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通級学級に関する調査研究協力者会議

「通級による指導に関する充実方策について
(審議のまとめ)」要旨(1992.3.30)



                                  平成4年3月30日

                               文部省初等中等教育局特殊教育課

1.検討の経緯

 近年、各教科等の指導の大半は通常の学級で受けつつ、心身の障害の状態などに応じ
た特別の指導は特殊学級等で受けるという形態での教育が行われる例が見られ、障害の
種類・程度によっては、一般的な教育の形態になりつつある。これが「通級」である。
通級については、臨時教育審議会及び教育課程審議会の答申においても、その充実につ
いて指摘されている。

 このため、文部省では、平成2年6月に通級学級に関する調査研究協力者会議を設け、
研究指定校の協力を得ながら、その充実方策に関して検討を行ってきた。また、いわゆ
る学習障害児の問題についても、この中で併せて検討を行った。

  同会議では、平成3年7月17日に中間まとめをとりまとめた後も検討を続け、計14回
の会議を開催し、このほど、最終的な報告をとりまとめた(3月30日を予定)。

2.調査研究協力者(14名)

【座長】 山口  薫(明治学院大学教授)
         大石 益男(国立特殊教育総合研究所研究室長)
         太田 昌孝(東京大学講師)
     香川 邦生(筑波大学助教諭)
     清水  包(熊本市立出水小学校長)
         露崎 謙治(横浜市立神奈川小学校教諭)
         手塚 保夫(東京都教育委員会指導部心身障害教育指導課長)(平成2年度)
         大南 英明(東京都教育委員会指導部心身障害教育指導課長)(平成3年度)
         中野 善達(筑波大学教授)
         野島 洋子(習志野市立袖ヶ浦東小学校教諭)
         野村 東助(東京学芸大学教授)
         邉見  弘(渋谷区立富谷小学校長)
         山田 信子(三鷹市立第五中学校長)
         山田 政利(世田谷区立尾山台小学校教諭)
         渡邉  研(筑波技術短期大学教授)

3.調査研究協力校(10校)

 (言語障害特殊学級)
   岩国市立麻里布小学校
   習志野市立袖ヶ浦東小学校
   金沢市立此花町小学校
   佐賀市立成章中学校

 (難聴特殊学級)
   丸亀市立城北小学校
   江戸川区立中小岩小学校
   熊本市立藤園中学校

 (情緒障害特殊学級)
   神戸市立垂水小学校
   世田谷区立尾山台小学校

 (弱視特殊学級)
   横浜市立神奈川小学校

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  通級学級に関する調査研究協力者会議
「通級による指導に関する充実方策について(審議のまとめ)」要旨


I  通級の現状

○ 昭和63年10月1日現在、全国の公立小・中学校の特殊学級の在籍児童生徒は 85,376
    人。このほか、特殊学級に籍はないが指導を受けている者が12,793人(うち、当該
    学校以外の学校の在籍者が7,536人)。

○ 通級による指導を受けている者の割合は、言語障害、難聴、弱視、情緒障害の特殊
    学級において高い。

II 通級の概念想定

○ 「通級」の概念としては、「各教科等の指導は主として通常の学級で受けながら、
    心身の障害の状態等に応じた特別な指導を特殊学級等で受けること」としてとらえ
    るのが適当。

○ さらに、通級の担当教員が対象となる児童生徒がいる学校に行って必要な指導を行
    う場合等についても、通級の一形態として考えるのが適当。

III 通級による指導が適切な児童生徒の心身の障害の種類・程度及び指導の内容・方法

○ 通級による指導が適切とされるのは、通常の学級において学習するのが適切である
    が、一部障害に応じた特別な指導を行うことが必要な者。

○ 障害の種類としては、言語障害、難聴、弱視、情緒障害のほか、肢体不自由、病弱
    身体虚弱の一部が考えられる。精神薄弱については、原則として、主として特殊学
    級における指導を行うこと(いわゆる固定式)が適切。

○ 指導内容としては、心身の障害の状態を改善・克服することを目的とする指導を中
    心とし、教科の指導を補充的に行うこともある。
   指導方法としては、個別指導を中心とし、必要に応じ、グループ指導を組み合わせ
    ることが適当。

○ 通級による指導時間については、個々の児童生徒の障害の状態や指導内容・方法等
    により適切に定めることが必要。

IV 通級による指導の教育課程上の位置付け等

○ 通級による指導の教育課程上の位置付けを明確にすることが必要。

○ 指導要録においても、通級による指導の記録を適切に記載することが必要。また、
    指導要録とは別に、通級による指導の記録を作成・保管することが必要。

V  通級による指導の充実のための条件整備

○ 現行制度上、特殊学級に在籍する児童生徒がいない場合には、通級による指導が必
    要な児童生徒がいても必要な指導ができないことなどの問題を解消するため、実態
    に即して通級による指導が円滑に行われるような教員定数上の措置を講ずることが
    必要。

○ 通級による指導を適切に行うため、市町村や校内の就学指導委員会の充実、通級の
    担当教員の専門性と個別指導の力量を養うための研修の充実が必要。

VI 在籍学級・学校等との連携の在り方

○ 担当教員と在籍学級の担任や保護者等との間での定期的な情報交換による児童生徒
    の状態等についての把握、通常の学級の担任等に対する助言などが特に必要。

○ 各学校では、校長が中心となり、一般教員の理解を深めるなど、校内の協力体制の
    整備が必要。

VII 学習障害児に対する対応

1 いわゆる学習障害について

○ 学習障害( Learning disabilities -LD- )については、種々の定義が存在。ア
    メリカにおいては特殊教育の対象として取り上げられているが、その定義、診断基
    準については必ずしも統一されておらず、学校現場での対象児の特定にはかなり混
    乱がある状況。

○ 我が国では、学習障害については、全体的な認知能力に比べ特定の能力の発達が著
    しく遅れていることを特徴とし、該当児童生徒が存在するという点などでは関係者
    の間にほぼ理解の一致が見られるが、学習障害の判定基準や診断方法については見
    解が分かれている状況。

○ 学習障害の判定については、表面上の諸現象だけでなく、種々の検査、観察を行い、
    専門家により総合的かつ慎重に行うことが必要。

2 学習障害に対する対応

○ 学習障害については、今後更に、医学を含め、心理学、教育学の各方面から、指導
    内容・方法、判定基準、類型化などについて基礎的な研究を積極的に行うことが必
    要。

○ 一方、学習障害児の一部については、言語障害、情緒障害特殊学級などに通級して
    いる実態があり、これが適切なばあいにはこうした指導の一層の充実が必要。

3 学習上困難を示す児童生徒に対する対応

○ 学習障害については、引き続き研究を行うことが必要であるが、学習障害児の周辺
    には、境界線児(知的にやや遅れはあるが精神薄弱ではない児童生徒)を含め、指
    導上特別な援助を必要としている児童生徒が存在。

○ 当面、通常の学級における指導上の配慮・工夫の中だけでは対応するのに限界があ
    る児童生徒を対象として、試行的に特別の指導の場を設けるなど、実践的な研究を
    行うことが必要。

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