厚労省 麻薬取締部 捜査企画課
青山樹
青山商事の御曹司。マトリのエース。あおぴょんという名前で料理ブログを運営しているが、本人は何としてもバレたくない様子。字が壊滅的に下手。青山商事が大森製薬に出資していたことから、製薬会社の研究から生み出された麻薬について個人的に調べていた(S1-93)。
関大輔
麻薬取締部 捜査企画課の課長。毎週金曜日は夜回りをして、少年少女を健全な道へ正す活動を行っている。これは自身が過去に犯した過ちを償う為、更には道を正してくれた人物の「真似事」に過ぎないと本人は語る。スタンドの立ち上げに関わっているものの、スタンドに所属する事は拒否(S1-2)。自身の代わりに泉をスタンドに推薦した(S1-2)。
今大路峻
米国の麻薬取締局DEAの捜査官。日本には捜査の一環で来ている。マトリ所属では無く、物腰柔らかな姿も全て偽り。本来は口が悪く、ハニートラップが得意な汚部屋の主。泉をDEAへと連れて帰り、彼女の細胞を摂取し、麻薬に対する特効薬の開発を進めることが彼に課されたミッション(S4-36)。育ての親は叔父であるケン。
夏目春
夏八製薬の御曹司。風邪薬依存性。飲まないとストレスで爪を噛んでしまう。兄がいる。ミスター定時。情報に鋭く、名無し事件に関しても詳しい情報を握っている(S1-73等)が、山崎カナメや、服部耀、桧山貴臣には劣る。自宅は無く、ホテル住まい。
由井孝太郎
驚きの執着心で泉の存在を見つけ出したマッドサイエンティスト。天才だが変人。常に泉のDNAを求めている。書類を片す、現場に出る、などの実働はあまりせず、ラボに引きこもることが多い。射撃が得意で、外さない自信がある(S2-54)。プラスやプラスゼロの情報を持ってくるように指示したのは彼(S1-72等)。また、SQUAREの研究データ解析を担当したのも彼である(S3-140)。渡部悟
外務省勤務の外交官。関大輔とは同期。早乙女郁人は大学の後輩(S3-76)。祖父は総理大臣だった(S3-76)。父は現職の官房長官だが、その事をわざわざ人には話していない(S3-77)。数年前、フランスで泉と一度会っている(S3-79)。独自の人脈と情報網を持つ、食えない男。酒は飲めない。服部耀に依頼され、突然消えた宮瀬豪の行方を追っていた(S3-80後)。泉玲
薬効体質を買われ麻薬取締部捜査企画課に入省。本作のヒロイン。以前は夏八製薬の薬局で薬剤師として働いていた。関大輔に推薦してもらい、スタンドのメンバーに立候補する。最初は仮所属とスカウト担当だったが、全ての人物のスカウトを終え、現在は本所属。警視庁 刑事部 捜査一課
朝霧司
捜査一課のエース。青山樹と同期。クライナーという犬を飼っている。ジャンクフードが好き。弟がいた。大事な人を喪う怖さを知っているが故に過剰になる。生きる為に警察とは真逆の道を歩んでいたこともある。S1-6で出た噂はあながち間違いではない。荒木田蒼生
一匹狼で女嫌い。昔はバスケをやっていたが、一人で出来ないことは全て手放した(S1-12)。服部耀には「蒼生はいい子だよ」と評価されている(S1-14)。バディを組むのを捜一の刑事たちからとことん嫌がられているが、本人はその気持ちを理解しているし、自分も誰かと組みたい訳では無いので、大して気にしていない。都築誠の大ファンで、ファンクラブ会員。菅野夏樹
若手のホープ。結構情報通で、明るく振る舞いつつも、相手をとことん追い詰める饒舌者。通りすがりの槙慶太に対して、畳み掛けるように名無し事件について問い詰めた(S1-74)。泉に対しては気さくで優しく、色々な秘密も暴露しがち。無痛症で、誰かを庇って怪我をするのは自分の役目だと思っていた(S2-35,S2-95)。特撮オタクで、ヒーローに憧れて警察官になった(S2-25)。菅野にとって正義とは「正しい人の為に生きて、正しく死ぬこと」である(S2-91)。母親は菅野未守(S3-126)。彼女の息子であることはほぼ公言しておらず、親子関係を知る者は少ない。本当の両親は菅野が小さい頃に他界。母は菅野が生まれてすぐ、父はその数年後に亡くなった。母の大学の後輩であった未守に引き取られ、今に至る。服部耀
捜一の課長。名無し事件の関係者であり、スタンドの初期責任者。マイペースだが指示は的確で、仕事のできる男。高度な技術を盛り込んだメールを泉に送信したり(S1-96,S1-130)、意味深な言動を取ったりする。伊田正義の後輩。伊田の事を「俺が尊敬して軽蔑した、最初で最後の先輩だ」と表現している(S1-130後)。都築兄弟
都築誠
ベストセラー小説家。Revelの上客で、桧山貴臣とは古い付き合い(S1-60後)。沙良が入院する病院に関する情報を、桧山と定期的に取引している(S2-63)。幼い頃、弟の京介と妹の沙良に、二人を主人公にした物語を話して聞かせていた(S1-68)。中学一年生の頃に、復讐劇のサスペンスを書いたことがあり、未完の状態で伊田正義に原稿のコピーを読ませた。結末については口頭で構想を話している。原稿は返却されることなく、そのサスペンスに沿った形で名無し事件が実行された(S1-134)。誠本人は「サスペンスやミステリーは書かない。何年も前に決めた事だ。人を殺す話は、もう二度と書かない」と決意している(S1-70後)。事件以降、何度も警察から出頭要請があり、S1-91とS1-92で捜一による取調べがあったことが描写されている。また、伊田正義と今現在連絡を取っている。都築京介
若手人気俳優。常に求められ、頼りにされる兄に劣等感を抱える。伊田正義に当時とても懐いていて、信頼していた(S1-134)。嘘をつくのが得意。寧ろ癖になってしまっている。自分自身を騙していることにさえ気付いていない(S2-67)。誰かが求める自分になろうと、気付かないまま演技をしてしまう。誠について「兄貴は誤解されやすいし、よく敵も作る」と言っている(S1-78)。兄への劣等感に悩んでいた自分自身に「兄のようにならなくていい」と言ってくれた『あの人』にどうやら感謝してる模様(S1-78)。Revel
桧山貴臣
不動産王。桧山グループの社長。Revelのリーダーであり、スタンドの現責任者。服部耀とは親戚。桧山グループの経営が傾き、幼少期に極貧生活を経験した(S1-57)。その桧山グループを救ったのが九条壮馬であり、桧山は九条に対して絶大な信頼を置き、彼の姿勢を評価している。九条に恩がある為、九条にとって立場の悪い事が起きれば、惜しみなく知恵を貸し、情報も与える(S1-139)。名無し事件やスタンドについての情報はかなりのものを握っている。しかし、Revelメンバーや泉には「範囲外だ」「手を引け」「忘れろ」「口外禁止だ」などと、深入りしないよう釘を刺し続けている(S1-88等)。大谷羽鳥
