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昭和５０年３月富士子さんが　小学校に上がる優のために上京してくれました。
（富士子）じいちゃんがね…このところ　元気がないんだわ。
（なつ）えっ？
病気とかじゃないんだけどね…　９０だしね。
父さんも言ってた…　穏やかになったって。
私の母さんのことがあってから医者が嫌いでね一度も　かかったことがないでしょ。無理やり　連れていこうとしたらもう十分なんて言うんだわ。そうはいってもなかなか　しぶといと思うんだけどねじいちゃんのことだから。
♪～
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪「口にする度に泣けるほど憧れて砕かれて」
♪「消えかけた火を胸に抱きたどり着いたコタン」
そして　４月　優は小学校に入学しました。
しかし　こんな日もなつと　イッキュウさんは休めません。
ごめんね　母さん　慌ただしくて。そのために来たんだから。
（坂場）お義母さん　すみません。よろしくお願いします。
あっ　イッキュウさんのご両親から届いたこの百科事典　どうするの？
（坂場）あ～　そのまま置いといて下さい。出しても　まだ読めませんから。分かった。
名古屋のおじいちゃん　おばあちゃんに入学式の写真と一緒にお手紙送ろうね。（優）うん。
優　おめでとう。（坂場）おめでとう。なるべく早く帰ってくるからね。
行ってらっしゃい。
おはようございます。
遅くなって　すみません。（桃代）なっちゃん　おめでとう。
ありがとう。（陽平）おめでとう。ありがとうございます。
（町田）これ　今朝　回収した原画です。あ…　みんな　どう？
外注先も　みんな　徹夜続きです。
あっ　でも　作品にはみんな　自信持ってるんでそれで　なんとか持ちこたえてる感じですね。あ…。
（麻子）イッキュウさん　今日中に次の絵コンテ上げてね。分かってます。
「大草原の少女ソラ」は放送から半年がたち人気番組になっていました。
物語も佳境を迎え　なつたちも外注先も視聴者の期待に応えようと必死に作業を続けました。
上手。　もう一つ…。
（ブザー）はい。
（千遥）こんにちは。
千遥ちゃん？
姉から　お見えになっていると聞いていたので。
えっ？
（千遥）千夏です。
あれ！　本当　昔のなつに　そっくりだわ。
（優）千夏ちゃん！（千夏）優ちゃん！
どうぞ　上がって。お邪魔します。
♪～
あの　柴田さんその節は　大変失礼をしてすみませんでした。
私の洋服まで　取っといて頂いてありがとうございます。
なんもさ。そんな水くさいこと言わなくていいの。
あっ　これ優ちゃんの入学祝に作ってきたんです。
千遥ちゃんのお料理？はい。
うれしいわ。なつも　イッキュウさんも喜ぶわ。
柴田さんも　いつか是非　お店にいらして下さい。
千遥ちゃん　本当に　よかった…。
ご心配をおかけして　すみませんでした。
じいちゃんも喜んでたわ。
（坂場）これが　レイが父さんに夢を語るシーンの絵コンテです。
場所は　ソラとレイが風の丘と呼んでいる丘でそこで　星を見ながら語るようにしたいんです。
星を見ながらね…。
それは　何時ごろ？何時？
眠る前？　それとも　朝の搾乳をする前？
う～ん…。
＜新天地を求めて　旅をするソラの家族はその途中で川に流されていた　レイを助けました＞
＜いつしか　ソラとレイは本当の家族のように育っていきました。やがて　レイは　馬の死をきっかけに獣医になりたいという夢を抱くようになりました。レイは　その夢を　かなえるために遠くの街へ旅立つことを父さんに告げるのでした＞
＜レイが　父さんに夢を語るシーンか…＞
♪～
イッキュウさん。うん？
この絵コンテだけど星を見ながら話すのはいいけどやっぱり　最後は夜明けにしない？夜明け？
そう。話し終えた２人に　朝日が昇ってくるの。
牛飼いの生活は　太陽と共にあるでしょ。
その始まりを示す朝日の中でなら父さんと　レイの別れる決心ももっと　希望に満ちたものになると思う。
私も　朝日に励まされたことがあったから。
♪～
（神地）開拓者を励ます朝日か…いいと思う！
それなら　もっと風の丘であることも生かせるな。
風と光で　夜明けのにおいを出そう。
ちょっと　変えるなら　すぐに動いてよ。もう時間ないんだから。
分かりました。　陽平さん！モモッチ！
どうしたの？
このシーンなんですが最後は　夜明けにしたいんです。
夜明け？　なるほど…。
僕も　昔は天陽たちと一緒に開墾してて十勝の夜明けは　何度も見てるよ。
風と光で　それを表現したいんです。
陽平さんの中にある夜明けを是非　描いて下さい。
分かった。　描いてみるよ。
私は？光が出れば　人物に影も出るだろ。
うん。夜明けらしい影の色を陽平さんと相談して勉強しといた方がいいよ。なるほど。　ありがとう　神っち。
モモッチには　才能があるんだから。
神っちに　そんなこと言われるとうれしい。
（茜）忙しいのに　何か　いい感じね。
あ～　これで　あと何枚　増えることやら。
ただいま。
ただいま…。
これ　千遥ちゃんが持ってきてくれたの。
えっ　千遥が来たの？うん。
わざわざ　入学のお祝いにって持ってきてくれたわ。
おいしそう。本当に　おいしかったわ。
食べるかい？うん。　うれしい…。
これから仕事するから　その前に。
体　壊すよ。というより　壊さない方が不思議だわ。
ハハ…　じいちゃんにも届けたいしょ。えっ？
じいちゃんも見てくれてるんでしょ？
したら　じいちゃんに少しでも元気になってもらいたいのさ。
なつ…。うん？
心配してるんだね。
じいちゃんだけでなくじいちゃんのような開拓者の人に恥ずかしくないものを見せたいんだわ。
私にできる恩返しは　それだけだから…。
頂きます。
ん～！
♪～
なつたちはロケハンで出会った　十勝の人々や風景を思い出しながら開拓者の物語を描いてゆきました。
♪～
　回想　じいちゃんが　一人で北海道に来て開拓したみたいに…。私も　挑戦したい。
（泰樹）よく言った。
それでこそ　わしの孫じゃ！
行ってこい。
東京を耕してこい！
開拓してこい！
♪～
そして　そのシーンが放送される日を迎えました。
♪「育ててくれる」
♪「昨日の涙と　明日の笑顔は」
♪「きっと友達」
♪「ラララ　ラララ」
♪「ラララ　ラララ」
♪～
（テレビ・レイ）「父さん　僕は　牛や馬を助けたい。命を救いたい。そのために　勉強したいんだ」。
そのためには遠くの街に行かなくちゃいけない。
父さんの牧場を　一緒にやりたいけどごめん…僕は　どうしても　獣医になりたいんだ。
行きたいんだ。
（父さん）レイ…あの　ひときわ輝いている星を見ろ。あれは　明けの明星だ。この辺りでは　古くから朝の口にいる神と呼ばれている。
（レイ）朝の神様…？
お前は　今　あの神様に誓ったんだ。
よく言った。　それでこそ　私の息子だ。
父さん…。
行ってこい　レイ…。お前がいなくとも俺が　この牧場を守る。お前の分まで守ってみせる。だから　行ってこい。お前は　お前の夢を守れ。
父さん！
（泣き声）
（風の音）
♪～
なつよ　どうやら風は　ここまで吹いたようだ。