◆豪コーフィールドC(2014年10月18日)
様々な苦労の末につかみ取った栄冠だった。梅田厩舎にとって、アドマイヤラクティの豪州遠征は初の海外遠征。「最初にオーストラリアを経験していれば、その後に他馬で経験した香港遠征なんて何も厳しくはなかった」と梅田調教師は振り返る。
日本のカイバだけでなく、竹ぼうきすら現地に持ち込めなかった。検疫を行っていたウェルビー競馬場は硬い芝コースでの調整のみ。競馬場から出る時は、そのたびにシャワーを浴びなければならない。多いときは一日に3回も…。人にも馬にも手間のかかる厳しい環境だった。
そのなかで迎えたコーフィールドC。中団で脚をためていた直線で大外へ持ち出されると、横一線の追い比べをねじ伏せるように脚を伸ばし、先頭でゴール板へ駆け込んだ。厩舎にとってもG1初勝利。「目の覚めるような末脚だったね。適度に時計がかかる馬場や展開など、色々な要素も向きました」と梅田師は振り返ったが、直後に「ただね…」と肩を落とした。
続くメルボルンCのレース直後、ラクティは突然の心臓麻痺でこの世を去った。しかし、異国の地で強烈な輝きを放った一世一代のパフォーマンスは、国内外で多くのファンの脳裏に刻み込まれている。(山本 武志)