IT企業の若手社長。フェミニストで、人生の退屈を凌げる面白いものを探している。情報提供で暴力団を操作して、わざと衝突を起こさせた(S1-27)。厚労省にもよく出入りをしている(S1-87)。大きな組織に属するのが性に合わない、とスタンドのスカウトを辞退した(S1-30)。泉から宮瀬の行方について依頼を受け、個人的な仕事として快諾(S3-44)。その後、伊田正義の存在や名無し事件に首を突っ込んで行き、瀬尾鳴海の元へと足を運んだり(S3-120後)、事件を単独で調べるようになる。そして、事件の真相へと一人で近づいていく。そんな彼に危機感を感じた桧山に「手を引け」と説得された際には「俺さ、Revel抜けていい?」と切り返した(S3-148)。その数日後、路上で倒れている所を通行人に発見される(S4-1)。クスリを使って急性アルコール中毒にさせられ、意識不明のまま、四日間も目を覚まさなかった。目を覚ました際に、大学以降の記憶が失くなったとされている(S4-32, S4-72)。因みに、大谷が倒れた(服部は「やられた」と発言)日は、大谷と菅野夏樹が会う約束を取り付けていた日だった(S4-19)。神楽亜貴
巨大グループ会社の跡取り。槙慶太とは幼馴染。デザイナーとしても活躍しており、働きっぷりは正に鬼。泉が受け取った不審なメール(服部が送ったもの)の解析を頼まれた際には渋々承諾。結果、痕跡もなく、アドレスも国家機密レベルの厳重なアクセスロックが掛けられており、解析を断念(S1-97)。泉から「上司からのイタズラだった」と報告された際には「ただのイタズラであんな工作するバカどこにいるの」と意見していた(S1-132)。大谷羽鳥と共に、泉から宮瀬豪の行方について依頼され、承諾する(S3-44)。しかし、槙慶太に隠し事をしている、とつつかれ、全てを白状(S3-142)。結果、名無し事件からは手を引くべきだ、と判断し、依頼の深追いを断念。槙が伊田に攫われた際、慎と神楽は会う約束をしており、もう少し時間を遅らせておけば、槙があんな目に遭うことは無かった、と未だに後悔している。その約束の時間を急かした自分に責任があると感じ、追い詰められるとその時の夢を見る。大谷が襲われてからは毎日その夢を見る生活に戻ってしまった(S4-11)。槙慶太
おもちゃメーカーの社員で役員。次期社長。神楽亜貴と幼馴染。身長が低く、それをコンプレックスだと感じている。巻き込まれ体質。名無し事件の重要参考人。逃走中の伊田正義に人質に取られ、丸一日半後に福井の敦賀港付近で無傷で解放された。当時11歳(S1-74,S1-120後)。無傷だからこそ、当時は疑いを持たれていた(S1-74)。人の顔を一度見たら忘れられない(S1-74)。菅野夏樹は「念の為、で人を殺す人間も世の中には居るから」と慎を問い詰めた(S1-75)。槙は伊田正義について「連れ回されただけ。危害を加えられたわけじゃない。寧ろ、優しい人だった」と述べている(S1-75)。九条家
九条壮馬
元財閥、九条グループの御曹司。大森製薬の常務取締役であり、筆頭株主(S1-25)。泉が大谷羽鳥に誘われた船上パーティーに参加しており、たまたま泉と遭遇した(S1-24)。大谷曰く「九条さんには深入りしないほうがいい。これからも平和な人生を歩みたいなら、ね」(S1-26)。九条家に対する黒い噂に対しても「それが真実であるかどうかは、俺達自身が知っている」と堂々とした態度を見せ、常に自分達の正当性や現在の生き方を胸を張って示している(S1-3)。持病は続発性自然気胸(S1-124)。プラスに九条家は関わっておらず、九条家が持つルートを潰す魂胆で狙われていると理解して、何も言わなかった(S1-139)。会社には出社せず、しつこい客には「会議中だ」と嘘をつき追い返す(S1-104)。プラスの流通経路や、過去の噂、大森製薬の取締役であること、プラスの名前の検索情報から、名無し事件の真犯人として疑われ続けている(S1-120後)。実際、事件後に家宅捜索を受けている(しかし、何も決定的な証拠は出て来ず、証拠不十分となった)。宮瀬豪との詳しい過去については、後述の宮瀬豪による復讐劇とその後を参照。桐嶋宏弥
九条家のボディーガード。朝霧司と過去に接点がある。勘が良く当たる。九条壮馬も桐嶋の勘を信じており、そのまま行動しろと伝えている。九条家のメンバーに対して、家族のような愛情を持ち、接している。表裏のない性格で、単純ではあるが、意外と慎重。逃亡生活中、一時的に九条家を訪れた宮瀬豪に対し、泣きながら唯一怒鳴りつけた(S3-154等)。山崎カナメ
天才高校生。クラッキングを仕事とし、父である山吉会の組長、山崎慎一郎の手伝いをしている。養子ではあるが、実際は実の親子。泉にプラスゼロの情報を渡したのは山崎である(S1-112)。一般人とは呼べない程、プラスや名無し事件についての情報を初めから握っていた(S1-112等)。瀬尾研究室の日向志音とは仲が良く、頭の良さもほぼ同じレベル。大学は医学部へと進む予定(S3-118)。宮瀬豪については又聞きしかしておらず、そこまで詳しくはない。何かを聞かれたらきちんと答えるが、冷静に物事を判断するため、情報を話したことを然るべき人物に伝えたり、取るべき行動について考察したりする。新堂清志
闇医者。九条壮馬の主治医。金を積まれれば治療する、というスタンス。九条を初めて診察したのは十年前(S1-125)。九条邸に住み始めたのは三年前(S1-125)。泉を「自滅するまで分からないタイプ。俺がそうだったように」と評する(S1-127)。泉への協力を表明した際、泉に「裏切り者には気を付けろ。優しく見える人間ほど嘘をついている。そういうものだ。この先は戦場だ。誰も信じるな、期待をするな。信じていいのは自分だけだ。そして何が起きても、その目を、耳を、塞ぐなよ」と忠告している(S1-129)。伊田正義と泉、今大路俊が鉢合わせ、伊田正義の隠れ家らしき場所へと連れて行かれた際に、九条と共に二人の前に現れた。新堂は泉に「だから忠告しただろう。裏切り者には気を付けろ、とな」と再度伝えている(S4-40後)。しかし、新堂は伊田に「脅されていた」だけであり、先の忠告も伊田に命令されての発言だった(S4-44)。宮瀬豪
九条家の使用人。九条壮馬の仕事のサポートや送迎を担当。かなりのドジっ子。植物が好きで、庭を手入れするのが至福の時間。九条とは異母兄弟(S1-144)。自身の母と宮瀬の血を狂わせた九条壮一郎を許しておらず、その憎しみは息子の九条へと向けられている(S1-145等)。復讐や過去の詳細、並びに逃亡生活の終了については、後述の宮瀬豪による復讐劇とその後を参照。瀬尾研究室
