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「制度疲労」を見て見ぬふり

 考えてみれば、この2年間は「役所のデータがおかしい」と皆が気付き、かつ問題の根本原因を改めるチャンスでもありました。しかし、あらゆる問題が「集計のミス」「個人のミス」と矮小(わいしょう)化されてしまい、その結果、小さな問題が波状攻撃のように発覚していると思っている人も多いかもしれません。

 しかし、それらのミスは「人材不足」に集約されると鈴木さんは主張します。

 「統計部署は国会折衝があまりなく、閑職扱いというか、心身を休ませるためのポストと位置付けている役所が多いのです。それもあってか、公務員改革のたびに思いっきり人が減らされてきました。予算はあるけど内部に人がいないから、外部委託ばかりしています。とにかく現場が弱くなってしまった」(鈴木さん)

 その結果、集計ミスが続発してしまいます。さらに、数字のチェックもされないならごまかしたってよいとするマインドの低下も招いたと鈴木さんは考えます。

 だったら人を増やせばよいと考えますが、このご時世に「公務員増員」は反発を招くでしょう。それに「人が増えたからすべて解決します」というのは悪魔的発想です。従業員のストライキで営業を停止した東北自動車道の佐野サービスエリアが、あわてて別のアルバイトを雇ってもうまく回らなかったのと同じで、「これまでの知見」「積み重ねた個人の経験」「場数」「慣れ」があって、ようやく一人前になるのです。

 鈴木さんは「GDP(国内総生産)基準年変更や国勢調査など大規模調査を経験して、こうやるのかと覚えないと無理。だから人材の育成には5年はかかる」と言います。

 そんな中、統計に起きている大問題が「制度疲労」です。タワーマンションのような防犯設備の整った環境を持つ住宅が増え、家計調査などの依頼すら難しくなってきています。それ以外にも、単身世帯の増加、高齢化など、日本を取り巻く環境は大きく変化しています。それに対応した統計や統計手法を考えなくてはいけないのです。

「家計調査」統計を作るためのハードル
  • 精緻な記入の難しさ(誤記入の発生可能性)
  • 単身世帯の増加(社会構造の大きな変化)
  • 協力世帯の減少(家計簿以上にめんどくさい作業)
  • オンライン移行の困難さ(デジタルへの世代別の対応、回答率の違い)
統計の制度疲労がもたらすハードルを「家計調査」を例に挙げてみた。「家計調査」は「6カ月間(単身世帯は3カ月間)、毎日のすべての収入と支出を家計簿に記入」する。家計調査に関するQ&A(回答)より。2002年からは貯蓄・負債も調査されている(※「家計調査」は一部オンライン化が始まっています)