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聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

13章 人類最強クラス集結

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309 扉の先で待つもの

 古竜達は既に“ルシエルン”によってグルグル巻きにされている為、ブレスさえ気をつけておけば問題はないだろう。

 俺は魔法袋から物体Xの入った樽を二つ取り出すと、古竜へ物体Xを飲ませた左右の“ルシエルン”に一樽ずつ持たせ、その状態で待機させた。


「【聖なる治癒の御手よ、母なる大地の息吹よ、魔に堕ちた存在を、不浄なる存在を、全てを飲み込む浄化の波となって払え、 ピュリフィケイションウェーブ】」

 浄化波を発動させ、物体Xのニオイを消し去り、それにより古竜達も正気を取り戻したようだ。


「それで、お目覚めはいかがですか?」

 俺は笑顔で古竜達へ問い掛ける。


『あんな卑怯な真似をして、誰が……』

『ふざけるな。我らは武の勝負を……』

 二竜は動けないことに加え、樽が目に入ったのだろう。念話が聞こえなくなっていった。


「まず師匠達が相手をしていた古竜よ、あなたは勘違いをしている。師匠達が本気であなたを倒す気だったら、既に生きてはいないでしょう。また私が相手をした古竜よ、貴方はブレスを吐きながら私を倒せなかった。違いますか?」

『……何故、加護も持たない人族がここまで強いのだ?』

 師匠達と戦った古竜が疑問を抱いたらしい。


「師匠達は邪神を退けていますし、ここに来るまで数多の竜種とその眷属を倒し、皆が竜殺しですから当然でしょう」

 本当に数人が竜殺しになったことで、飛躍的に竜戦だけなら無類の強さを発揮する集団となっている。


『……何故、人族が我のブレスに耐えられるのだ?』

「私は土龍や闇龍のブレスを喰らったこともあり、その後でしたからね。それに龍神様の加護があるからでしょう」

 何だかんだ言っても、加護が無ければきつかったかもしれない。


『負けたのは……仕方なく認めてやろう』

『まさか負けるとは思わなかったがな』

『しかし、断じて我らが弱かったのではない』

『そうだ。一対一でなら負けてはいなかった』

 また師匠達に油を注ぐとか、本当にいい根性しているよ。


「その辺は召喚されてから、師匠達と一対一で戦えばいいさ」

『そのことで話がある。確かに我らは敗れた』

『だが、それはお主達にだ。脆弱な龍神の巫女にではない』

『故に我らは召喚されるのを認めたくない』

『お主が召喚者となるのであれば応じよう』

 また面倒なことを……まぁ俺の返答は決まっているけどな。

「俺には相棒がいるし、なんか暑苦しいからお断りさせてもらいます。それと約束を(たが)えるとか、それでも本当に最強の竜種である古竜がすることなのか?」


『ぬぅぅ、さすれば龍神の巫女よ、我らと同時に契約を結んでみせよ』

『出来なければ、この約束は無効だ』

 結局のところ、確かにナディアは戦闘に参加出来ていなかったから、一応筋は通っているんだよな。


「ナディア、出来るか?」

「私の全てを掛けてでも、成功させてみせます。出来れば魔力結晶球を貸していただけますか?」

「ああ」

 ナディアは魔力結晶球を握ると、ぐるぐる巻きの古竜達の前に立ち、召喚契約を始めた。


 視認出来るような魔力の帯が二体の古龍へと伸びていき包み込むと、ナディアは契約の文言を口にした。

「【我が血、魔力を対価として、古の盟約を結べ】」

『『巫女よ、我は古き盟約に従い、汝の従魔となることに応じる』』


 すると古竜達が光り輝き出すと、ナディアへと吸い込まれていく。

『ま、まさかこんなことが……』

『我らが、人族と契約させられるなど……』

 そんな念話が聞こえたところで、古竜達はナディアへ完全に吸い込まれていった。


 全てを吸い込んだナディアは、息を切らしていた。

 直ぐにエクストラヒールを発動させ様子を見る。


「はぁ、はぁ、危なかったです。魔力結晶球が無ければ、たぶん一体の古竜とも契約が出来ていなかったはずです」

 ナディアは息を弾ませ、そう告げながら、俺に魔力結晶球を渡してくると、内包されていた魔力の残量が空となっていた。


「それでも無事に契約は出来たのか?」

「はい。ただ今は魔力量が足りないので、魔力が回復したら顕現させてみますね」

「ああ。楽しみにしている」

 こうして無事に古竜達と契約したナディアを労った後、竜種やその眷属の回収を始めた。するとお昼になってしまっていたので、またもやバーベキュー大会になってしまった。


 ドラン達はバーベキューが始まってから、少し食べただけで、直ぐに竜の墓場まで下りていった。

 先程魔力結晶球にはかなりの数の魔石から魔力を抜き取り、充填させ内包する魔力量を満タンにさせていた。ポーラのあの指輪にも魔力を限界まで注いでおいたから、いざとなれば“ルシエルン”が守ってくれるだろう。