瀬尾鳴海
淑央大学に研究室を構える教授。心理学を究めた「人智を超えた人ならざる者 ダンタリオン」(S3-124)。元々は京大の医学部に在籍しており、医学へと進む道を歩んでいたが、卒業後は淑央大学院で心理学を専攻。特殊な先天性の記憶障害を持ち、自身の障害について研究した結果、脳を治すのではなく、心をコントロールすることにシフトした(S3-144)。朝霧司や服部耀と面識はあるが、服部の下の名前は「記憶できない」(S3-124)。ある晴れた日、カーテンが揺れる窓際で伊田正義と会ったことがある(S2-120後)。その記憶を繰り返し思い出しては、「思い出した事」を忘れる(S3-135)。「人の心はその人だけのもの」とし、無理に立ち入ったり、干渉したりすることを酷く嫌う(S3-124)。その為、警察から事情聴取の立ち会い要請が来ても何度も断っていた。早乙女郁人
瀬尾鳴海の助手。自分自身のキャリアを伸ばす為、コネや伝に執着している。誰より自分自身を信じているし、自分が好き。他人にロクは求めない(S3-4)。外面と素面の差が激しく、取り繕ったり、計算したりしながら生きている。幼少期、泉と同じ小学校に通っており、虐められっ子の自分を救ってくれた泉に片想いをしていた(S3-78)。泉によって当時名付けられた「ベーコンレッド」は不名誉な渾名だと思いつつも、救ってくれたことには感謝をしている(S3-97等)。宝生潔
淑央大学生。瀬尾研究室のメンバーで、動物に対する心理的なアプローチや、動向の観察を得意としている。極度のネガティヴ思考で、自分が嫌い(S3-4)。他人の真似をして、自分という存在から逃れ、うまくやり抜こうとする癖もある(S3-49)。話すと他人に笑われる、と塞ぎ込んでおり、自分らしさを見失っていたが、神楽亜貴と泉によって、少しずつ前を向き始めている。自分のことを肯定できる人を「眩しい人」と総称している(S3-54)。可愛ひかる
淑央大学生。統計学を学んでいる。人の心理やアプローチ、思考を統計化し、最も最適な自分で居ることを楽だと捉えている。数値化された無意識を意識する事が楽しいらしい。人に共感することを難しいと感じている(S3-39)。自身と「合わない」存在はテリトリーに「入れない」(S3-36)。都築京介とは雑誌モデル時代の知り合い(S3-34)。バイト先はFORILO新宿店で、店の運営元の常務は神楽亜貴(S3-48)。日向志音
淑央大学附属高校生。瀬尾研究室に出入りしている。「知ること」を求めた結果、勉強を放棄した天才。瀬尾鳴海をも超える頭脳を持っているとされる。大抵寝ている。母親はイギリス人で、元貴族。両親は駆け落ち婚(S3-107)。毎週土曜はデートの日らしく、家に居ない(S3-106)。かなり頑固で、意見を中々覆さない(S3-103)が、自分自身の中に明確なルールがあるだけで、人の話はきちんと聞くし、吟味もする。瀬尾の記憶障害を治すために京大の医学部に入ることを決めていたが、自分自身で選んだわけではないことを泉に諭され、淑央大に進むことを決意(S3-114等)。瀬尾は日向にとって良き理解者であり、ライバルであり、共に学ぶ相手である。山崎カナメとは友達で、彼を「カナ」と呼ぶ。スタンド
概要
STand Alone National Departmentの略(S1-2)。独立捜査部で完全スカウト制(S1-2)。表向きは「迷宮入りの事件の操作に当たる」機関とされている(S1-2)が、実際は名無し事件の解決の為に作られた(S1-130)。能力のある人材を日本中から集め、国と民間でエリート集団を作り、マトリでも警察でもない、第三の捜査機関として成立させる(S1-2)。メンバー
菅野未守
警察庁長官官房所属の参事官。「察庁の正義の女神」。菅野夏樹の実の母(S3-126)。しかし、菅野とは血が繋がっていない。気さくで明るい人柄だが、鋭い質問を向けてくる。スタンドの企画設立者。伊田正義とは元恋人。伊田は未守の班に所属していた。名無し事件
概要
十五年前に起きた事件。都内で身元不明の変死体が発見された。焼死体でも白骨死体でも無かったが、半年以上も被害者の身元が一切分からなかった。被害者が長い間不明だった為、名無し事件と名付けられた。容疑者は非公開となっている(S1-73)。重要参考人
プラス
正式名称はPERFECT LIGHT USE SQUARE(S1-131)。十五年前に出回っていたドラッグ。かなり一時的に出回ったのみで、情報は一切無し(S1-73)。現在出回っているプラスは、白と青の二個セットのドラッグ。白いドラッグは普通のものだが、青のドラッグは服用すると依存状態からの離脱が可能とされ、こちらも通称「ハマらないクスリ」。青のドラッグは麻薬中毒の特効薬であり、言い換えると廃人製造機(S1-62)。青のドラッグは、昔出回ったプラスとかなり似通ったもの(S1-73)。しかし山崎曰く、所詮紛い物であり、依存からの離脱は不可能(S1-112)。プラスゼロ
十年以上前に開発された幻のドラッグ。製造工程とレシピが複雑で、今では誰も作れないとされている。通称「ハマらないクスリ」(S1-112)。プラスゼロの成分とプラスの成分はほぼ同じで、プラスゼロ=プラスと言い換えても差し支えない(S1-131)。SQUARE
プラスの元になっている試薬(S3-140)。SQUAREが未だ開発段階で、未完成だったことが実験レポートに記されている。SQUAREには二種類の薬の研究データが存在しており、片方は依存から抜け出す薬、もう片方は依存させる薬である(S3-140)。依存から抜け出す薬の方は、複数の薬効に耐性を作るものとされ、言い換えると人工薬効体質を作るものである(S3-140)。上記のプラスの正式名称のSQUAREを取り、呼称しているものと思われるが、プラスとの区別が本編中であまりついておらず、曖昧かつ不明瞭。トランス・クラブ
世界最恐の麻薬密売組織。組織のトップが九条壮馬という噂がある。その噂自体は否定されているが、トップが日本人だというのは有力な説(S1-73)。宮瀬豪曰く、トランス・クラブは今後、薬効体質の泉と、薬が効きすぎる体質の九条を狙い、襲ってくる。伊田正義
