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聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

13章 人類最強クラス集結

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308 召喚契約の手順

 先制攻撃は師匠とライオネルの斬撃と炎弾だった。

 戦闘開始になった直後に動いたのだ。


 しかし師匠とライオネルの攻撃は浅く傷つけただけだし、軽く表面を焦がす程度だった。

『くっくっく、軟弱な』

『ほれ、お返しだ』

 二体の古竜が尻尾で地面を払うと、無数の石礫が飛んできて、幾つかの攻撃をもらってしまう。


『ほう。さすがにこれしきの攻撃では倒れんか』

『ならばこれはどうだ?』

 今度は腕を振り切ると、エアーカッターや斬撃のようなものがこちらへ飛んできた。


 これについては幻想剣を前に出すことで、俺はダメージを逃れる。

 しかし盾で受けた戦乙女聖騎士隊は、少しダメージを負ったようで、俺は直ぐにエリアハイヒールを発動させておく。


「師匠、ライオネル、古竜はどうですか?」

 俺は二人に手ごたえを聞いた。


「他の竜種よりも圧倒的に固いな」

「これなら良い盾になるんじゃないでしょうか?」

 二人は楽しそうに笑ってそう答えた。


「なるほど。じゃあナディアの召喚獣になってもらいましょうか。師匠、ライオネル、バザックで左の古竜を頼みます」

「ああ」

「承知しました」

「私の最強魔法に、何発耐えられますかな?」

 三人が三人とも新しいおもちゃを手に入れた子供みたいな顔をしていたので、念のため釘を刺しておくことにする。


「まだブレスは見ていないんですから、それこそブレスで即死なんてやめて下さいよ。あと勢い余ってそのままというのもやめてくださいね」

「分かっている」

「もちろんです」

「躾は必要ですからね」

 もはや俺の声は届いていないようで、生返事が返ってくる。

 左の古龍よ……頑張って生き残ってくれ。

 俺は心の中で呟くと、他の皆にも指示を出していく。


「リディア、ナディア、そしてルミナさん、全力で右の古竜を止めますよ」

「ルシエル君、私達だけでなのか? それは少々危険過ぎるのでないだろうか?」

 確かにそうだろうけど、残念ながら戦乙女聖騎士隊はこの戦闘の基準に達していない。


 俺は何とかルミナさんに自信をつけてもらえるように話す。

「ルミナさん、確かに少し石礫で切れてしまったようですけど、それだけですよ」

「……そうだな。やれることは決まっているか」


 俺はヒールで皆の傷を治していくと、リディアが声を上げる。

「ルシエル様、精霊様を顕現させると魔力を一気に消耗するのですが、最初から全力の方がいいのでしょうか?」

「ああ、全力でいい」

 そうじゃないと師匠達がこっちの古竜にも襲い掛かって来そうだしな。


「私、絶対に契約してみせます」

「ああ。倒すのはこちらに任せて、防御と契約だけに集中してもらえばいいから」

「ありがとうございます」

 どうやらナディアはその気になってくれたみたいだな。


「ルシエル様、私はどう動けばよろしいですか?」

 するとエスティアが直ぐ側にいたことに驚きながらも、指示を出す。


「エスティアには悪いんだけど、後ろの皆を守ってくれると助かる」

「では、そのように」

「頼む。それとポーラに伝言で“二体になってしまったけど、両方捕獲するからタイミングは間違えないように”と伝えてくれると助かる」

「分かりました」

 すると速やかにエスティアは後方へと下がっていく。

 なんだろう……誰かに似ている動きをするようになってくれている。


 そんなことを思いながら、俺がようやく幻想剣を構えると、古竜は律儀に待っていたかのように声を掛けてきた。


『作戦会議は終わったか?』

『どんな作戦を立てたところで、矮小な人族風情が我らに勝てるはずがない……なっ!?』

 左の古竜が喋り終わる前に、先程とは比べ物にならない師匠の斬撃、ライオネルの火炎弾、バザックのエレメンタルフォースランスが飛んでいく。

 左の古竜は、慌てて魔法陣のような文様が描かれた膜を張ったけど、今度はちゃんとしたダメージを与えることが出来たらしい。


 しかしそれをノンビリ眺めている時間もないので、俺とルミナさんは斬撃を飛ばしながら右の古竜へ近づいていく。


 そこへリディアが水の精霊を召喚させると、水の精霊が大気中に巨大な水の塊を生み出し、それを一気に古竜へと放射した。

 するとそれが当たった瞬間は水だったはずなのに、徐々に古竜の身体を凍らせていく。


 それを見た俺は一気に畳みかけることを決めた。

「聖龍よ、我が身を守れ。風龍よ、全てから身を守る風の障壁を。雷龍よ、全てを置き去る力を」

 一気に音が遠ざかる中、俺の世界に近いところを金髪の戦乙女が現れて交差した。


 どうやらルミナさんも同じ考えだったようで、高速の世界で俺とルミナさんは交わるように古竜へと攻撃、連撃、追撃を加えていく。


 しかしルミナさんのアクセルブーストが先に止まってしまった時に、人族の俺達から傷をつけられたことでプライドが傷ついたのか、古竜はルミナさんに向かってノーモーションでブレスが吐き出すところだった。


