麻薬界の女帝・ヘロインの本当にヤバすぎる快楽とは? 止められない理由と脳内作用を徹底解説!
1960年代に入って、モルヒネを原材料とした「エルトフィン」というモルヒネの数千倍の強さを持つ化合物が合成されました。これはあまりに強すぎて、人間に使うとごく微量でも麻薬作用を持つ以前に致死量に達しやすく、名実共に天国行きになってしまうので、キリンやゾウ、グリズリーなどの巨大な動物の麻酔薬や、麻酔銃の薬物として使われています。
そして1972年に脳の中心部に多くある「オピオイド受容体」が発見されると、これが大けがなどの際に痛みを感じなくさせるためのスイッチとして機能していることがわかってきました。それが脳内麻薬などと称される「インドルフィン」や「エンケファリン」「エンドモルヒネ」などと呼ばれる物質です。これらはアミノ酸が連なったペプチドで、これがオピオイド受容体に結合することで、強力な鎮痛作用を示すことが分かったのです。
逆に、このオピオイド受容体の働きを阻害する物質も次々と見つかりました。代表的なのはナロキソンで、モルヒネ中毒の治療薬としても機能します。ナルトレキソンというさらに強い拮抗薬も存在し、エルトフィンの解毒薬として獣医分野で使われています。
交通事故や、転落などで大きなケガをしたことがある人はわかると思うのですが、事故当初は、本当に「えらいこと」になっているのか怪しいくらいに痛みがなく、冷静な判断ができてしまうものです。それは、人間が大ダメージを受けたときに痛がっていてはそのまま死ぬしかないので、とりあえず痛みをオフにして、危機を回避するために脳がはたらいている証拠です。この“生きるための脳の仕組み”こそが、このオピオイド受容体の仕事だといえるわけです。
これを転じて考えると、理論的には人間を拷問にかける前にオピオイド拮抗剤を投与しておけば、苦痛の先の桃源郷へ現実逃避させることをできなくさせることも可能なわけです(受容体の特性から、おそらく完全には動作しないと思うけど)。
●オピオイドは脳内で何をするのか?
オピオイド受容体は脳内のあちこちに存在しますが、受容体にもいくつか種類があり、δ(デルタ)、κ(カッパ)、μ(ミュー)の3種類があります。そして、この3種類からさらにそれぞれ数種類あり、これからも発見されて増えていくと思われます。
それぞれの受容体によって、多幸感や抗鬱作用、胃腸の動きを止めたりなど、体の反応が異なります。
多幸感をもたらすのが「オピオイドμ受容体」で、鎮痛などを担当しているのは「κ受容体」なので、薬の選択制が高ければ痛みを抑えつつ、多幸感は発現しにくいようにと分子的な調整も可能になるわけです。
ともあれ麻薬としてのオピオイドは血管に入ると、2、3分で脳に達して中脳腹側被蓋野に多くあるμ受容体に結合、中脳腹側被蓋野は快感を司る、通称A10神経の司令塔であり、ドーパミン作働性ニューロンをフルスロットルにして凄まじい快感を生み出します。これがヘロインです。
この快感は、あらゆる麻薬のなかでも別格らしく、“人間が本来生まれてから死ぬまでに味わうあらゆる快感を遙かに超越するもの”なので、一度でもその恍惚感を知ってしまうと、麻薬を止めても、人生自体が無味乾燥としたものに感じられ、あらゆることに達成感も何も感じなくなってしまうという、まさに人生そのものを破壊しかねない効果があるというわけです。
それだけハイパワーな快楽があると、人間は行動することが不能となって、ただただその快感を味わうために、床にゴロゴロと転がる……というゴミ以下の存在になり果てるわけです。
ちなみに、ガンや戦争での大けがなどの、実際にひどいケガ、痛みが存在するときは、ドーパミンの放出量が抑制されるので、そうした多幸感は比較的出にくくなります。
故に、映画とかでヘロインなどの麻薬を打たれたヒーローが、正気、意識を取り戻すために自分の体を刃物で刺しすというような演出が出てきますが、理にかなっているといえるわけです。
本来人間を生かすためにはたらくはずのオピオイド受容体を悪用すると、クズ人間になってしまうということです。ご注意を!
(文=くられ/シリーズまとめ読みはコチラ)
■くられ
添加物を駆使した食欲の失せるカラフルな料理やら、露悪的で馬鹿げた実験を紹介していく、「アリエナイ理科ノ教科書」の著者、サイエンスライター。公演やテレビ出演なども多数。無料のメールマガジンも配信している。ひっそり大学で先生をしてたりもする。WEBや雑誌での薬と毒関連の連載をまとめた新刊『悪魔が教える 願いが叶う毒と薬』(三才ブックス)が好評発売中。
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【これまでの猛毒一覧】
・青酸カリ「前編」「後編」
・リシン「前編」「後編」
・クロロホルム「前編」「後編」
・一酸化炭素「前編」「後編」
・覚せい剤「前編」「中編」「後編」
・トリカブト「前編」「後編」
・タリウム「前編」「後編」
・ドクウツギ「前編」「後編」
・ヘロイン「前編」「後編」
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