事件の容疑者。元捜査一課の刑事であり、服部の先輩に当たる人物。都築沙良が被害者の事件の担当刑事だった。正義感に溢れすぎた存在。宮瀬豪の母親である宮瀬涼子に昔会っており、本人から日記を渡されている。宮瀬にはUSBを託していた。逃亡生活の際は海外で宮瀬と共に行動。時たま宮瀬に「お使い」を頼んでいた。瀬尾鳴海とは知り合いで、何度か会って話もしている。瀬尾の病状についても把握。現在は日本におり、都築誠と連絡を取っている。九条壮馬の祖父である九条源一郎の隠し子。九条壮馬の父である九条壮一郎とは異母兄弟。幼少期は壮一郎と良好な関係を築いていたが、暫く会っていない間に壮一郎の性格が激変し、それ以来は絶縁関係となっていた。
日比谷優希
事件の被害者。大森製薬の研究員で、プラスゼロの開発に関わっていた。伊田正義とは仲が良く、正義感に満ち溢れ、共に夢を見た仲間だった。プラスの研究データを持ち出した。宮瀬涼子とは学生時代からの恋人同士で、元婚約者。名無し事件の真相
日比谷優希は自殺をした。日比谷は「自分が生きている限り、最悪のドラッグが完成するという可能性を消しきれない」と思い、苦しむ。しかし、それでも日比谷はSQUAREを完全に葬ることは選ばなかった。SQUAREの存在は、日比谷だけでなく、伊田の夢でもあった為。伊田は日比谷の願望を折ろうと必死になったが、日比谷は嫌になるほど頑固で強く、結局伊田は日比谷を止めることは出来なかった。伊田は、日比谷を自分が殺した事にした上で、逃走をしている。日比谷は瀬尾と15年前程前に出会っている。京大入学前にたまたま出逢い、カフェで瀬尾の記憶について話をしている(S4-21, コーヒーの会話)。それを知った伊田は、大学在学中の瀬尾に会いに行き、自身と日比谷の話をする。日比谷の死と、伊田自身が犯人となっている現状を聞いた瀬尾は心を揺さぶられ、この会話の記憶を失くす事になる。伊田は、日比谷自殺に関する己の行動を「誰が望んだことでもない。あれが最善、正解だと思ったことはないし、今考えれば他にもやり方はあったと思う」と振り返る。そして、自分の名前を背負っていくことを「耀」と約束したことを話し、瀬尾に「俺とは関係のない人間の名前だから、頼むから忘れてくれ」と懇願する。
その後、伊田は再び瀬尾の元を訪れる。瀬尾に手渡したのは、いくつかの便箋。先の会話を書き起こしたものであり、渡したのは、伊田自身が遺しておきたいと願ったのが理由。この再会の会話も録音し、ボイスレコーダーを便箋と共に封筒に入れた。伊田は瀬尾に「賭けたいと思う人間には中身を共有してもらって構わない」とし、更に「君の得たものは君が好きにするべきだ。忘れろと言ってごめん。忘れるの約束は、忘れてくれ」と声を掛け、教授室を後にした。瀬尾は伊田について「日比谷優希という人と、そこに在った時間そのものを残しておきたかった」と推測する。
伊田は瀬尾に感謝した。「君と話をしていた時、俺は優の友達に戻れたと思う。ありがとう」
槙慶太の記憶
槙は伊田のことを「マサくん」と呼ぶ。槙の感覚では、伊田は誰かを殺して逃げている様子では無かった。煙草の受動喫煙をさせない為に、部屋に入らないようにきつく言いつけたり、何かと気を使ってくれたり、とても今でも、伊田を悪い人のようには見ることが出来ない槙。槙は「巻き込まれた記憶」として、当時のことに関しては口を閉ざし、今でもあまり深くは言及していないが、今こそ何かを思い出すべきだと奮起する。色々と記憶を辿る中で、槙はある事に気が付く。伊田と共にいる際、伊田が笑った瞬間があったことを思い出す。その視線の先には、髪の短いスーツ姿の女性が立っており、特に追いかけもしてこないため、警察ではないのかと推測し、槙は当時落胆した。その女性の顔をはっきりとは見ていないが、背格好からして槙は、その女性を菅野未守だと予測。伊田が電話でよく「フェイス」という単語を発していると証言し、それが誰の固有名詞なのかは不明、と結論づけられたという事実が此処でひっくり返る。桧山と槙は、電話の単語を「THEMIS(正義の女神)」と断定する。
都築誠が書いた小説の内容
復讐を決意した刑事が主人公。最初の一人を今まさに殺してきた彼が、真意を聞き出そうとする後輩刑事と対峙するところから物語は始まる。<男は、『悪に屈する正義は正義ではない。その弱さは、いずれ悪となる』と話した。>という文章が存在する。その後、主人公は、家族を殺された恨みから、順番に関係者を殺していく。但し、遺体は見つからない。誠は<彼の目的は、償いを求めることではなく、報いを与えることだけだった>と書いている。
結末は誠の頭に構想として存在するが、それを文章化はしていない。海外と日本を行き来していた主人公は、日本に戻り、最大の敵を殺す。また、最後から2番目の被害者だけは遺体が消えない。最後の復讐相手は、家族を守れなかった自分自身。主人公は『これで全部、やっと終わる』と言葉にして、自殺をする。
服部の証言
服部が捜査一課に配属になって最初にバディを組んだ相手が伊田である。伊田は人間性という点において、凡そ非の打ちどころがない。対話、理解、許容、人との信頼関係の構築、人心掌握に長けているのに打算がない。人に好かれる人、上に立つ人であるのに、どこか一定の距離を保つ。薬物依存に苦しむ人を救うことを信条としていた。伊田は薬物の事件を担当する際は熱が入っていた。心当たりはあるが、証拠のない妄想話になるので言わない。但し、自分が言わなくともどこかから聞く機会はあるかもしれない。
伊田が犯人だと証言したのは服部。公衆電話から電話があり、直接「殺した」と言われた。伊田は「正義のための犠牲。分からなくていい。分かろうとするな」と言う。服部は「多分冗談じゃない」と思い、雨の中、伊田を探しに出る。その後、先輩の園田から「北区の建設現場に変死体が出た」と連絡が入り、現場へ急行。遺体の傍には煙草の吸殻を見つける。遺体の左手の薬指に古傷を確認し、自身の上司である菅野未守に証言をする。
吸殻は伊田のものだと判明。朝になる前に捜査命令が出たが、外部に伊田の名前は出さないよう、厳戒態勢が敷かれる。半日後に槙慶太が拉致され、翌日、匿名の情報提供を受けた。情報提供から潜伏先が判明したが、リークは伊田本人が行った為、本当の潜伏先は別の場所だった。それを察していた服部は、本当の潜伏先の近くへと向かう。辺りを見回していた時に、伊田本人から電話があり「上」とだけ言われ、ビルの屋上に伊田の姿を確認する。
服部と対峙した伊田は「優を、殺したよ」と服部に話す。伊田は服部に「何故、日比谷を殺したのか」を語る。
