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6 学習障害児等に対する指導の展開に当たっての配慮事項

(1) 学習障害についての正しい理解・認識の推進

 学習障害児等の示す学習上のつまずきや困難、行動上の問題は、本人の努力不足に
よるものとされたりするなど、周囲の人々にはなかなか理解されにくいものである。
したがって、学習障害児等に対する適切な指導を展開していくためには、関係者の学
習障害に関する正しい理解・認識の推進を図っていくことが大切である。

 学習障害は、我が国では比較的新しい概念であり、学習障害児等の大半は、現在、
小・中学校の通常の学級において指導を受けていると言われている。こうしたことか
ら、特に、小・中学校の教育等を対象とした啓発資料の作成・配布や講習会の開催な
どを通じて、学習障害についての正しい理解・認識の推進を図っていくことが重要で
ある。

(2) 教職員の共通理解

 学習障害児等に対する指導に当たっては、学校生活全般にわたる個別の援助や配慮
が不可欠である。学習障害児等の障害の状態は、周囲の児童生徒には理解が難しいこ
ともあって、学習障害児等の一部には、いじめの対象となり、また、登校拒否の状態
に陥っている者もみられることが指摘されている。したがって、学級担任だけの対応
ではなく、全校の教職員が個別の配慮や援助の重要性を認識し、共通理解の下に、学
級担任との連携を密に図りながら、対応していくことが大切である。特に、中学校段
階では、教科担任による指導が多くなることから、きめ細かな援助や配慮がなされる
ように十分工夫する必要がある。

 なお、学校生活において、児童生徒は様々な教職員とかかわっているが、学習障害
児等が抱えている問題点は一人一人異なっている。こうしたことから、個々の児童生
徒に対して、一貫した指導がなされるように、その児童生徒の指導目標や対応上の留
意点について、個人情報の取扱いにも留意しつつ、全教職員の共通理解を図っておく
ことも必要である。

(3) 学習障害についての理解を図る指導の展開

 学習障害児等の示す学習上のつまずきや困難、行動上の問題は、友達には理解され
にくく、そのために、仲間はずれにされたりしがちである。また、学習障害児等に対
して個別の援助や配慮を行ったりすることについても、特別扱いをしているのではな
いかという誤解を受けやすいものである。

 したがって、学級の児童生徒に対して、学習障害についての正しい理解を図る指導
を適切に行い、必要に応じて、学習障害児等が友達の援助や協力が得られるようにす
ることが大切である。

(4) 教員の資質の向上

 学習障害児等に対する指導が適切に行われ、その効果をあげるためには、何よりも
担当教員の資質の向上が重要である。

 学習障害児等の大半は、小・中学校の通常の学級において指導を受けていると言わ
れていることから、まず、小・中学校の通常の学級の担任に対して、学習障害につい
ての正しい理解・認識を図っていくことが重要である。その上で、現在、通級による
指導を担当している教員や特殊学級を担当している教員をも含めて、学習障害児等に
対する指導内容・方法等に関する知識・技能等を身に付けるようにし、学習障害に関
する専門性と個別指導の力量を養うため、国、都道府県、市町村の各段階における研
修の充実を図ることが必要である。

(5) 専門家との連携協力

 学習障害児等の指導は、学習障害に関する専門的な知識・技能をもつ専門家との連
携協力を図りながら進めていくことが大切である。

 また、学習障害児等の指導に当たっては、学習障害に関する専門的な知識・技能を
もつ特殊教育センターや教育相談所等の職員、盲・聾・養護学校や小・中学校の特殊
学級等の教員と密接な連携協力を図りながら、より適切な指導が行われるようにする
ことが重要である。

 特に、学習障害児等の中で行動上の問題や情緒的な問題を示す者の中には、投薬等
の治療を受けることによってこれらの問題を改善することができる場合もあるので、
その有効性を確認するためにも、保護者に専門の医師の受診を勧めることも必要であ
る。

(6) 保護者の理解と協力

 学習障害児等に対する指導を適切に行うためには、保護者の理解と協力が不可欠で
ある。このため、学校における指導方針や指導計画の内容を保護者に説明するととも
に、家庭における具体的な対応の仕方を伝えて協力を求めることが必要である。

 また、家庭との連絡を密に行うようにし、学校での児童生徒の成長・発達の様子を
具体的に知らせるとともに、保護者の小さな疑問に対しても丁寧に答えていくことが
大切である。なお、保護者との関係においては、保護者の心情を理解して慎重に対応
することが重要となる。

(7) 早期からの対応

 学習障害児等に対して効果的な指導を行うためには、可能な限り早期から対応して
いくことが重要である。このためには、対象となる幼児児童生徒を早期に発見すると
ともに、本人及び保護者の理解を得ながら、適切な指導を行うことができるような体
制を整備していくことが必要である。こうしたことから、教育相談体制や就学指導体
制を整備するとともに、関係諸機関と密接な連携協力を図ることができるようにする
ことが大切である。

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