公明党が一貫して提案し、選挙公約にも掲げてきた「軽減税率」が消費税率10%への引き上げと同時に導入されます。飲食料品全般(酒類・外食除く)と定期購読の新聞(週2回以上発行)の税率が8%に軽減されます。
世界では当たり前の制度
軽減税率は世界で消費税(付加価値税)がある162カ国のうち125カ国で導入。特に、欧州では、EU加盟全28 カ国が導入しています。買い物のたびに負担軽減の実感が得られ、申請などの手続きがいらないといった利点があり、国際標準の制度として定着しています。
対象は飲食料品全般。低所得者の負担を緩和
公明党は、「社会保障のために消費税が上がるとしても、せめて飲食料品は……」との生活者の声を代弁し、軽減税率導入を粘り強く訴えてきました。
ただ、対象を生鮮食品に限定すれば、低所得者や高齢者がよく利用する加工食品は軽減されません。そこで、公明党は、日々の買い物での「痛税感」や低所得者ほど負担感が重くなる「逆進性」を確実に緩和できるよう、加工食品も対象に含めることを主張、飲食料品全般が対象となりました。「お年寄りたちの生活にも配慮した低所得者対策になっている」(結城康博・淑徳大学教授)と高く評価されています。
痛税感をやわらげ、消費を冷やさず
14年4月の消費税率8%への引き上げは、個人消費を想定以上に冷え込ませました。今回、生活に欠かせない飲食料品全般に軽減税率が適用されることで、買い物のたびに痛税感の緩和を実感でき、消費意欲の冷え込みによる景気悪化を防ぐ効果が見込まれます。負担軽減額は、1世帯平均で年間1万3000円程度(民間試算)に上ります。
インボイス導入で校正な消費税制度に
軽減税率に対応する経理方式は、導入当初4年間の簡素な経理方式を経て、21年度から「インボイス(適格請求書)制度」となります。インボイスは、従来の請求書に事業者番号などが加わり、公正な納税に役立ちます。年間6000億円ともいわれる「益税」などの問題や、立場の強い取引先に対し消費税分を価格に転嫁しにくい問題など、消費税の導入以来続く課題を解決し、社会保障などの財源を増やすことにもつながります。
インボイス制度と簡素な経理方式はともに、公明党の主張で、現行の帳簿や請求書を基本とし、事業者の納税事務負担の増大を極力抑えた形となります。
-
全くの誤解です。低所得者対策として十分効果があります。低所得世帯ほど、家計に占める食費の割合が高い【グラフ参照】ので、負担軽減の恩恵が大きくなります。金額で見ると、消費額が多い高所得者ほど負担が軽減されるように映りますが、「軽減率」は低所得者ほど高くなります。
高所得者にも恩恵はいきますが、その分、個人消費や国内総生産を押し上げ、税率引き上げによる景気悪化を防ぐ効果があり、税収増にもつながります。
-
削りません。2012年6月の民主、自民、公明による3党合意に基づく社会保障と税の一体改革では、消費税率引き上げ分の1%相当は、待機児童解消や高齢者らの「地域包括ケアシステム」構築など医療、介護、年金、子育ての各分野の充実に充てることが決まっています。その財源を削ることはありません。
-
財源は16年度中に決定することにより、2017年4月の軽減税率導入に何ら支障を来すことはないので、「先送り」との批判は当たりません。自公両党は、16年度末までに「確実に安定的な財源を確保する」とハッキリと決めました。厳しい財政事情を踏まえ、「財政健全化目標を堅持」することも確認しました。
今後、1年かけて税制・財政全体の観点から、経済成長などにより歳入を増やし、ムダ削減などで歳出を抑える取り組みを検討し、責任を持って安定的な財源を確保します。
-
民主党などは、現金給付と所得税などの払い戻しを組み合わせる給付つき税額控除を主張していますが、17年4月からの「消費税10%」と同時に確実に導入できる低所得者対策は軽減税率しかありません。
給付つき税額控除は、理論上では、低所得者に的を絞った効率的な対策が可能ですが、「国民一人一人の所得と資産の正確な把握」が必要であり、それは困難です。所得を把握するために社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度が導入されましたが、定着するのは随分先の話です。しかも、買い物のたびに負担が軽減される軽減税率と違って、給付を受けるには申請が必要で、国民に大きな手間を強いることになります。
また、膨大な申請を受け付けて給付などを行う体制づくりは難しいのが現実です。このことは、民主党政権時代の国会審議で「国税当局だけでやるのは非常に難しい」(財務相)、「(地方自治体でやると)実務上いろいろ課題が当然出てくる」(総務相)と、民主党の閣僚自身が認めています(12年8月2日参院社会保障と税の一体改革特別委)。