薬物依存に苦しむ人を救う、減らす、いつかゼロにする。それが目標だった。依存から患者を解放する特効薬が、日比谷の手で完成間近だった。但し、それは、少し手を加えるだけで、一生依存から抜け出せなくなるドラッグにもなり得る代物で、危険なもの。その情報が外部に漏れてしまい、まずい相手に目をつけられた。悪用されない為に、日比谷は研究を辞めると言い出した。データを破棄して、全て終わらせる、と。だから殺した。日比谷には「その程度」の信念しかない。端的に言えば、逃げ出した。弱さはいずれ悪用される。日比谷は悪に屈する人間だった。データを破棄したところで、日比谷の頭の中には全て詰まっている。日比谷ごと消すしかない。全ては日比谷の為だった。
服部は拳銃を構えて伊田に向けて撃った。撃った弾は掠ったはずだが、伊田の足が速く、そのまま逃げられた。服部は取り逃した責任を感じている。自分には伊田を捕まえる義務があると思っている。また、服部は日比谷と何度か会ったことがあるが、服部は日比谷を「弱い人ではなかった」としている。
宮瀬豪による復讐劇とその後
概要
代々、九条家の使用人として仕えてきた宮瀬家。宮瀬豪の祖父は、九条壮馬の父である、九条壮一郎に仕えていた。宮瀬の母である宮瀬涼子もまた、九条家の一員だった。涼子は、壮一郎に不貞の関係を迫られたものの、当時婚約者だった日比谷優希の存在を理由に断る。それに激昂した壮一郎は、断るのなら父(宮瀬の祖父)を解雇する、と涼子を脅し、涼子は渋々応じた。壮一郎と涼子の間に出来た子供が宮瀬である。宮瀬の中学校卒業の日に涼子は失踪。それ以来、宮瀬は涼子に会っていなかったが、三年前の壮一郎の葬儀で涼子と再会。その際に涼子は、全てを宮瀬にうち明かした。そして、宮瀬に対し「その顔を二度と見たくない」と拒絶。こうして宮瀬は九条家を恨むようになった。九条は十年前に、涼子を捜し、会いに行っている。涼子は九条の顔を見るなり、三階の窓から飛び降りようとした。九条は涼子に「穏やかに生きられる人生」を提供することを約束し、涼子は九条に「一連の出来事を宮瀬に話さないこと」「宮瀬には会わないこと」を約束した。九条は「真実と母親を俺が豪から奪った」とし、弁明はしていない。
宮瀬はまず、九条に何らかの罪を着せる事を画策した。九条が「正しい道」を歩むことに反発し、裏で九条を陥れる支度を進める。宮瀬は九条をいつでも殺せる立場に居たが、彼を殺したいわけではなく、あくまで「悪役は悪役のまま生きていけ」と示すことが最大の目的であった。九条にプラスの取引疑惑が掛かった際に、それを利用して九条の手荷物にプラスを仕込み、朝霧司と泉の前で上手くプラスが出されるよう仕向けた。その後、宮瀬は泉を人質に取り、九条をメリーゴーランド前へ呼び出す。宮瀬は拳銃を所持していたが、九条が宮瀬を殺したかのように偽装し、自殺をするつもりだった(自室にそれらしき遺書を置いている)。更に宮瀬は、九条邸に家宅捜索が入ることを利用し、九条邸に麻薬取引の証拠を仕込んでいた。泉を人質に取っては居たが、宮瀬は泉を撃つ気はさらさら無く、ましてや危害を加えようとも思っていなかった。
宮瀬は「復讐に囚われ、辛くなってしまった」と己の人生を回顧する。九条は「銃をこちらに向けて、俺を撃て」と言うが、先述の通り、宮瀬の目的は九条を殺す事では無いため、それを拒否。更に九条はこう続けた。
「お前の受けてきた苦痛は、お前だけのものだ。私の言葉など、最初から何の意味もないだろう。だから私は、お前には謝らない」
宮瀬は「最後まで恨ませてくれるやさしさなど要らない」と吐き捨てる。その後、現場にマトリや九条家の面々が集まった為、宮瀬は「茶番に付き合わせて悪かった」と謝罪しながら泉にとあるUSBを託し、姿を消したのだった(S1-140後~S1-149,S3-110)。
九条壮一郎
九条家の元当主。九条壮馬と宮瀬豪の父。現在噂されている九条家の悪評は、全て壮一郎を含めた先代が築き上げたものである。宮瀬の母である涼子に不貞の関係を迫り、自身の手元で全てを支配した。三年前に亡くなっている。九条紫
九条壮一郎の妻。九条壮馬の母。冷酷な女だと評されていたが、実際は涼子に唯一手を差し伸べていた存在。九条に似て、言い訳をしない性格。表向きは病死とされているが、実際は、宮瀬を身篭った涼子を家から逃がしたことが壮一郎にばれ、壮一郎に身体的にも精神的にも追い詰められた事が原因で亡くなっている(仄めかす程度の描写ではあるが、ほぼ確実に自殺)。宮瀬涼子
宮瀬豪の母。九条壮一郎の愛人。日比谷優希とは、学生時代からの付き合いで、元婚約者。失踪してからは本州の端の小さな港町に住んでいた。九条紫を「唯一の光」としている。九条に危害を加えられたわけではないが、九条家への恨みと恐怖から、九条を畏怖の対象として見ていた。伊田正義と過去に接点があり、彼に自身の日記を預けていた。帰国後の宮瀬豪
外国で伊田正義と会い、暫く共に暮らしていた宮瀬。何度か「お使い」を頼まれたが、人に危害を加えたり、悪意のある行動をしたりするような内容では決して無かった。伊田とは過去に一度だけ会ったことがあり、その際の貸しを返してもらっていた。そして、伊田から涼子の日記を受け取る。USBは伊田から受け取ったものだが、誰を介したのかは知らない。何度か外国と日本を行き来した後、伊田とは別れる。伊田の目的や今後については、予測をしていないし、してはいけない、という約束を伊田と結んでいる。逃亡生活中、日本に帰国した際に泉と一度だけ接触しており、善意で何個かの質問に答えた。その際の助言は以下の通り。
1.今後すぐに人が亡くなる事件に関わる
2.あまり深入りはするな 気をつけろ
3.深入りをすると、何も知らない顔をして、真実を追う「フリ」をする人達に噛み付かれてしまう
暫く経ったあと、都内の配達所から九条邸宛に小包を出す。中身は旧い園芸用鋏と、枯れたカランコエ、九条邸での自室の鍵の三つ。全て九条から宮瀬に対して贈られたものであり、それを全て返却したこととなる。
その後、唐突に九条邸へと戻ってくる。また、同時期に宮瀬の目撃情報が都内で上がり、更にはタロットカード連続殺人事件(後述)の三件目の現場付近での目撃証言があったことから、事件の重要参考人として、捜査一課から捜索をされていた。宮瀬自身はこの事を完全に把握しており、その上で無実を主張。関与に関しては否定しなかった。九条邸には、九条家の面々と泉を呼び出し、泉からの嘆願もあり、信頼のおける渡部悟の同席も許可された。
宮瀬が伝えたかったことは二つ。一つ目は、近いうちに名無し事件が大きく動くこと。それに応じ、トランス・クラブが、薬効体質である泉と、薬が効きすぎる体質である九条を狙うという情報も同時に伝えた。二つ目は、九条家への恩を返すこと。上記の通り、九条紫が涼子を助けていた事実を知り、何より、九条自身も宮瀬を守っていた事実を踏み躙るようなことはしたくないと考え、暫くの間は踏み台や盾として働く、と九条家の面々へ伝えた。九条自身は宮瀬に許されようと思っておらず、徹底して憎まれ役を買って出ていたが、宮瀬は初めから、九条のその姿勢や意志を知っていた(宮瀬は全てを知っていたので、復讐劇は茶番だった)。だからこそ、家族には戻れない、と昔の関係性で居続けることを拒否。しかし、九条や桐嶋宏弥、新堂清志に「幸せになってはいけない人間など存在しない」と諭され、使用人として再び生活することを決意した。
