(1)原子炉施設等の安全確保
原子炉施設においては、放射性物質の異常な放出による周辺公衆への影響を防止することが安全確保の基本です。この基本に従って、平常時の放出放射性物質の低減、多重防護による事故の防止対策、適切な立地条件の確保などの考え方に基づいて安全の確保が図られています。さらに、これらの安全対策が確実に講じられているかどうか、設計、建設、運転の各段階において国による厳しい規制が行われています。
また、万が一、原子力発電所等において事故が発生し、その影響が周辺に及び、または及ぶおそれがある場合に備え、災害対策基本法に基づき、国、公共機関、地方公共団体及び事業者が防災計画を定めるなど所要の措置を講じています。①原子炉施設の安全確保
原子炉施設については、従来から「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)」に基づき、原子炉施設の所管大臣(実用発電用原子炉は通商産業大臣、実用舶用原子炉は運輸大臣、試験研究の用に供する原子炉及び研究開発段階にある原子炉は内閣総理大臣)が厳重な安全規制を行うなど、安全の確保に万全を期してきている。
原子炉施設の設置(変更)許可については、原子力委員会及び原子力安全委員会が、原子炉施設の所管大臣の諮問に基づき、各所管行政庁の行った審査の結果について審査指針等に照らし、それぞれ独自の立場から調査審議(いわゆるダブルチェック)を行っている。
最近では、日本原子力研究所東海研究所(JRR-3)の原子炉本体の構造及び設備の変更等についての答申(1997年12月5日)などが行われている。②運転管理
原子炉施設の運転及び管理については、保安規定の認可、運転計画の届出等が法令に定められており、安全性を確認しながら行われることとなっているほか、毎年1回、定期検査が義務付けられている。
また、原子炉施設の運転に関して保安の監督を行うため、原子炉主任技術者の選任が義務付けられているほか、原子力発電所には国から運転管理専門官が派遣され、運転管理の監督がなされている。さらに、運転に関する主要な情報については定期的に報告されるとともに、事故、故障等のトラブルについては、安全協定等に基づき直ちに国及び地元自治体に通報されることとなっている。③防災対策
原子力発電所等周辺の防災対策については、災害対策基本法に基づき、国、公共機関、地方公共団体及び事業者が防災計画を定めるなど所要の措置を講じている。
具体的には、関係道府県が行う緊急時連絡網の整備、防災活動資機材の整備などに対し助成を行っている。また、緊急時に大気中に放出された放射性物質の拡散や一般公衆の被ばく線量を迅速に計算予測できる緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI*ネットワークシステムの整備・運用を図るなどの措置を講じている。
1997年6月、中央防災会議において、原子力事故災害を含めた各種の事故災害対策をより実践的なものとするための防災基本計画の修正を行ったほか、原子力安全委員会においても原子力防災対策の実効性を高めるための検討を行っているところであり、国は原子力防災対策のより一層の充実強化に努めていくこととしている。
*SPEEDI:System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information
図2-4-1 防災対策の仕組み図
図2-4-2 SPEEDI計算図形表示例 ④核燃料施設等の安全確保
製錬施設、加工施設及び再処理施設並びにその他の核燃料物質または核原料物質の使用のための施設から成る核燃料施設等に関しては、原子炉等規制法に基づき、製錬施設については内閣総理大臣と通商産業大臣が共同で、その他のものは内閣総理大臣が一貫して規制を行うとともに、使用施設以外は原子力委員会及び原子力安全委員会がダブルチェックを行っている。
最近では、三菱原子燃料(株)東海製作所において取扱うウランの最高濃縮度を変更すること等についての答申(1997年3月11日)、日本原燃(株)再処理事業所におけるウラン及びプルトニウムの精製設備を2段から1段に変更すること等についての答申(1997年7月15日)、原子燃料工業(株)東海製造所において9×9燃料製造のための変更についての答申(1998年3月24日)などが行われている。
原子炉等規制法の主な規制体系と規制形態別事業所数を表2-4-1に示す。
表2-4-1 原子炉等規制法による核燃料関連施設の規制体系と安全規制形態別事業所数
⑤廃棄施設の安全確保
原子力施設の付属施設としての廃棄施設、廃棄物埋設施設及び廃棄物管理施設から成る廃棄施設に関しては、原子炉等規制法に基づき、廃棄施設の所管大臣及び原子力委員会、原子力安全委員会のダブルチェックによって厳重な規制を行っている。⑥輸送の安全確保
事業所外における核燃料物質等の輸送の規制は、輸送方法、手段などに応じて原子炉等規制法、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(放射線障害防止法)、船舶安全法及び航空法に基づき行われており、一定レベル以上のものについては、輸送に際し、法令で定める技術上の基準に適合することについて行政庁の確認を受けるほか、陸上輸送に関しては都道府県公安委員会に、また海上輸送に関しては管区海上保安本部に届出をするなどの規制が行われている。また、事業所内の輸送については、原子力施設の規制の一環として原子炉等規制法に基づき規制が行われている。⑦放射性同位元素等の取扱いに係る安全確保
放射性同位元素などの取扱いに係る安全性の確保については、放射線障害防止法などに基づき許認可等の厳正な審査、立入検査、監督指導等所要の規制が行われている。
なお、1997年度末の放射線障害防止法の対象事業所数は表2-4-2のとおりである。
表2-4-2 放射線障害防止法の対象事業所数 区 分 事業所数 放射性同位元素等使用事業所 5,028〃 販売事業所 182〃 賃貸事業所 2〃 廃棄事業所 11合 計 5,223
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