クラブスタッフが敗戦後に何度つぶやいたか。「ブーイングが小さいですね」。激励を込めたブーイングの声は確かに、大きくはなかった。
今季、サポーターは「ファミリー」と名付けられた。呼称づくりを提案したのは風間監督で、名称はクラブが決めた。クラブ関係者はブーイングが小さい理由のひとつとして、7月20日のG大阪戦後の小西社長による風間監督続投宣言を挙げた。「風間と心中」を腹に決めていたのだろう。
サポーターはクラブを文字どおり支援する。声援とチケット購入などによる金銭の2本柱。声援にはブーイングも含まれる。クラブとサポーターは緊張関係にある。
一部には家族を意味する「ファミリー」と呼ばれて、クラブへの愛情を深化させたサポーターもいるかもしれない。風間監督の独創性を信じて連勝街道へのきっかけを待ち続けたが、風間監督との未来を絶たれて喪失感を味わったに違いない。
思えばクラブはいつも「宝物」を放り投げ、そのたびに1からのスタートを強調した。2014、15年の西野朗、16年にはOBの小倉隆史を監督兼GMに据えたもののシーズン終了と同時に関係を断った。風間監督との関係も2年半で終えた。
今回の監督交代劇に、これまでとの違いがあるとすればクラブの主張。根幹に「攻守一体の攻撃サッカー」がある。監督は代わっても、スタイルは変わらない。
クラブとサポーターの関係は尊い。風間流サッカーを目撃したファミリーの目は肥えた。名古屋の、日本のサッカー文化発展の歩みを止めてはならない。ファミリーはクラブの動きとフィッカデンティ新監督の戦いを冷静に見ている。(特別取材班)
=終わり