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聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

10章 失った力と新たな力

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183 取り戻した力と新たな力

 ステータスで変わったところは、殆どなかった。

 ジョブが治癒士Ⅹから賢者Ⅰへと変わり、聖属性魔法に白い表記が戻ってきたぐらいの印象だ。

 精霊の加護も六精霊の加護へと変化しているが、能力値はレベルも上がっていないので、数ヶ月前とほぼ変わっていなかった。

 ただここ三ヶ月間、毎日のように剣を振り続けていたからか、剣術のレベルが一つ上がっていた。


 名前:ルシエル

 JOB :賢者Ⅰ 四属龍騎士フォースドラゴンナイト

 年齢:21

 LV :193

 HP :7310 MP:5300 

 STR :852 VIT:932 DEX:801 AGI:825

 INT :966 MGI:962 RMG:960 SP :86

【スキル】

 熟練度鑑定― 豪運― 覇運― 限界突破―

 体術Ⅵ 剣術Ⅵ 槍術Ⅳ 盾術Ⅳ 弓術Ⅰ 二槍剣流術Ⅳ 投擲Ⅵ 歩行術Ⅷ 


 魔力操作Ⅹ 魔力制御Ⅹ 魔力増幅Ⅲ 身体強化Ⅵ  

 詠唱省略Ⅸ 詠唱破棄Ⅶ 無詠唱Ⅳ 魔法陣詠唱Ⅴ 多重詠唱Ⅲ

 聖属性魔法Ⅹ


 瞑想Ⅸ 集中Ⅸ 統率Ⅲ 危険察知Ⅷ 気配察知Ⅴ 魔力察知Ⅴ 

 索敵Ⅰ 解体Ⅳ 馬術Ⅲ 

 生命力回復Ⅸ 魔力回復Ⅸ 並列思考Ⅶ 思考加速Ⅲ 空間把握Ⅱ

 罠感知Ⅳ 罠探知Ⅲ 罠解除Ⅲ 地図作成Ⅴ 


 生命力回復Ⅸ 魔力回復Ⅸ 


 HP上昇率増加Ⅸ MP上昇率増加Ⅸ 

 STR上昇率増加Ⅸ VIT上昇率増加Ⅸ DEX上昇率増加Ⅸ AGI上昇率増加Ⅸ

 INT上昇率増加Ⅸ MGI上昇率増加Ⅸ RMG上昇率増加Ⅸ 身体能力上昇率増加Ⅶ


 毒耐性Ⅸ 麻痺耐性Ⅸ 石化耐性Ⅸ 睡眠耐性Ⅸ 魅了耐性Ⅶ

 呪耐性Ⅸ 虚弱耐性Ⅸ 魔封耐性Ⅸ 病気耐性Ⅸ 打撃耐性Ⅶ

 幻惑耐性Ⅸ 精神耐性Ⅹ 斬撃耐性Ⅸ 刺突耐性Ⅶ 威圧耐性Ⅴ


【称号】

 運命を変えたもの 運命神の加護 聖治神の祝福 多龍の加護 六精霊の加護

 龍滅士 竜族殺し 巨人殺し 魔獣殺し 邪神を退けた者

 封印を解き放つもの 龍神に導かれるもの



 努力すれば、結果となってついてくることを思い出しながら、俺は念の為にヒールを発動させてみた。

 すると青白い光がボワッと手に宿って輝き出した。しかしそれは、記憶の中にあるヒールとはだいぶ様子が違った。


 魔力消費が減っているのに、その効力がミドルヒール並だったのだ。

「賢者……レベルⅠなのに、半端ないな」

 俺の顔は知らない人が見れば、きっと引くぐらいニンマリとしているだろうが、ナディアとリディアは一緒に喜んでくれた。