 顔を殴るとブレスは師匠達へ飛んでいってしまうし、それ以外でルミナさんを守る方法がなさそうだったので、高速でルミナさんを横から押すとブレスはもう目の前まで迫っていた。


 痛いんだろうな。

 そんな感想を思いながら、幻想剣にありったけの魔力を注いでこちらも聖龍剣を放ちながら、エクストラヒールを発動して審判を待った。


 そして急激に音戻って来ると、激痛が全身に走る。

 それでもエクストラヒールを再度発動すると、痛みは和らいでいく。


 ブレスの光で見えなかったけど、古竜のブレスを飲み込んだ聖龍が、そのまま古竜の頭を飲み込んだところで、聖龍は消滅していった。

 一方古竜は飲み込まれた影響なのか、先程まで飛んでいた巨体を地面に落とし疲れているようだった。


 ルミナさんを一瞬確認して、大丈夫そうなところを確認すると、師匠達へ視線を向ける。

 するとそこではまさに圧巻の戦いが繰り広げられていた。


 古竜は師匠の緩急つけた速さに翻弄されて斬りつけられ、ライオネルからはいつの間にか持ち替えていた神槍無突で串刺しにされ、怒ってブレスを吐こうとするも、その瞬間にバザックの空中に留まっている最強魔法が顔に命中してブレス事爆発する。

 完全に抜け出せないコンボで古竜を圧倒していた。


 そこへようやくポーラが動き出した。


 一体増えて四体になった“ルシエルン”が二体ずつ古竜へと近づき、ブレスを放つその大きな口を強引にこじ開けると何か樽のようなものを口の中へと放り込んだ。

 そして次の瞬間、“ルシエルン”が古竜にアッパーカットを入れたところで古竜が激しく暴れ出した。

 するとリシアンが作ったであろう植物で古竜達を縛りあげていくと、あのニオイが辺りを支配する。


 師匠達は瞬時に何を飲ませたか気付いたようで、こちらを忌々しそうに見てから後方へと下がる。

 本当に闘いを中断されたからといって、睨まないでいただきたい。


 ただあれだけ一方的な展開を作るまでに、多少は怪我を負っていたので、ハイヒールを発動しておく。


「ルシエル君……冷静な判断が出来ずに本当に申し訳ない」

 するとルミナさんがいきなり謝ってきた。


 少し擦りむけてしまっているようなので、こちらもハイヒールを発動させた。

「何を謝っているかは分かりませんが、無事に捕獲出来て良かったですね」

 俺は古竜を見つめて、そう返答した。


 別に謝る必要などはないのだ。

 “俺一人だったらもっとうまくやれた”とか、そんなことは一切ないのだから。

「ありがとう。ところで古竜の口に入れたのは……」


 ルミナさんは笑顔でお礼を言ったところで、顔を直ぐにしかめた。

 どうやらあのニオイを感じ取ったらしい。


「物体Xですよ」

「何故このような使い方を?」

 俺が苦笑しながら告げると、至極真っ当な問いが返ってきた。


「俺が竜殺しになれたのは、物体Xを樽で口に入れたからですからね。既に効果は実証されています」

「まさかそんなことが」

 それは驚きますよね。俺も赤竜の時は半信半疑でしたからね。


「たぶんですけど、古竜は力で認めさせても契約は結ばないと思うんです。古竜にも長年生きてきたプライドがあると思うので。だからそのプライドをへし折るには、それだけの理由が必要なのだとここ数年で学ばせてもらいました」

「その結果がこれか……古竜があれだけ苦しむあれを、何でルシエル君は平気で飲めるのだ?」

 今度は困惑するルミナさん。


「少しでも生存率を上げたかったからですよ。あれは成長を助けたり、状態異常の耐性を補助してくれる実は凄い物なんです。ただ飲めれば、の話ですけどね」

「まさかそんな効能があったとは……いや、しかし」

「あれを無理に飲む必要はないと思いますよ。俺にはあれを飲むことでしか、生き残れそうな 活路(みち)がなかっただけですから」

「それが賢者へと至れた道だったのね」


 ルミナさんは感動をしながらも、やはり物体Xのニオイがきついのか、顔をしかめているのがおかしくて、ルミナさんにも後方へと下がってもらった。


 ここからが本番だと思いながら、俺は古竜へと近づくことにした。


お読みいただきありがとう御座います。

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