「それでルシエル、目的はこの扉の先にあるんだろ?」

 師匠の目はギラギラとしていた。骨付き肉を噛み千切りながらそう聞いてきた。


「はい。フォレノワールが龍の谷の麓へ行くことを提案したので……もしかするとここで光龍との戦闘があるかもしれません」

「くっくっく、いや~そうか。やっぱりルシエルを弟子にして良かったなぁ。まさかこんなに心躍る闘いが出来るなんて昔のようだ」

 師匠は本当に楽しそうにしていた。

 グルガーさんやガルバさんは、師匠がギルドマスターになってからいつも“こんなはずじゃなかった”と訓練場で呟いている姿を見ていたみたいだから、本当は冒険者を続けたかったんだろうな。


「私もルシエル様の従者となることを決めて、本当に正解でした。まさかこれだけの竜種と戦えるとは、帝国の将軍ではありえないことでしたから。本当に感謝しています。それにようやく龍との対面ですからね」

「別に戦わない可能性もあるのは理解しているのか?」

 師匠然り、ライオネル然り。皆、闘争意欲が強過ぎる。


「ええ、ルシエル様が強敵を引き付ける運の持ち主であることは、ちゃんと熟知していますよ」

「えっ?」

 なんだその運? そんな運を持った覚えはないぞ。


「ルシエル様の行く先々で、必ず闘争や紛争が起こります。そして解決した後はそれまでの争いが嘘だったかのように消え、良い方向へと進んでいきます」

「どれだけ歪曲した解釈をしているんだよ」

「えっ? まさか気づかれていなかったのですか?」

「えっ? 本気で言っているのか?」

「はい」

 ライオネルは真剣な顔をして頷いた。

 どうやら本当にそう思っているらしい……だけど、それは間違いであって欲しい。


「た、たまたまだろう?」

「これからもしっかりと従者筆頭として、同行させていただきます」

 ライオネルは恭しく頭を下げるのだった。

 その姿を見て、俺は激しい疲れを覚えるのだった。


 そして昼休憩が終わったところで、ナディアによる古竜召喚が行われた。

「【古の盟約に従い、我が魔力を糧に顕現せよ 古竜ワカシ、古竜ツバス】」

 ナディアが召喚を詠唱すると、二つの魔法陣が出来上がり、巨大な魔法陣が出現した……のだが、魔法陣は見る見る小さくなり、最終的に直径一メートル程の大きさになった。

 そしてそこから古竜が出て来たのだけど、現れたのは五十センチサイズの可愛らしい古竜だった。


『なんてことだ。我らが何故こんなにも小さく』

『おい、龍神の巫女。これは一体どういうことだ!!』

 念話で聞こえてくる声が、完全に子供のようなソプラノ声だった。


 さっきの古竜が出てくると期待していた師匠達は、直ぐに巨大な門へと移動を開始した。

「たぶん私の魔力に応じて、ワカシさんとツバスさんの大きさが調整されたのかと……」

『なんだと! それならば私達は巫女が強くならないとこのままなのか?』

『……文句を言っている暇などない。我らの満足がいく姿に戻るまで、レベルを上げてもらうぞ』

「えっと、召喚はずっと維持できないので、顕現し続けるのは難しいです」

 ナディアが申し訳なさそうに告げると、古竜達は文句を言い出した。

 しかしそこでナディアは古竜達を還送した。


「問題なく呼べるようですし、少しずつ私も強くなりたいと思います」

「頑張ってな」

 手の掛かりそうな古竜を、ナディアなら何となく手懐けることが出来るのかもしれないとそう思いながら、いよいよ巨大な門を開ける時がきた。

 見るからに封印門と同じ仕組みだけど、皆にもこの巨大な門が見えているので、きっと皆と一緒に中へは入れるのだろう。

 俺は意を決して、巨大な門に手を付けた。


 すると思った通り門が魔力を吸って輝き出し、文様を浮かび上がらせていく。

 そして全ての文様が浮かび上がったところで門が開いた。


 門を開いた先に待っていたのは、どこぞの城の謁見の間のような場所だった。

 何故? そんな疑問が浮かぶ中、目の前には竜人族に化けている聖龍、炎龍、土龍、雷龍、水龍、風龍、闇龍の気配がして、玉座に座っている今まで出会ったことのない? たぶん龍神の姿がそこにはあった。


「ようこそ我が巫女、そして加護を受けし者とその従者達よ。我らはそなたらを歓迎しよう」

 そんな声が聞こえて、俺達は謁見の間をとりあえず進むことにした。


お読みいただきありがとう御座います。

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