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聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

13章 人類最強クラス集結

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289 混ぜるな危険

 師匠のおしおきが終わった後、グルガーさんの鼻が治るまで食堂は閉鎖されることになり、師匠が戻るまでの期間、グルガーさんはギルドマスターの仕事をすることになった。

 また、今回グルガーさんの指示で物体Xを運んだワラビスの処遇は、本当に転んだだけだったので、師匠のおしおきで許されることになり、備品整理などの仕事をさせる事に決まった。


「よし、これで俺もルシエルの旅に同行出来るな」

「師匠、でもイエニスへは飛行艇で移動しますけど、大丈夫ですか?」

「ああ。徹夜したから、イエニスに着くまではバッチリ寝ることにした」

 どうやら対策は万全らしい。

 別に揺れたり、変なGが掛かる訳ではないから、酔わないと思うんだけど、気持ちの問題なのかもしれないな。


「それでライオネル、他の皆は?」

「それが外にまで異臭が漂っていた影響もあり、皆は先に昨日飛行艇を着陸させた場所で待機しているそうです」

「……外まで臭いが? 結構酷かったのか?」

「……獣人族のケティとケフィンは涙目でしたね。一応リディアとリィナが風魔法で上空に煙や臭いは流すことはしていましたが……」

 それって本当に不味い状況だろ。


「まぁグルガーさんとワラビスは、師匠によって裁かれたからいいけど、近隣へのお詫びが大変ですよね?」

「それこそ自己責任だ。既にグルガーがギルドマスター代理だからな。さぁ行くぞルシエル」

 師匠は全てをグルガーさんに任せるらしい。


「師匠らしいですね。分かりました。じゃあ皆さん、またグルガーさんが暴走しないように見張っていてくださいね」

 俺達はそう告げて冒険者ギルドの扉を開き外へ出ると、そこには戦乙女聖騎士隊が騎兵隊となって集合しており、とても絵になっていた。

 彼女達は俺の姿が見えると、一斉に下馬した。


 馬達も落ち着いているようで、物体Xの影響は受けていないようだった。

 きっとおしおきが行なわれている最中に集まったんだろう。


 しかしライオネルの用に中へ入って来ることがなかったのは、きっと冒険者ギルドでの異臭騒ぎで、物体Xを連想させたからだろうな。


「皆さんおはようございます。それで、本当に行くんですよね?」

「ええ。これから私達はルシエル様の指揮下へ入らせていただきます」


「あの、では今まで通りの口調でお願いします。指揮下に入るのはいいですが、俺の部下になる訳ではないですから。それと皆さんの馬達はここで一旦引き取ります」

「全てルシエル君の指示に従う。いいな」

「「「はい」」」

 戦乙女聖騎士隊が下馬したので、隠者の厩舎の鍵を開けた。


 だけど中々入っていかない馬達に、時間が勿体なくて、フォレノワールを呼び出すことにした。

「ぶるるるる」っと、フォレノワールが一鳴きしただけで、あっという間に馬達は厩舎の中へと駆け込んでいった。

「ありがとう。また出たい時があったら出て来てくれ」

『ええ』

 それだけ言ってフォレノワールは精霊結晶の中へと還っていった。


「ルシエル君、精霊様の扱いが雑ではないか?」

 ルミナさんが緊張した面持ちで訊ねてきたけど、俺は精霊だと意識はしていないからな……。


「フォレノワールは相棒なんですよ。愛馬が精霊になったからといって、いきなり態度が変わったら、それまで築き上げた信頼がゼロからスタートするみたいで、俺は嫌なんですよ。きっとフォレノワールもそう思ってくれていますよ」

 うまく伝わってくれればいいけど……。


「……なるほど。色々と参考になるよ」

「? 良く分からないですけど、じゃあメラトニの外へ行きましょうか?」

「ええ」

 今日はメラトニの街を教会所属の戦乙女聖騎士達と歩いているから、そこまで声は掛からないと思っていたけど、メラトニの街はそういう街ではなかった。


「師弟で今度は何処に行くんだ。武勇伝期待してるぞ」

「また変な通り名つけてこいよ」

 師匠が何か抗議しているけど、ただ笑われるだけだ。


「ルシエル、聖騎士の誰が本命だ。それとも従者の嬢ちゃん達か」

「誰か俺にも紹介してくれ~」

「アンタ、私と結婚したばかりでしょう」

「ルシエル商会で雇ってくれ」

 色々声を掛けてくるおっさんや冒険者っぽい人もいるけど、そういう人達程近寄っては来ない。


「婆様の腰を治して」

 ん? ヒールを魔法陣詠唱で発動する。

「賢者様、ありがとう」


 するとまたしてもルミナさんから声を掛けられた。

「ルシエル君、この街はここまで声を掛けられる街だったのか?」

 他の戦乙女聖騎士隊の皆も一様に驚いているようだった。


「いつもこんな感じですね。治癒士になって二年間は、冒険者ギルドで生活をしていましたけど、色々あって街の人達を治療することもありましたから。今では故郷みたいなものです」

