【ニューヨーク=重田俊介】安倍晋三首相とトランプ米大統領は25日午後、米ニューヨークで日米貿易協定の締結で合意した。日本側によると、両首脳は米国による自動車への追加関税の回避を確認した。自動車や自動車部品の関税撤廃は先送りし、農産品は米国産牛肉や豚肉を環太平洋経済連携協定(TPP)と同水準に下げる。トランプ氏は新たな貿易交渉に意欲を示した。
両首脳は協定案の最終合意を盛り込んだ共同声明に署名した。トランプ氏は「アメリカ製品にとって70億ドル(約7500億円)ほどの市場が開かれる。慢性的な貿易赤字を減らす上で重要だ」と意義を強調した。首相は「日本と米国にとってウィンウィンの解決策になる」と応じた。
正式な協定は手続きが間に合わず、後日改めて署名する。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は2020年1月に発効するとの見通しを示した。一方が通告すれば4カ月後に効力を失う規定も設けた。
貿易協定の発効後、4カ月以内に新たな貿易交渉の対象範囲を決める。自動車など継続協議になった品目のみを対象とする方向だ。トランプ氏は「遠くない将来に日本とまさに包括的な取引をしたい」と新交渉に意欲を示した。
日本側が求めていた自動車の追加関税の回避は、共同声明に「両国は協定が誠実に履行されている間、協定及び共同声明の精神に反する行動はとらない」と記した。
茂木敏充外相は首脳会談後の記者会見で「追加関税を課さない趣旨であることは首脳会談でトランプ氏に明確に確認した」と説明した。ライトハイザー氏も会談後、「現時点では日本車への追加関税を課すことは考えていない」と表明した。
自動車輸出の数量規制は共同声明や協定案で言及はなかった。茂木氏は記者会見で「ライトハイザー氏に日本は適用外だと明確に確認した」と明らかにした。
協定案は農産物と工業品の関税引き下げで構成した。
TPPで撤廃を決めていた米国向けの自動車や自動車部品の関税は、事実上の先送りとなった。協定案に撤廃の文言を盛ったが、具体的な時期は明示しなかった。撤廃に向け米国との交渉を続ける。米国は工業品分野で産業機械や化学品などの輸入関税を撤廃・削減する。
農産品では米国産の牛肉や豚肉の関税引き下げでTPPと同じ内容にする。米国産牛肉にかける38.5%の関税は、段階的に9%まで削減。豚肉は低価格品にかかる1キログラムあたり482円の関税を最終的に50円にする。TPPで決めたコメの無関税枠は導入しないほか、林産品・水産品についても関税の削減・撤廃は見送った。
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