「ルシエル様、本当におめでとう御座います」

「良かったです。本当に良かったです」

 二人は笑いながら、泣いていた。

「これであのように身体を酷使する訓練をしなくてもよいのですね」

「……ルシエル様の考えた方は、少し固すぎます」

 二人の言葉の真意は、ジョブ治癒士が外れたことによる、生物としての本能が覚醒したことについてだった。


 雄は弱っている時ほど、子孫を残そうとするらしく、ネルダールに来てから悶々とする日が続いていたのだ。

 それを知ってか知らずか、扇情的に誘っているのではないか? そう思われるしぐさを二人がとる時があったのだが、鋼の意思でそれを跳ね除けた。

 これが何も問題ないときだったら、すっかり二人の虜になってしまっただろうが、今は非常時なのだ。

 そんな中で一度でも情欲に負ければ、あとは歯止めが利かなくなり、二人を性の捌け口として見ることになりそうで、怖かったということもある。

 だから性欲や邪念が入らないほど身体を酷使して、天使の枕で何とか二人の色香を避けてきたのだった。


「二人が魅力的だったから、煩悩に負けないようにするのが大変だったよ。それに師匠やライオネルのことを思えば、出来るだけ早く聖属性魔法を取り戻したかったこともあるからな」

 二人は魅力的と言われた時に、恥ずかしそうに笑い、師匠達の話をすると、何度も深く頷く。

「お二人のことを思えばこその努力だったのですね」

「ルシエル様……」

 妙に感心されているが、一番は聖属性魔法が俺の心の支えになんだが……折角感動しているのだし、全てを語らなくてもいいよな。

 直ぐにでも魔通玉を使って、教皇様に聖属性魔法が復活したことを伝えたいところだが、ネルダールに訪れてから数日後、教皇様から盗聴の恐れがあるとの事で魔術ギルドから魔通玉で連絡をしてこないようにと厳命されたので、どうしても連絡をとることに躊躇してしまう。


 師匠が持っている魔通玉は、範囲が短くて届かない。

 そこでドランやポーラを思い出し、ライオネル達と合流しているだろうと考え、連絡を入れてみるが、反応を示す様子はなかった。

「……きっと魔法袋の中だな」

 下界の様子がやはり気になるので、後ほど風の精霊に下界の様子を聞いてみることにした。


「ルシエル様、今後の方針は如何致しますか?」

「龍の解放後、直ぐに地上へ戻られるのですか?」

「実際に龍と会ってみないと何とも言えないな。どうしてだ?」

「折角空中都市へ来たのに、一度も魔術士ギルドから出ていないではないですか? 実は町並みがずっと気になっていたのです」

 少し恥ずかしそうにリディアがそう言ってきた。

 思い返せば確かに魔術士ギルドから一歩も出たことはなかったのだ。

 空中に浮かぶネルダールを一切感じることもなく、日々訓練をして泥のよう寝る日々だった。

「確かにこちらへ来てから一度も、魔術士ギルドの外へ出たことはなかったな。遠慮せずにもっと早く言ってくれれば良かったのに……今日この後、オルフォードさんと会ったら聞いてみるよ」