「……そうか」

 ルミナさんはそれだけ聞くと、何故か声を掛けられた住人達に丁寧に対応していき、それに倣うように戦乙女聖騎士隊も同じような対応をしていた。


「ルシエル様、他国ではここまで治癒士が慕われている街はないと思いますよ」

「それはこの街でもそうだったさ。だが、こいつが頑張ってきたおかげで、治癒士でもまともな考えをしている奴がいるって、皆が分かったんだろうよ。まぁ慕われているのは無償で治療したからだろうけどな」

「あの時は生きることに必死で、細かいところまで気が回りませんでしたからね」

 主に師匠との訓練しか記憶に残っていないし……。


「それでもこれからは少しずつ変わっていくと思います。教皇様も頑張っているみたいだし」

「ルシエルは教皇を目指す気はないんだろ? だったらこの件が終わったらどうするつもりだ?」

「とりあえずはのんびりしますかね。でも安心は出来ないんで、とりあえず皆でグランドルの迷宮でレベルだけは上げておくとかですかね?」

「なるほどな。じゃあ本格的に考えないとな」

「何をですか?」

「こっちの話だ」

 変な師匠だと思いながら、戦乙女聖騎士隊の面々は楽しそうにメラトニの住人達と話していたので、ゆっくりとメラトニの街を出ることになった。


「ルシエル君、この街は皆が優しく喋りやすい人達ばかりだった」

「それは良かったです」

 でも、きっと街娘の格好をしていれば、きっと皆が皆、喋りかけてくれるだろうと思ったことは、心の中で留めることにした。


 そして昨日飛行艇を着地させた場所へと赴くと、そこには何故か公園の遊具が幾つも作られていた。


「これは一体?」

「おっ、ルシエル様。この転生者を名乗っている者が、子供達が遊べる遊具をいくつも知っていると言ってな。暇だから作ってみた」

「作ってみたって……」

 既にシーソーやジャングルジム、ブランコだけでなく、箱ブランコや回転ジャングルジムまでもが作られていた……大人仕様で。


「ルシエル様、イエニスでは学校があることも聞いているわ。本当に色々頑張るから雇って欲しいの」

 アリスの行動力を見誤っていたか。

 しかしリィナはどうしたんだ? 俺がリィナに視線を向けると、シーソーでナーニャと遊んでいた。


「あ、ルシエル様、たぶんですけど、あの子も転生者ですよ」

 こちらに更に近づいてきて、アリスは告げてきた。


「……どうしてそう思う?」

「だって、遊具の名前を口走っていましたから」

 ……何でバレるの? もしくはアリスが鋭いのか? しかしとっても面倒だ。


「なんと面倒な……仕方ない。エスティアの判断に任せる」

「え~、だってエスティアちゃん、昨日から私に冷たいんですよ?」

「アリスお姉ちゃんが、ルシエル様の愛人になりたいとか言うからです」

 エスティアがそこそこ大きな声でそんな発言をした。

 まぁナディアとリディアは知っているからいい。

 でも、他に人がいることを考えての発言をして欲しかった。


「なっ!? 愛人だと」

 まさかのルミナさん乱入で、俺の頭は徐々に冷えていく。

 あ、もう面倒になってきた。


 俺は無言のまま飛行艇を魔法袋から出すと、点検が終わる前にさっさと飛行艇に乗り込むことにした。

「転生者同士は鬼門だらけなんじゃないだろうか……」

 俺はそんなことを呟きながら、一人ブリッジへと移動した。


 結局、皆が飛行艇に乗り込んだのは三十分以上経った後だった。

 アリスの全面謝罪により、騒動は鎮静化をみたけど、この面子はアリスがいるからか、混ぜるな危険の要素が沢山注ぎ込まれている印象しかなかった。


 全員が乗りこんだことをケフィンが教えてくれたのだが、人数が人数なので、飛行艇に初搭乗の戦乙女聖騎士隊とライオネルだけがブリッジに残り、俺は飛行艇に魔力を注ぎ始めるのだった。


お読みいただきありがとう御座います。


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