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統計制度の複雑骨折、4つの課題

 鈴木さんは以前から「統計制度が複雑骨折している。全治10年はかかる」と指摘されています。具体的には「チェック機能の崩壊」「統計調査の外部委託」「ヤミ統計の横行」「制度の疲労」の4点を指摘します。

 「18年末に明るみになった毎月勤労統計の事件では不正がないかチェックしたのに、19年8月に同じ統計で再び不正が発覚しました。いったい、どういうチェックをしたのでしょう? それを指摘する報道もなく、政治家もいないのは、おかしいですよね」(鈴木さん)

 何をチェックするか、大きく2つの観点があると考えます。

 1つは数字の誤記入。過去には、国土交通省の建設工事統計で「百万円」と「万円」の書き間違いがスルーされ、兆円単位で誤差が生じています。厚生労働省の薬事工業生産動態統計でもコンドームの生産数量が約15倍多く誤計上されました。このチェックは、現場で対応できます。

 もう1つは数字の不正。8月に発覚した「最低賃金に関する基礎調査」の不正は、似たような数字を並べたり、他の調査票をコピーしたりして、現場の人間が勝手に数字を操作していました。このチェックは、現場を監督する中央官庁にしかできません。

 「多くの統計調査は地方に委託していて、回収されたデータは間違いないという善意の下で統計制度が成り立っています。単なる誤記入も、回収するタイミングで統計調査員や中央官庁の担当者が指摘できればよいのですが、足腰が弱まっていてちょっと難しい。現場も中央官庁も統計にそこまでの理解も無ければ、理解するための時間もない」(鈴木さん)

 足腰が弱まっている理由として、鈴木さんは統計調査の外部委託の多さを指摘します。通常、省庁が統計調査をする場合は総務省に届け出をします。しかし審査に時間がかかるため、逃げ道として「調査の外部委託」が選ばれています。この場合、調査実施者が民間企業になるので、法律上は審査を受けなくても問題ないのです。

 ちなみに政府の事業支出が検索できる政策シンクタンクの「構想日本」の「政府の事業が検索できるサイトJUDGIT!」で、リサーチと付く主要支出先を検索するとさまざまな企業名がヒットします(詳細はこちら)。そのほとんどは調査の外部委託によるものです。

 外部委託ばかりで調査設計能力が落ち、基幹統計・一般統計の集計ミス、作業ミスにも気付かなくなったというのが鈴木さんの見解です。

構想日本の「政府の事業が検索できるサイト JUDGIT!」。主要支出先検索で「リサーチ」をキーワードにして検索すると、企業名がリストアップされる