まさにパイオニアである。今夏のディアドラのナッソーS優勝まで、日本調教馬の海外G1制覇は38回。記念すべき1勝目は1998年8月、仏ドーヴィル競馬場で行われたモーリスドゲスト賞。森秀行調教師(60)=栗東=が管理するシーキングザパールだった。
「当時は私たちスタッフで、何でもやりました。車の手配から電話の取り付けまで。今のようにレーシングマネジャー的なスタッフを雇うこともなかった。大変なのは言葉の壁。しんどいですが、なんとかなるものです」
翌99年にアグネスワールドで仏アベイドロンシャン賞、2000年には英ジュライCを優勝。2頭で英仏のG1を3度優勝することになるが、原動力はシンプルだった。日本と同じ坂路調教。イギリスのニューマーケットでの調整だったという。
「フランスのシャンティイは素晴らしい調教施設ですが、平坦コースが主体で、ダートコースのほこりが気になった。正直、仕上げる自信がありませんでした。ニューマーケットなら栗東の坂路と同じ調教ができる。輸送も問題なくいきました。ドーバー海峡のフェリー移動を含めても約8時間でフランスへ移動できました」
今年はブラストワンピースとフィエールマンが、ニューマーケットから大舞台へ挑む。「ニューマーケットから凱旋門賞へ出走するのは、今回が初めてでしょう。ディアドラも滞在して好結果が出ている。楽しみですね」。そんな森調教師も今秋、マテラスカイでアメリカ最高峰のBCスプリントに挑戦する。歩みは止めていない。(吉田 哲也)=おわり=