 すると二人は嬉しそうに笑いあうのだった。

 きっと二人は色々と我慢していたのだろうが、そんなことは一切考えてもいなかった。

 どうやら相当視野が狭くなっていたのだろう。

 人に優しく、自分に厳しく、そうなろうと心掛けようと思った。


 準備を整えた俺達は、風の精霊との待ち合わせの前に、修練場へとやって来ていた。

「ルシエル様、賢者になられたのですから、きっと他属性の魔法も使用出来る筈です」

「六精霊から加護を得ているのですから、きっと精霊達も力を貸してくれる筈です」

 二人の応援はありがたいが、きっと魔法は放てないだろう。

 それでも何とかなると信じて、龍の首飾りを首に掛けてから、幻想杖に魔力を注いでいき叫ぶ。

「炎龍 発動……?」

 何かが飛び出すことは一切なく、魔力が抜ける気配も全くなかった。

 そこへ静けさが押し寄せてくる。

 ナディアとリディアからは、生暖かい目で見られている気がした。

 俺は静かに幻想剣へ変え、いつもと同じように斬撃を飛ばす姿勢へ構えをとった。

 魔力が幻想剣へ流れきて、今度こそ外へと飛んでいくように願い、俺は思いっきり幻想剣を振り切りながら叫ぶ。

「炎龍剣!!」

 次の瞬間、まるで邪神と戦った際に使用した、聖域円環や聖域結界を無詠唱による多重発動したかのように、激しく魔力が身体の外へと一気に抜けていった。

 しかし驚いたのは消費魔力ではなく、炎龍剣の威力だった。


 斬撃ではなく、小さな緋色の蛇が幻想剣から放たれると、修練場の壁まで一瞬で到達し、噛み付くように当たると修練場がその威力で揺れた。

 ドゴォオオオオオン

 その凄まじい威力と爆発音で、驚きのあまり心臓が止まるかと思った。

 修練場の壁は迷宮仕様の為、直ぐに回復するとは思うが、直径三十センチの穴が三メートル近くまで陥没し、炎は消えることなく燃えていた。


「……飛ぶ斬撃? それとも飛ぶ龍なのか?」

 あきらかに消耗した魔力を確認すると、今の一撃で魔力を一千も消費していた。

 五発放ったら、打ち止めになる完全な奥の手になるだろう。

 自分で起こした事象に少しビビリながら、二人に感想を聞いてみようと振り返ると、未だに燃えている壁を凝視しながら固まっていた。


「魔力の消費が半端じゃないから、そう何度も使えないと思うが、感想があれば聞かせてほしい?」

「ルシエル様、一体? どういった魔法なのですか? 龍の波動が混ざっている気がしたのですが?」

「炎蛇が飛んでいくなんて初めてみました。それに凄い威力です!!」

 今まで魔法を発動出来なかった仲間がいきなり発動して焦るナディアに、ただただその威力を称賛するリディア。

 概ね二人からみた炎龍剣は、中々の評価なのだろう。

「ナディア、これは精霊の加護と龍の加護があって始めて使えるものらしい。だから多分俺にしか使用は出来ない」

「……そうですか。ルシエル様、素晴らしい攻撃魔法だと思いますよ」

 俺を称賛しながらも、その笑顔には少しだけ陰りが見えた気がした。

 だから昨夜、風の精霊と話して得た情報を、ナディアに伝えてあげることにした。

「龍の加護を持つものは、身体能力が向上するけど、魔法自体は使い難くなるらしい。たぶんだが、色々な属性の魔法にトライしないで、一つ決めたものを何度も詠唱してみたらどうだ?」

「一つの魔法ですか……それなら雷属性を重点的にしていきたいと思います」

 ナディアは落ち込んだところは見せないように笑うが、それが逆に痛々しかった。


 およそ三ヶ月を過ごし、普通なら千回も詠唱すれば覚えるはずなのに、リディアは覚えなかった。

 ジョブが剣士であることや、称号に龍の巫女があることが原因で、本来得られる熟練度が低いのだろうか? 

「ナディア、魔力操作や魔力制御のスキルはちゃんととっているか?」

「いえ、誰でも頑張れば覚えると本に載っていたので、取得していません」

 俺の教本と著者が一緒ではないらしい。

 ナディアにそれを伝えても意味がないので、建設的に話をしてみると、意外な事実が判明した。


 どうやら自分の魔力すら、曖昧に感知しているだけらしく、魔力を動かすということも、はっきりとわかっていないようだ。

 更にリディアも実は今まで精霊魔法を使用していたのだが、緻密な魔力制御は精霊がしてくれていたらしく、ネルダールに来たときはナディアと大差なかったらしい。


「ナディア、SPが余っていて、SPで取得するものがないのなら、魔力制御を覚えた方が良いぞ、

「分かりました」

 ナディアはこうして魔力制御を取得した。

 そして魔力制御のコツを教えたところで、修練場から噴水へと移動を開始したのだった。

 修練場を出る際には、炎龍剣の火は消えていた。

 しかし壁に空いた穴は塞がる事がなかったので、内心壊してしまったのでは? そう思いながら、弁償にならないように願うのだった。


お読みいただきありがとうございます。

水龍と風龍の登場させるはずが、必殺剣の名前を考えていて時間切れになってしまいました。


i349488
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