ベンチ入りもままならない選手が夏の移籍を考えるのは仕方ない。ただ、クラブの若手を代表する選手のひとり、新人アタッカーFW相馬まで移籍を選べば、なぜ流出するのか、と疑問がわく。
相馬に限っての結論は、完全移籍でない分、サポーターに朗報となる。鹿島側は完全移籍で動いていた。Jリーグ関係者によると、鹿島は完全移籍に必要な約1億円の資金を用意し、支払う意思も示している。グランパスは相馬の考えを理解した上で、クラブから手放さない措置として、レンタル移籍を落としどころにした。
本来はMF小林(大分)らも残したかった。小林はJ2で戦う2017年に加入し、不慣れなCBもこなしてくれた。強化部門の大森スポーツダイレクター(SD)も「J1昇格の功労者」と位置付ける。だが、流出は止まらない。菅原(AZアルクマール)、マテウス(横浜M)ら計8人。加入は太田(FC東京)ら3人。レギュラークラスは減った。
夏の大量流出を受けて、心配されるのは今冬。8月中旬に市場が閉まると同時に、冬市場の調査は始まる。クラブの調査では「さらに流出する」となった。指揮官の求心力は低下していた。
人材流出は弱体化に直結する。小西社長は7月20日の第20節G大阪戦(豊田ス)で「風間を信じる。大型連勝は来ると思っている」と今季の続投を断言した。だが、その後も上向く気配はなく、直近15戦で1勝だった。
流出が続く可能性があり、試合結果もていたらく。第25節FC東京戦まで4戦連続でシュート数でも相手を下回った。
試合内容も「スピードが上がらない」「無駄なボール回しが多い」「フィニッシュにいかない」(大森SD)と分析された。勝てない上に、さらなる人材流出が懸念される。同社長も風間支持だけではいられなくなり、契約解除に至った。
観客数増加は顧客満足度の高さを証明する材料。だが、今季から「ファミリー」と名付けられたサポーターは敗戦後も穏やか。ブーイングの少なさは、クラブ側にとっても想定外だった。