三菱商事は20日、シンガポールの子会社で、社内規定に違反したデリバティブ(金融派生商品)取引により約340億円の損失が発生する見込みだと発表した。中国籍の30代男性社員が不正な取引を繰り返し、損失を拡大させたことが原因という。(出所:共同通信)
まずこのニュースを見て最初に思ったのが、「また中国人のローカルスタッフか・・・苦笑」
日本郵船や大和ハウス工業の海外子会社でもありましたよね。中国人ローカルスタッフによる使い込み・不正。
私も海外駐在経験がありまして、香港と上海で働いたことがあります。研修ではまさに件のシンガポールにも行きました。
その経験から述べますと、これ本当に難しいというか厄介なんですよね。なぜ厄介なのか以下述べます。
三菱商事の海外子会社による不正取引に中国籍ローカルスタッフが関わっていることについて
中国人にとって日本企業に入社する理由の1つとは
中国人にとって少し前までは日系企業を含めた外資企業というのは、中国国有企業より給与が高かったんです。
ですから、それはやはり彼らのインセンティブ・モチベーションの1つになってきたわけですが、もはや今や国有企業と日系企業の給与差はほぼないどころか、中国の国有企業の方が給与が高かったりします。
現に今では外資企業から中国国有企業への転職は珍しくなくなりました。
ではそのような現況下、なぜ中国人が日系企業の採用に応じるかと言えば、これは実際に私がローカルスタッフにも聞いてみた結果ですが、
①単にそこしか内定がなかった
②日系企業は解雇しないから楽できる
③日本語・日本に興味がある
特に②ですね。「日系企業は解雇しないからギリギリのとこまで楽できる、サボれる、あくどいことができる」と考えて日本企業に入る中国人が一定数います。
(日本においても、やはり解雇規制的な考えは高度成長期には適しても今は適さないのでは)
これ本当に実情はそうで、もちろん「日本が好き」、「日本語を学んでいたから」という好意的な理由で選んでくれる人もいます。
しかし、②の理由で日系企業を選ぶ人は一定数存在します。それは以下値踏みとなっても表れます。
ローカルスタッフによる値踏み
基本的にローカルスタッフは、日本人の上司に対して「この人はどこまで許容するのか」という値踏みを非常に高い確率で行います。
「ここまでやると怒るのか、ふむふむ、ここまでなら怒らないな、ではここまでやってやろう・・」
という形で、まずは相手がどのような感じか非常に入念に探る傾向があります。これ中国に一定程度理解がある上司なら良いんですけど、単にお人よしな日本人が来たりすると結構厄介です。
彼らにはロイヤリティなどさらさらないわけですが、そこを勘違いしていたり、そういった相手の値踏みや敏さを知らずに来た日本人上司はついついローカルスタッフに対して「寛容になるべきでない領域まで寛容になりがち」で、そうするともうローカルスタッフはやりたい放題になります。
そもそも上司が会議や出張でいなければ、1時間や2時間の離席は当たり前ですし、なんやかんや理由をつけてローカルスタッフで結束して、仕事を日本人に全力で振ろうとしてきたりします。
彼らには彼らだけのWechatのグループチャットがあって、そこで日本人駐在員の給与や家賃など情報交換していて、経理部からもう筒抜けだったりと彼らなりのコミュニティが既に形成されています。(上海は特に仲間意識が強く、その傾向が強いでしょう)
一般的にはそのようなコミュニティに日本人駐在員が完全に入り込むのはやや困難です。
ローカライゼーションとは言うけれど、、一歩間違えると
さて、このような状況下、「ローカライゼーション」というキーワードがありますよね。
ローカライゼーションとは、「現地化」を意味するものであり、これが行き着くところは現地法人のCEOが日本人ではなく、ローカルの人が就任することですね。
もちろん、これはローカルスタッフのモチベーションを上げる一助になり得ますし、最終的に企業というのはその土地に合ったビジネスをするという意味で、ローカライゼーションが必要でしょう。
しかし中国の場合はこれが難しいと感じます。
なぜなら、良識を持ったCEOなら良いですが、中国人のCEOになった途端、もうやりたい放題になった実例があるからです。
- 社員旅行は海外に行って豪遊する
- CEOの縁故採用はやりまくる
- CEOが社員を愛人化する
- リベートをもらって契約を私物化する
もう無茶苦茶です。
もうこうなると今回の三菱商事のように、日本人社員が気づいても、「時すでに遅し」で、やりたい放題された後始末を日本人がやるだけというとんでもなく不都合な真実が残るだけです。
現地の司法は当てにならない
シンガポールで起きた本件とはやや離れますが、中国で事業をするケースにおいて、更に厄介なことがあります。それは司法の場では事実上、外国企業は著しく不利な立場に立たされる点です。
中国企業との契約では、Arbitration(仲裁)のClause(条項)で、仲裁適用地がロンドンや日本ならまだしも、それが中国となっている場合も多く、いくら日本企業の主張が正しかろうが、ほぼほぼ勝てません。
三権分立とか関係なく、司法の場では中国の国益にかなうよう処理されるのが通例です。ですから、たとえ日本企業の中国現地法人でお金の使い込みが発覚しようが、使い込んだ当人が当局とコネがあったりすると、裁判に訴えても勝算はほぼありません。
まとめ
以上色々と述べてきましたが、このニュースに関しては上述のような背景から、なかなか難しい問題と思います。
おそらくそのような実情やお国柄を知らない人や投資家からすると、「なんたることか、けしからん」となるのは当然と思いますし、不正はもちろんあってはならないことです。
しかし、日本人上司が全員そのようなお国柄や事情に通じているかと言われると、それもまた難しいでしょう。
ですから、「再発防止の策をきちんと立てるべき」という声が多くあがるでしょうが、いくら再発防止策を講じても、上述背景やお国柄が変わらない限りは、この手の事件は一定数存在し続けると私は思います。
その地でビジネスをするということは、母国語も解し、文化も解した上で、少なくとも数年滞在し、深い交流をして初めて裏事情を解するのであって、もしコロコロ配置換えのある人事制度ならば、その点において限界があるのも事実です。
尚、投資家的な目線で申し上げますと、今回のデリバティブ取引による損失は345億円ですから、当期予想純利益の5.75%であり、数字そのものの影響自体は軽微です。業績の下方修正はあっても、本件自体が減配に至らしめるほどの規模では現時点ではないでしょう。
芋づる式に他の不正が出てこない限りは、静観あるいは市場が過度な反応を見せれば買いで臨みたいところです。
Best wishes to everyone!
中国は良くも悪くも混沌としています。ただし今や日本人よりお金を持っている人が数多いることだけは確かです。
ニセコはもはやオーストラリア人・中国人など外国人だらけです。今後どう舵取りをしていくのか、象徴的な実験場にもなり得る場所です。
中国で留学してみようという方は、参考になると思います。