茨城県境町の住宅で、会社員の小林光則さん(48)と妻でパート従業員の美和さん(50)が殺害され、子供2人が重軽傷を負った事件で、中学1年の長男(13)と小学6年の次女(11)が「帽子をかぶりマスクをした人に襲われた」と話していることが分かった。美和さんは自宅周辺への不審な人物の出入りを警戒していたとされるが、専門家は「犯人は一方的に強い殺意を抱いていた可能性もある」と分析する。

 小林さん夫妻の死因は刃物で刺されたことによる失血死。顔や首、胸などに多数の傷があった。

 「殺人の場合、加害者と被害者の面識率は90%を超え、動機も不満や憤懣(ふんまん)などが50%を超える」と話すのは、東京未来大学教授の出口保行氏(犯罪心理学)。

 犯人は帽子とマスク姿で、1人で何もしゃべらないまま犯行に及んだとされる。

 出口氏は、「変装からも用意周到さが見える。電気が消えたり、寝静まる時間帯をあらかじめ見計らっていた可能性もある。相手を苦しめたい場合、声を出すこともあるが、無言だったのは『殺害する』という目的だけだったとみることもでき、計画性のある強い殺意がうかがえる」と解説する。

 一方、現場周辺では以前から、空き巣などが多発していたとされている。また、小林さん宅周辺にも、不審者の目撃情報があった。

 近隣住民らによると、小林さん方は、東側の道路から敷地に入り、60メートルほどの道を通って家屋に向かうことができるほか、北側の釣り堀そばからも家屋へと続く約20メートルの細い道があるという。

 美和さんを知る近隣住民によると、小林さんは今年に入り、細い道の入り口付近にひもをかけて通れないようにしていたと産経新聞が報じた。美和さんは「変な人に入られたら嫌だから」と話していたという。

 今回の事件と関係はあるのか。前出の出口氏は、「ひもは不審者への心理的な作用を狙っただけにもみえる。具体的に付きまとわれるなどしていれば、もっと厳しい警備をしていたはずだ」と疑問視する。

 小林さん夫妻の顔や首、胸には刃物によるとみられる多数の傷があり、強い殺意がみえるが、出口氏は「加害者と被害者が直接コミュニケーションを取っているとはかぎらない。犯人が被害者を一方的に知っていたり、『見たことがある』程度のケースも含まれることがある」と指摘した。