キセキ、フィエールマン、ブラストワンピースの日本調教馬3頭が挑む凱旋門賞(10月6日)が迫ってきた。世界最高峰の決戦へ向け、これまで海外G1を制した調教師がその勝利への道を振り返る「海外遠征見聞録」をエリア別で4回にわたって連載する。1回目は、今年のドバイ・ターフを勝ったアーモンドアイの国枝栄調教師(64)。
今春のドバイ・ターフで海外遠征初挑戦で勝利を収めたアーモンドアイ。それまでG1・4勝を含む6連勝中と国内で敵なしだったスーパーホースにとっても、海外への飛行機での輸送や環境の変化など“初物尽くし”。出国前に、陣営は早々と課題に直面した。
美浦トレセンの検疫厩舎は施設が古く、通常使う厩舎より造りが小さい。調教時間も別に設定され、周囲に馬がいない環境に、出国前の1週間は神経質な面を見せて、少しカイバ食いが落ちたという。国枝調教師は「俺がトレセンに入った40年前に比べれば、500キロが当たり前になるくらい日本の馬も大きくなった。(検疫厩舎など)環境面で直せるものは、改善していくべきだと思う」と、改めて今回の経験を踏まえて提言した。
その一方でドバイ到着後は「馬房がゆったりしていて、ひと回り広くて天井も高い。エアコンもあり、いい感じでいけた。輸送は、すごく手慣れたプロのスタッフで全く問題はなかった」と、力を発揮できる状態に整えやすかったと振り返る。主催者が指定する輸送業者が十分なノウハウを持つ点も心強かった。
「だんだん(遠征のノウハウの)質が上がってきている。どうしても昔は経験がないから、試行錯誤でやってきただろうから」と国枝師。多くの日本馬が挑戦を重ねてきた経験が大きな財産となっている。(坂本 達洋)