第一章 スカウト編
概要
第三捜査機関である「スタンド」が結成されたことを耳にする泉玲。同僚である青山樹が既に所属しており、自身の成長に繋がるのではないか、と興味が湧く。課長である関大輔が、自身が籍を置くのを辞退する代わりに「誰かやりたいのであれば推薦する」と提案すると、泉は立候補。しかし、捜査一課の服部耀は「実力も伴っていないのに課長くんが推薦する訳がない」とバッサリ斬り捨てる。服部は泉にスタンドへの仮所属を通達。それと同時に、スタンドが完全スカウト制であることを理由に、泉にスカウト業務をこなすよう命じる。スカウト業務をやり遂げたら、スタンドに本所属。スカウト業務をやり遂げるまで、スタンドの仕事には一切関わらせないという条件付きで、泉はスカウト業務をスタートさせる。スカウト順
青山樹、服部耀は既にスタンドに加入済。菅野夏樹はスカウトを拒否せずに加入した為、未記載。
朝霧……スタンド入り承諾
荒木田……スタンド入り承諾
大谷……スタンド入り辞退
槙……スタンド入り承諾
神楽……スタンド入り辞退
桧山……スタンド入り承諾
誠……スタンド入り承諾
京介……スタンド入り承諾
山崎……スタンド入り辞退
起きた事件
その他・伏線 等
第二章 監査編
概要
「スタンドという集団に所属するに足る人間かを確かめさせてもらう」という趣旨で「上」から指示をされ、監査を行うことになるスタンド。監査役は泉とマトリの誰か一人が組み、対象を1週間監視する。一人に対して一枚、レポートを提出し、服部が受け取るという流れ。また、服部は泉に「スタンドの責任者を引き継ぎたい。あと、スパイが居ないとも限らない」と言い出し、監査対象が信用に足る人物かの調査を命令。その結果は、レポート下部に<信用に足る人物なら〇>、<グレーなら△>、<アウトなら×>を書き、服部に知らせる。無記入は△か×とみなし、服部が判断することとなる。泉は監査に向けて、気合を入れ直す。監査順・担当者
(服部/関)→(青山)→朝霧(青山)→荒木田・菅野(夏目)→桧山・槙(由井)→都築兄弟(今大路)→服部(菅野)→泉(服部)起きた事件
その他・伏線 等
第三章 瀬尾研究室編
概要
行動心理学の権威と呼ばれる、淑央大学の教授である瀬尾鳴海のスカウトの為、泉は瀬尾の元へ向かう。瀬尾は自身の研究室を持ち、そこには個性的なメンバーが揃っていた。瀬尾自身はスカウトの件を拒絶はしていないが、瀬尾にとって今大事なものは「研究室のメンバー」だった。このスカウトは瀬尾のみの問題ではなく、研究室全体に関わること、何より、瀬尾研究室のルールとして「全員に関わる物事は全て話し合いで決める」が提示されている以上、瀬尾は独断での返事を保留する。そして、瀬尾は泉に「研究室のメンバー4人が、全員スタンド入りを賛成したらスカウトを受ける」という条件を提示した。説得順
可愛ひかる→宝生潔→早乙女郁人→日向志音→瀬尾鳴海起きた事件
その他・伏線 等
第四章 完結編
概要
伊田正義がついに動き出す。名無し事件の捜査に本腰を入れる中で起きる連続殺人事件と、大谷羽鳥襲撃事件。スタンドのメンバーは、ついに事件の真相へと足を踏み入れる。タロットカード連続殺人事件
連続殺人事件。被害者は全員前科者で、尚且つ、犯した罪に対して刑が軽く済んでいる者。既に三件起きており、二人が死亡、一人が意識不明の重体。被害者の自宅には、必ずタロットカードの大アルカナ八番「正義」が入った封筒が届けられている。三人目の被害者の犯行現場の近くで宮瀬豪が目撃されているが、宮瀬は無実を主張。ただし、関与は否定していない。(S3-140後, S3-143, S3-144, S3-149)この事件の真犯人は<正義>を掲げる警察だとされている。数年前からちらついている、警察内部に設置されると噂の「正義の執行部署」の犯行だと未守はみている。「正義の執行部署」は、更生の余地が無いにも関わらず、法の下許されてしまった人間を裁くことを目的とし、裁いた結果、犯罪率が減少したという実績を作って、創設の根拠としようとしている。但し明確な証拠は無い。これが明らかになれば、法で部署が裁かれる。部署が認められるまでは、もう落としようのない泥を既に被っている人間に罪を着せようと画策している。
使用されているタロットはウエイト版ではなく、マルセイユ版である。これは伊田が捜査一課への配属の時に験担ぎとして貰ったものであり、当時の捜査一課に居た人間であれば、誰もが知っている。この殺人は、伊田を犯人に仕立てあげようとしている警察内部の犯行だという線が、伊田の証言によって濃厚となった(S4-63, S4-64)
大谷羽鳥襲撃事件
大谷羽鳥が何者かに襲われた事件。大谷が、繁華街から少し外れた路地で倒れていたところを、通行人に発見される。頭を打っていたが、怪我は大したことは無かった。症状は急性アルコール中毒とされ、発見が遅れていたら死んでいた。持ち物は財布やスマホを含めて何も盗られていない。また、大谷の持つデバイスは厳重にロックが掛けられており、データはすべてクラウド管理、アクセスをすると分かるようになっているが、触れられた形跡は全く無かった。現場には何も残されておらず、プロの犯行と見られる。使用された薬物は、輸入物の自白剤をベースに作られた、特殊な舌下剤。溶けるだけで効くため、口に捩じ込まれたらアウト。数秒から数分で急性アルコール中毒の症状を引き起こす。通常の薬物検査では今のところ引っ掛からない。服部耀は「伊田正義に出来る犯行」としているが、犯人が伊田なのかは不明(S4-2, S4-19)。
伊田正義と九条家
伊田正義は九条源一郎の息子であり、九条壮一郎とは腹違いの息子だった。源一郎が50を過ぎてから出来た子供で、壮一郎とは年が丁度20歳違う。伊田曰く、九条家の者達から冷たい視線を浴びる中で、壮一郎は唯一優しく、実の弟として振舞ってくれたという。しかし、何年か疎遠になった後に、九条壮馬が生まれたことを聞き、その際に屋敷へと赴いたが、その時に会った壮一郎は別人に成り果てていた。源一郎と同じように、使用人に手を出し、子供を作っていた。伊田は何故壮一郎がこうなってしまったのかを考えていたが、その二年後に「壮一郎はいい薬を処方されてようやく正気に戻ったらしい」という噂を確信に変える。壮一郎はドラッグに手を出していたと結論を出した。伊田は九条家の呪いを知ってしまった。自らと同じように子を育てる負の連鎖。それが壮馬に振りかからないよう、伊田は顔見知りの関係である新堂に協力を仰ぎ、新堂に壮馬と宮瀬のことを事細かく報告させていた。新堂と伊田はあくまで「脅されていた/脅していた」関係であると貫いているが、自らの意思を持って、新堂は無言を貫く。伊田が新堂に依頼した具体的な内容は以下の通り。
