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 もう1つ厄介なのは「ヤミ統計」です。総務省の「統計法に関する説明」から抜粋します。

統計調査は、統計の作成を目的として、個人または法人その他の団体に対し事実の報告を求めるものです。国の行政機関が行う統計調査は、「基幹統計」を作成するために行われる「基幹統計調査」と、それ以外の「一般統計調査」とに分けられます。なお、統計調査には、意見・意識など、事実に該当しない項目を調査する世論調査などは含まれません。

 外部委託せず、自分たちで統計調査をすると統計法に引っかかります。統計法の対象となると、「あらかじめ総務大臣の審査・承認を受ける必要」があります。時間もかかり、統計局にあれこれ言われるようです。急いで作成する必要があるなら外部委託した方が格段に早い。これが外部統計が増える理由の1つになっています。

 一方、上記文面にあるように、意見・意識という名目の“アンケート”なら統計法の範囲外になります。この法の隙間を突いたのが「ヤミ統計」です。

 18年の働き方改革法案の審議で、裁量労働制の労働者と一般の労働者の労働時間を安倍首相が引用し、その後、データ不備が発覚した「平成 25 年度労働時間等総合実態調査結果」ですが、もともとが「ヤミ統計」だったから起こったのではないか、と鈴木さんや私は考えています。

 その他にも、農林水産省大臣官房統計部が発表した「有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査」や、内閣府が発表した「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」は外部委託先の記載がないので、「ヤミ統計」ではないかと鈴木さんや私は考えています。

 しかし、農林水産省や内閣府に聞けば恐らく「これは統計ではなく単なる世論調査だ」と言い切るでしょう。世論調査と言い切れば統計法の範囲外なのです。

 ちなみに1999年3月に、経団連から「わが国官庁統計の課題と今後の進むべき方向」と題した提言が発表されましたが、その中にも「報告者負担の軽減のために」の段落にヤミ統計が登場します。ここ10年で登場した話ではなく、20年、それよりもっと前からある根深い問題だと鈴木さんは指摘します。

 「現場では統計法をギチギチに守るのはやってられないと、ヤミ統計に逃げるのですが、それは役所の論理です。もう、やり方を変えないといけない」(鈴木さん)