛛女のキス」)
「乱」 黒澤 明 監督
「ビルマの竪琴」 市川 崑 監督
ジャンヌ・モロー Janne Moreu
女優/映画監督 ・フランス
映画人は作品を観て素晴らしいと思った他国の映画人に直接会って話をしてみたいと思うものです。国際映画祭は、そんな映画人たちの欲求を満たしてくれる最良の場です。東京に国際映画祭が誕生するのは大賛成で、むしろ遅すぎたとも感じます。おそらく、日本の映画人が考えている以上にこの映画祭は、日本の若い才能あるシネアストたちが世界に進出するきっかけのサロンになるでしょう。
ベルナルド・ベルトッチ Bernardo Bertolucci
映画監督・イタリア
東京国際映画祭が開催されるというニュースは私に大きな好奇心を呼び起こしました。日本映画が世界中の映画人にとって大きな存在となっていることは言うまでもありません。
ミケランジェロ・アントニオーニ Michelangelo Antonioni
映画監督・イタリア
日本の有名な映画作家たちが西洋に与えた影響は決して過小評価されるべきものではありません。東京国際映画祭は、西洋と東洋の映画作家たちが出逢うことのできる絶好の機会といえるでしょう。
ミレーヌ・ドモンジョ Mylene Demongeot
女優・フランス
他の映画祭とは一味違うユニークな映画祭を作り出してくれるよう望みます。
マリア・シュナイダー Maria Schneider
女優・フランス
特に私には「女性映画」のセクションが計画されていることが嬉しいです。日本にもすばらしい女性映画があると私は信じており、東京国際映画祭をきっかけに世界に紹介されることを願っています。
スティーヴン・スピルバーグ Steven Spielberg
映画監督・アメリカ
あえて要望を言わせていただければ、この映画祭が単に賞を競い合うものではなく、むしろ分かち合いと暖かいコミュニケーションの通い合う場にしていただきたいと思います。
ルネ・クレマン Rene Clement
映画監督・フランス
日本にとうとう世界に開かれた窓“東京国際映画祭”が誕生することを、心の底から祝福したいと思います。
コンスタン・コスタ=ガヴラス Constantin Costa-Gavras
映画監督・フランス
フランスの映画人は、日本の映画人に対して大いなる敬意と同時に、興味を抱いています。ようやく、日本に定期的な国際映画人の交流の場ができることを、ここに祝福したいと思います。
イエジー・カワレロウィッチ Jerzy Kawalerowicz
映画監督・ポーランド
今まで日本で何故国際映画祭が開かれなかったか、これは私たちの長い間の疑問でしたが、ともかく今はその開催のニュースを聞いて私だけでなく、全ポーランド映画界をあげて歓迎します。
イシュトヴァン・サボー Istvan Szabo
映画監督・ハンガリー
東京国際映画祭は、私たちが長年にわたって待望していたものです。それがこのような充実した内容で実現するということは実にすばらしいことで、ハンガリーとしては全映画界と文化界をあげて歓迎します。
シドニー・ルメット Sidney Lumet
映画監督・アメリカ
日本映画が私たちに与えてくれたような、その質の高さを誇る映画祭が開催されることを望みます。その時、世界中の人々は興奮をおぼえることでしょう。