新堂は宮瀬と九条を守りたかった。だから伊田に屈した。しかし、本人はそれを頑なに肯定せず、結局何も言わなかった。また、伊田も今後壮馬が先代達と同じ道を歩むとは思わないという領域に思考が達した為、安心しているし、これは自己満足だと説明している。
S2-52にて九条から語られた「宮瀬の祖父による洗濯の失敗」は、伊田の口から失敗を否定される。但し、伊田は九条壮馬の服を着て逃げる意図は無かったとし、手に入ったのがたまたま壮馬の服だった、とだけ説明している。協力者の具体的な名前は出さないが、十中八九、宮瀬だと思われる。
考察
Revel
Revelのメンバーは高校の時から四人でつるむようになった。エスカレーター式の私立だが、桧山貴臣のみ高校からの編入組。大谷羽鳥は幼稚舎の頃から、神楽亜貴や槙慶太に名前だけ知られていた。四人共、高校の頃は生徒会に関わっており、桧山が卒業した時に入れ替わりで神楽が生徒会に入会。慎は役員ではなかったが、何かと世話を焼いていた。これがRevelの立ち上げのきっかけだと言われている。ただ、全員の大学在学中に桧山、大谷、神楽の三人がRevelの仕事を始めた為、Revelの立ち上げに槙は関わっていない。本格的に四人で仕事をしたのは大学を卒業してから。Revelは「自身や会社、家族の生活が脅かされる段階にまでは踏み込まない」「もしメンバーに良からぬ嫌疑が掛かった際は、それが表沙汰になるまで協力する」等の独自のルールに沿って活動している。Revelの「警察上層部の上客」は果たして誰なのか?服部はRevelの客ではなく、どちらかと言えば「桧山の客」。ただし、桧山と服部は互いに拒否権も持ち合わせていて、金や情報でのやり取りは少ないように見える。ただ、服部と大谷は「ご無沙汰している」関係。
例えば、警察上層部の上客が菅野未守、若しくは菅野夏樹であれば、大谷が菅野と接触していても何ら不思議ではないし、菅野の言う「忠告」も理解できる。菅野はスタンドに所属しているので、名無しに関しての情報をスタンド未所属の大谷に流すことが可能。ただ、逆を言えば、大谷が掴んだ名無しの情報を「奪うこと」も可能。大谷が「何処まで知ったのか」を測ることもできる。
それと並行して、大谷の「厚労省の上客」は誰なのか?という問題。Revelの他のメンバーは厚労省に客を抱えていない様子。ただし、桧山は自身の立場から厚労省のトップに圧力をかけることは出来る。大谷が厚労省で得た情報をRevelで共有(危険性が高ければ桧山のみに伝えられると考えられる)、その後の手札として使うこともあるのでは?実際、桧山は、泉がスタンド業務を取り上げられたことを、厚労省に出入りしている大谷から聞いたと発言していた。この事を知るものはスタンド所属者とマトリの捜査企画課の者のみ。今大路が一番濃い線?
桧山と都築誠は名無しをきっかけに知り合った可能性が高い。桧山は服部の幼馴染ということもあり、昔から名無しに関しての情報を探っていたのでは。服部から事情を聞かされた事もあるだろう。その際に都築沙良の件に辿り着き、誠と接触→沙良の病院の情報を取引する仲になった、という可能性……。
羽鳥は記憶を本当に失っているのか?起きたあとにやけに冷静な上に自分が「何日間か眠っていたこと」を知っていた。S4-68でファイルを「社外秘」と言っているし、Revelメンバーも他を全く寄せ付けない態度なので、Revel自体がスタンドとは別で、単独で行動しているのは間違いない。更に言えば他社を全く信用していない。
菅野夏樹
菅野が怪しまれている一番の理由はS3-160後の「……あーあ」が効いている気がする。あの流れからして、彼は服部に「大谷羽鳥がやられました」と報告し、電話を切った後に「……あーあ」と発したのだろう。S4-20では大谷の病室にお見舞いに行き、病室に誰もついていないことを「不用心」と評し、更には「忠告したのに、聞かないから(こうなったんだよ)」と毒づく。しかし、その後には「まぁ、俺が羽鳥さんの立場でも─」と続けている。大谷の立場に同情し、行為に理解を示している。槙に「ごめん」と謝ったのは伏線なのか、そう見せる為なのかが焦点。菅野は何かと名無しの関係者に詳しい。初対面の槙に「名無し事件の重要参考人」と声をかけ「人の顔を一度見たら忘れないということを余り言わないほうが良い」と忠告していた。菅野は年齢的にも名無しには関係していないし、捜査もろくに関わっていない。多分、出来ることは残った資料を洗い直して細々と伊田の行方を追うくらい。それなのに、慎が誰かに「人の顔を一度見たら忘れない」と言ったことを知っている。話の流れから察するに、槙は事情聴取でそんな事は言っていない(槙が重要参考人であることを朝霧でさえ知らなかった)。更に、「十五年前の話だし、犯人の顔なんて忘れるのが普通だけど『念の為』で人を殺す人間も、世の中にはいるから」と、まるで今後、槙が伊田に『念の為』殺されるかのような発言をした。
菅野は誠に対しても何か思う所があるらしく、誠が取り調べを受けた際の担当刑事(取り調べ専門の喧嘩腰のえぐい園田さん)の話を持ち出し「もし不運な偶然じゃなかったなら、よっぽどの情報を都築誠が握ってるって話になる」と、誠の持つ情報について泉に匂わせた。
自身の無痛症の発症時期に関しては「いつからだっけな~?忘れた」と断固として触れさせない。ただ、個人的に調べたところ、無痛症は基本的に先天性。無汗症は後天性のものも見つけたが、無痛症は遺伝子疾患の為、先天性である、とのこと。生まれつきであれば素直に「生まれつき」と言えばいいはずなのに、何故菅野はそれを言わない? 精神がおかしくなって痛みを感じない身体になったのか、とも思い、その線も調べたが、それに該当する病気も無かった。考えられる可能性は、
1.薬物による遺伝子の異常の結果
2.名無し事件に関わった際に突然変異
のどちらか。一応、フィクションなので後天性ということにしておく。
更に菅野の意味深発言は続く。泉に対してS2-100にて「もう怪我なんてさせないから。次は何があっても守る」と伝えている。菅野は確実に「次」がある事を知っている。これも菅野からの遠回しの忠告と捉えるべき?
