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(なつ)何してんの?
(照男)古い牛舎を建て替えようと思ってんだ。
あそこ 壊しちゃうの?(照男)もっと大きい牛舎にするんだ。
(剛男)今度はパイプラインミルカーにするそうだ。
パ… パイプライン?
(坂場)搾った牛乳を集めるまでを機械化するということですね?
(照男)そう。 イッキュウさんそれが 今 一番新しい牛舎なんだわ。
(激しい雨の音)
(富士子)あっ 降ってきた。
じいちゃん…。
昭和50年8月。
この年 十勝は冷害 水害に見舞われました。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
じいちゃんは知ってたの?古い牛舎を建て直すって。
じいちゃんは俺に任せるって言ってくれたんだ。
そうなの?
(夕見子)今のバケットミルカーじゃダメなの?
パイプラインにすれば重いバケットを運ぶ必要もなくなるべ。
牛だって どんどん増やしていけるんだ。
いや したけど 設備費用もかかるからな。
また お金を借りるってことかい?
まあ 組合としても 補助事業として勧めてるところがあるから単純に反対はできないけど。そうだ。
うちが率先してやらないで どうするんだ。
じいちゃんの作った この牧場を十勝一 日本一にしていくのが俺の役目だべさ。
いくら 補助があったとしても多額の借金をすることに変わりはないからな。
それは 父さんも納得してるべさ。
乳量を増やしていけば借金した分は取り返せる。そうやって 牧場は大きくしてくしかないべや。
だけど 投資を回収するために規模を拡大してゆけばそのうち終わりが見えなくなりませんか?
えっ?イッキュウさん…。
父さんは反対しないのかい?照男のやることに。
(泰樹)照男の好きにすりゃいい…。
これは照男の開拓じゃ。
照男が覚悟すりゃいい。
じいちゃん… 分かった。
(雷鳴)
その晩は 嵐になりました。
(激しい雨の音)
(雷鳴)
♪~
あっ 父さん 停電だわ。
何時じゃ?もうすぐ7時です。おお 照男。参ったわ 停電だ。
電気がなければ ミルカーが使えないべ。牛乳を冷やす バルククーラーもだ。
(剛男)全部 電気頼みだからな。
おはよう。おはようございます。
(一同)おはよう。(夕見子)なしたのさ? みんなで。
停電で ミルカーが使えないって。
(泰樹)牛は?菊介さんと砂良が見てるわ。
搾乳は?(照男)大丈夫だ じいちゃん。搾乳は 昼ごろまでしなくたって牛は待てるって話だ。それまでに 電気も通るべ。
昼まで搾乳しなかったことなんてあるの?
うちでは まだないけど…大丈夫だったって話は聞いてる。
俺は 一応発電機のありそうなとこに聞いてみるわ。
(鳴き声)
ダメだ…。
牛が鳴いてるべ。えっ?
牛が鳴いてるのが聞こえんのか!じいちゃん…。
すぐ牛舎行け!
牛 放っておくな!父さん…。
牛は 決まった時間に搾ってやるからわしらを信用していい乳 出してくれるんじゃ。
こっちの都合で待たせるな!手で搾るんじゃ!
搾らなかったら 乳房炎になるべさ!
牛を助けるんだ。 照男 行け!
分かった。
手の空いてる者は みんな来い!
お義父さん すいませんが僕は農協に向かいます。
ほかに困ってる農家があるかもしれないんですぐ対策を考えます。剛男 頼む… 行け。
なつ すぐ着替えてこい。
分かった! 千遥 子どもたち お願い。
♪~
(菊介)おやっさん! なっちゃん!菊介 どうじゃ?
分娩間もない牛から搾り始めてます。うん。
あと 乳房炎にかかったことのある牛もいれば先に搾った方がいいと思う。そうだな。
なつ ついてこい。はい!
♪~
なつ この牛 搾れ!分かった。
じいちゃん 私にも教えて!僕にも教えて下さい!
教えてる暇はない… 見て覚えろ。はい。
イッキュウさんは 集乳缶 運ぶの手伝った方がいいわ。うん 分かった。
夕見子 あんたには 私が教えるから。
(悠吉)おやっさん!おやじ!悠吉さん!
遅くなりました!よく来てくれた。 牛 頼む。
はい!
だけど おやっさんバルククーラーが使えないんじゃ牛乳を冷やしておけないべ。搾乳しても 出荷できないですわ。
牛だけは助けたい。 牛乳は 後でいい。
母さん 砂良アイスクリーム屋を壊してもいいか?
えっ?(砂良)どうすんの?
じいちゃん 少しでも冷やせるように水槽を戻すべ!
ああ 照男 頼む!分かった。
地平 ついてこい!(地平)はい!
♪~
急げ!
♪~
地平 井戸水くんでこい!分かった!
♪~
おっ…。
何だ 私にも才能あるんでないの。
イッキュウさん これも。分かった。お願い。よいしょ…。
♪~
もう これが限界だ…。
しかたないべ。牛は 全部 助かったんだ。
乳房炎になった牛はきっと 一頭もおらんべさ。
いかった!
よくやった 照男。
俺なんか まだダメだ。
いや そんなことはない。 よくやった。
じいちゃん…。
一番大事なことは働くことでも 稼ぐことでもない。
牛と生きることじゃ。
うん…。
(泰樹)みんな よくやった。
ご苦労さん。
♪~
嵐が去った翌日なつは 泰樹さんと一緒に天陽君の畑に向かいました。
(靖枝)泰樹さん! なつさんも!
こんにちは。
来てくれたんですか。ああ。
大変でしたね。
(靖枝)はい。
義父と義母は 家の方を片づけてます。
(タミ)どう?(正治)ああ 大丈夫。
絵は ぬれてない。 無事だわ。
ああ よかった…。
なんとか守れたわ 天陽を…。
どうじゃ?
畑は このとおり。けど 芋は残ってます。水浸しで売りもんにはならないかもしれないけどでんぷん用に出荷することならできるかもしれんわ。
天陽が守ってくれたんじゃ。
はい。
(泰樹)わしらも手伝う。手伝います。
すいません。
なつさん ありがとう。
なんも。
陽ちゃんも喜んでます。
あの なつさん…なっちゃんって呼んでもいいかい?
当たり前だべさ。 やっちゃん。
(笑い声)
さあ やろう。
みんなで頑張るべ!
(道夫)はい!(彩子)はい!
♪~
(泰樹)この荒れ地を我々の子孫に誇れる美しい我が里の風景に変えんじゃ!
(一同)オ~!
♪~
痛っ!
大丈夫?
なつよまた 大事なものを受け継いだな。