【羽ばたけ中部勢】陸上未経験から100メートル歴代2位10.62 亀山中部中・中山、”衝撃”の遊びダンクから全中V2019年9月25日 紙面から
陸上男子100メートルで、中学歴代2位の10秒62をたたき出したスプリンターが三重県にいる。亀山市立中部中3年の中山智貴(15)。体育館で見せた“衝撃”の跳躍をきっかけに陸上を始めて3年足らず、8月の全日本中学校陸上競技選手権大会(全中)では200メートルで頂点に立ち、強さを証明した。大きな可能性を秘めた逸材は、秋季シーズンでも快走を狙う。 最高気温33度となった灼熱(しゃくねつ)の大阪で、栄冠をつかんだ。全中の男子200メートル決勝。中山は100メートル付近のカーブ出口で先頭に付けると、直線で加速し、さらに体一つ前に出た。100~150メートル付近でギアを上げるのは、理想の展開。自己記録まで0秒07に迫る21秒88で駆け抜け、両腕を突き上げた。 前日の予選から一転、記録ランク上位で臨む緊張感と、暑さの影響を感じさせなかった。「予選は不安があったけど、準決勝と決勝は自分の走りができた。カーブを抜けた辺りで前に立ち、走りが伸びた。日本一は初めてなので最高でした」と余韻に浸った。 気持ちの切り替えに、普段通りの食事が一役買った。前夜、顧問の川西剛志教諭(39)に頼み、夕食にうどんを食べに出た。消化の良さ重視で中2夏から定着した“勝負メシ”。だし汁にかつお節、ネギを盛った一杯は、全国大会でもパワーを発揮した。 中学入学前は本格的な運動経験はなく「徒競走は速い方だけど、1番ではない」。転機となったのは、中部中の入学説明会。空き時間に体育館でダンクシュートのまね事をして飛び跳ね、ネットに手が届いた時だ。 「何をやっとるんや」と、居合わせた川西教諭から声が掛かった。目的は説教ではなく、スポーツ経験の調査と陸上部への勧誘だった。中山はサッカー部と迷っていたが、褒めてもらえたことで陸上部を選んだ。 メインの100メートルは中1で12秒22、中2で11秒20とタイムを縮めたが、昨年11月に腰のヘルニアに見舞われ、約3カ月間ダッシュを禁じられた。「もどかしかった」 その間は体幹トレーニングに励んだ。練習法が分からず、母・幸代さんに買ってもらった、サッカー長友佑都のトレーニング本で研究。家でも学校でも携え、毎日欠かさなかった。 故障が癒えて臨んだ今季は、春先から好調を維持した。7月23日に初の10秒台(10秒78)で走ると、6日後にさらに0秒16縮めた。好記録を連発する中で“長友効果”を実感している。 全中から1週間後、10月のジュニア五輪200メートル県代表を勝ち取った。中学最後を予定する全国大会で、県中学記録(21秒55)を目指す。「全中のような走りができたら決勝にはいける。記録を狙います」 (高畑章) ▼中山智貴(なかやま・ともき) 2004(平成16)年4月27日生まれ、三重県亀山市出身の15歳。165センチ、57キロ。市立井田川小を経て、市立中部中3年。今年8月の全中では、200メートル優勝、100メートルは準決勝敗退。自己記録は100メートル10秒62(追い風2.0メートル、中学歴代2位)、200メートル21秒81(追い風1.5メートル)。
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