泉が京介に「監査落とすから」と伝えたことを知っている。因みに、この事を聞いているのは、誠、今大路、京介の四人だけ。今大路と菅野の間でこの件に関するやり取りがされていたので、今大路が菅野に教えたと考えるのが一番手っ取り早いが、京介が「俳優辞める」と言ったこと、京介の性格も何故か把握した上で、泉の行動に共感と理解を示している。今大路がわざわざ、自分の為にもならないことをべらべらと話す筈がない。況してや相手は捜査一課。菅野から聞きに行ったと考えるのが妥当だろう。もし、監査を泉と共に担当したマトリ全員に、同じように「監査どうだった?」と聞いて回っていたとしたら。菅野はきっと、スタンドと名無し事件に関しての情報を誰よりも持ち、把握している人間となる。
俺の「大丈夫」にはいい反応をしないのに、槙くんの「大丈夫」には安心してる。これがすべて計算の上で出された言葉ならこんなに恐ろしいことは無い。そもそも、泉の警護を「服部直々」に「休日返上」で頼まれたのも本当か怪しい。Revelの元へ行くと聞いて自分から立候補したとしてもおかしくはない。取り調べを始めたタイミングも他者への配慮を欠いているが、羽鳥が菅野を危険人物だと周りに知らせる為に「良いですよ」と返事をした感も否めない。また、上記の「大丈夫」から、「菅野くんは信頼出来る仲間です」と答えを出したのなら。菅野にとっては万々歳な結末だろう。何度も書くが、菅野は手札を持ちすぎている。全てを把握していて、全てを握っている。現時点では服部よりも情報を持っているし、どのスタンドメンバーよりも名無し事件をよく知る人物。菅野の「ごめんね」が何に対してのごめんねなのかは、ミスリードが無ければ容易に想像がつく。信じてくれたのに、裏切ってごめんね、の意だろう。
都築兄弟と「長いお別れ」
レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」という小説が作中(S2-60後)に登場する。あらすじはこちら(Wikipedia - 長いお別れ)を参照。「長いお別れ」には「ギムレットには早すぎる」という有名な台詞があるのだが、本編中にも遠回しの表現で登場する。「長いお別れ」を読破しなければ、本当の意味は分からないのだが、簡潔に書くと「ギムレット=さようなら」である。つまり「ギムレットには早すぎる」=「さようならには早すぎる」=「まだ決別したくない」。誠は伊田に「『本当のギムレット』。もう、早すぎることもないのでは」と問いかけるが、伊田は「ちょっと遅すぎる」と応える。此処でのギムレットが、上記の「さようなら」と同じ意味だとは考えにくい。会話から考えて、これは誠も意味を知らないということだ。つまり、伊田も「長いお別れ」を読んでいて、更には中学生の誠に「長いお別れ」を薦めた可能性も出てきた。誠は未だに、マトリも警察も信用していない。言ってしまえば、誠はただ、泉が信じたものを、自分も信じている。マトリも警察も、誠にとっては恨みの対象であることは変わりない。名無し事件の所謂原作の小説は、当時の誠が持つ恨みの気持ちが原動力となり書かれたことは間違いない。ただ、伊田と出会い、伊田を信用したことにより、その小説を書くことを手放したことも事実。それを大人になった今更、伊田を使って復讐をするとは思えない。誠は現に「伊田を止めてほしい」と懇願している。ただ、伊田に対して敬意を払っているのが疑問。人殺しだし、S4-14で「行方不明者が出ている」と言っているにも関わらず、何故、犯罪者を敬い続けるのか?誠の性格的にそんな事はしないような気が……中学生時代にそれ程良くしてもらったのか?沙良の事件の際に何があったのかを知ることが必要。
誠が警察に任意同行を求められた際に、京介は「名無し事件の事は知らない。兄貴は絶対に悪い事はしない」と言い切っている。しかし、誠に対して「伊田さんのこと、まだ聞かれてるの?」と案ずる描写も見受けられる為、関と泉に対して名無しの事は知らない振りをして、誠に好都合になるように演じたということになる。服部が「都築京介は監査落ちにはならない」と言い切ったのも、京介が名無し事件に関してある程度の事を知り、更に、演技力やコミュニケーション能力を利用したいからだろう。
S2-61での誠の「これに通れば、俺と京介は─」という台詞の先は何なのか。彼らは「何」になれるのだろうか。
名無し事件
- 夜
宮瀬が宮瀬の祖父に届けものをする為に九条家を訪れる
☆事件当日
- 朝
宮瀬の祖父が九条に「色移りをしてしまい、九条の服を何着か駄目にしてしまった」と報告
九条の服は、誰の目にも触れること無く処分される
事件発生 - 夜
服部に伊田から直接「優を殺した」と連絡が入る
「多分冗談じゃない」と思った服部は雨が降る中、伊田を探しに行く
服部に園田から「北区の建設現場で変死体が発見された」と連絡があり、服部はそこへ向かう
遺体は兎に角悲惨な状態で、身元の確認も出来ない
遺体の傍に伊田が好んで吸っていた銘柄のタバコの吸殻が落ちていた
服部は「伊田正義を重要参考人として引っ張る許可が欲しい」と上司に要請
タバコの吸殻が伊田のものと判明
朝になる前に捜査命令が下り、一部の人間のみが伊田を追う
☆翌日
捜査命令が出た半日後に槙が伊田に拉致される
伊田の服装は、伊田の趣味とは程遠い、九条贔屓のブランドものだった
☆翌々日
匿名の情報提供があり潜伏先が判明 服部はリークは伊田が行ったものだと読み、別の場所へ向かう→ビンゴ
本人から服部に電話が掛かってくる 「上」とだけ言われ、見上げるとビルの屋上に伊田
伊田の独白を聞いた後に服部は銃を発砲する
弾は掠ったが、伊田の足が速く取り逃がす