英断か、早計か。主将のリーチが、次戦の先発から外れることになりそうだ。ただ、仮にそうなったとしても、ジョセフ・ヘッドコーチの非情采配とは思わない。リーチのプレーは4年前と比べ、明らかに精彩を欠いている。トップリーグを見ていても、そう感じたことがある。主将が試合に出ることは理想だが、それが当たり前になったらチームの成長は止まる。
今の日本代表は主将の責任を共有するため、流、姫野、ラブスカフニ、田村ら10人でリーダー陣を形成。それぞれに攻撃、防御、精神面などの役割分担を決め、リーチをサポートしてきた。リーチがいなくても、問題が起きないようにチームをつくり上げてきた。むしろ、主将不在はチームのカンフル剤になる。次戦の相手は、スコットランドをノートライに抑えて完勝した格上のアイルランド。「この一戦」にかけるチーム内の圧を最大限に高める必要がある。「リーチがいなくて負けた」。そう思われないよう、モチベーションはおのずと高まる。
後半、数点差を追いかける場面で満を持してリーチが登場すれば、大逆転に向けて一気にトップギアに入るのではないか。これまで先頭に立って引っ張ってきたリーチ自身にじくじたる思いはあるだろうが、チーム内の化学反応を期待したい。(末松茂永)
▼末松茂永(すえまつ・しげなが) 1973年8月21日生まれ、東京都稲城市出身の46歳。国立高から本格的にラグビーを始め、早大進学後もFBで公式戦に出場。オール早大に選出され、アイルランド、英国に参加。その後、ニュージーランドのクラブチームでもプレー。2001年に中日新聞社に入社。社会部の警視庁捜査一課担当時代は未解決の世田谷一家殺人事件などを追い、2018年に中日スポーツに異動。現在、ラグビー担当。