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【社説】

ラグビーW杯 ノーサイド堪能しよう

 ラグビーのワールドカップ(W杯)が開幕し、日本は初戦でロシアを破った。アジアでは初の開催である。民族の枠を超えて集う選手たちの熱い戦いと、試合後のノーサイド精神を堪能したい。

 ラグビーW杯の代表選考は国籍に縛られない。日本代表のメンバーにもニュージーランドやトンガ、韓国などさまざまな国から来た選手が入っている。

 それぞれの事情で来日し日本代表を選択した選手と、日本で生まれ育った選手らが融合。悲願のベスト8入りを目指す。

 ラグビーの試合が終了することを日本ではノーサイドと表現する。ノーサイドには激しくぶつかり合った試合が終わった後、お互いの健闘をたたえ合うとの意味が込められている。

 実はこの言葉は海外であまり使われていない。日本人のラグビー関係者やファンがその意味に共感し、使い続けた言葉でもある。

 もちろん海外の選手たちにもノーサイド精神は深く浸透している。試合が終わった後、選手たちが握手を求める姿や笑顔を見てほしい。勝敗にかかわらず、相手チームや審判団に尊敬と感謝の意を示す選手たちの、誇り高き姿が確認できるはずだ。

 優勝候補筆頭のニュージーランド代表が試合前に行うハカにも注目してほしい。マオリ民族の伝統舞踊だ。自らを鼓舞し、戦う相手と先住民族への畏敬の念を込め、選手は鬨(とき)の声を上げながら舞う。

 アパルトヘイト(人種隔離)を乗り越え一九九五年の自国開催で初登場した南アフリカ代表には、今回初の黒人キャプテンが誕生した。日本代表のキャプテンでニュージーランド出身のリーチ選手は、日本国籍を取得している。

 違う国、別々の文化で育った選手たちは、自ら選んだジャージーを着て戦う。そこには偏狭な民族意識は存在しない。共に戦う仲間と相手への敬意が常に息づいているからだろう。

 もちろん課題もある。今大会は、東京都調布市、横浜市、愛知県豊田市、埼玉県熊谷市、静岡県袋井市など十二都市で試合が行われる。大観衆の誘導や会場までのアクセスに問題はないか。海外からのファンへの配慮は足りているか。難しいルールの説明は分かりやすいか。

 大会は四十四日間と長丁場だ。不備があるなら直ちに修正すれば十分間に合う。選手たち同様大会を支えるボランティアを含むスタッフたちにも激励を送りたい。

 

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