東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

タクシー運転手 プロにも高齢対策急げ

 高齢運転手のタクシーが暴走し通行人七人が負傷する事故があった。一般人の高齢ドライバーによる重大事故を抑えるため、公共交通機関の充実が求められているが、そのプロにも対策は急務だ。

 最近の事故は、今月十四日夜、名古屋市の金山総合駅南口ロータリーで、路上ライブ中の歩道にタクシーが突っ込んだ。愛知県警は、七十五歳の運転手を自動車運転処罰法違反(過失傷害)容疑で現行犯逮捕した。

 タクシーは歩行者らをはねていったん停止した後、バックで急発進し、さらに人をはねて止まった。けが人七人はいずれも軽傷。報道によると、運転手は「ブレーキとアクセルを踏み間違えた。なぜバックしたのかは覚えていない」と供述しているという。

 国土交通省などによると、全国のタクシー運転手の総計は年々減り続けて二〇一六年で二十九万人弱。平均年齢は逆に上がり続けて五十九歳を超え、全産業の平均を十六歳ほど上回っている。

 運転手のうち六十歳以上の人が53%おり、タクシー全体の事故件数一万三千件余の65%を占めている。高齢化の進行と高齢ドライバーの事故率の高さが見て取れる。

 七十歳以上の運転手は、全国で数千人以上いるとみられる。今年六月には、千葉市で八十歳運転手のタクシーが歩道に突っ込む事故(けが人なし)もあった。

 昨今、一般の高齢ドライバーによる重大事故が目立つ。このため国など行政は、免許証返納の奨励や安全装備車限定の高齢者向け免許創設を検討。そして、特に地方での公共交通機関充実にも注力している。その担い手となるプロの運転手の高齢化対策も急がねばならない。時代の要請だ。

 タクシーを運転するには、普通一種免許より視力や聴力などを厳しく試す普通二種免許が必要だ。二種の更新時には、遠近感をチェックする「深視力検査」が課せられ、一種の更新よりも厳しい。六十五歳になると、国の機関「自動車事故対策機構」による診断も受けるが、免許の資格停止などにはつながらないという。

 タクシー運転手は豊富な経験と実績で運転技術や地理などを深く知るプロだ。その自覚や誇りは一般ドライバーの比ではなかろう。運転で稼がねばならない現実もある。とはいえ、老いや衰えは誰にでもやってくる。国や警察は、更新時などにそれらを見抜き、善処する方策を一般ドライバーへの対策と同様に急いでほしい。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】