第1部 少子化対策の現状(第2章 第2節)
第2章 少子化対策の取組(第2節)
第2節 一億総活躍社会の実現に向けた取組について【特集】
「一億総活躍社会」の実現に向けて
この30年ほどの間で我が国の合計特殊出生率は大幅に低下し、高齢化率は着実に上昇している。2008(平成20)年をピークに人口減少局面に入っており、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位推計によれば、2060(平成72)には約8,700万人となると推計されており、参考推計ではあるものの2100(平成112)年には5,000万人を下回る見込みとなっている。
2015(平成27)年10月7日に発足した第3次安倍改造内閣は、少子高齢化という構造的な課題に取り組み、若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、皆が包摂され活躍できる社会「一億総活躍社会」の実現に向けて取り組むこととし、「新・三本の矢」として、第一の矢「希望を生み出す強い経済」を「戦後最大のGDP600兆円」の実現という的に、第二の矢「夢を紡ぐ子育て支援」を「希望出生率1.8」の実現という的に、第三の矢「安心につながる社会保障」を「介護離職ゼロ」の実現という的に放つこととした。(第1-2-3図)
一億総活躍社会とは、「成長と分配の好循環」を生み出していく新たな経済社会システムの提案である。すなわち、全ての人が包摂される社会、一億総活躍社会が実現できれば、安心感が醸成され、将来の見通しが確かになり、消費の底上げ、投資の拡大にもつながる。さらに、一人ひとりの多様な能力が十分に発揮され、多様性が認められる社会を実現できれば、新たな着想によるイノベーションの創出を通じて、生産性が向上し、経済成長を加速することが期待される。アベノミクスの第二ステージにおいては、子育てや社会保障の基盤を強化し、そして、それが更に経済を強くするという「成長と分配の好循環」を構築していくことを目指している。(第1-2-4図)
一億総活躍担当大臣の任命と国民会議の開催
一億総活躍社会の実現に向けて、新たに一億総活躍担当大臣が任命され、内閣総理大臣を議長、一億総活躍担当大臣を議長代理とし、関係閣僚と有識者を構成員とする「一億総活躍国民会議」が開催されることとなった。
一億総活躍社会の実現に向けた取組は、一億総活躍国民会議において議論が行われるとともに、同会議の審議に現場の実情をできる限り反映させていくため、一億総活躍担当大臣と同会議有識者委員が様々な方々とのヒアリングを並行して実施することにより検討が進められた。
「希望出生率1.8」の実現
一億総活躍社会実現に向けた取組において、特に少子化対策との関連が深い取組は、「希望出生率1.8」に向けた取組である。「希望出生率1.8」とは、若い世代における、結婚、子供の数に関する希望がかなうとした場合に想定される出生率である。「希望出生率1.8」の実現に向けては、希望通りに結婚ができない状況や、希望通りの人数の子供を持てない状況を改善していくこととしている。(第1-2-5図)
一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策
2015(平成27)年11月26日、「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策-成長と分配の好循環の形成に向けて-」が一億総活躍国民会議において取りまとめられた。この緊急対策は、「『ニッポン一億総活躍プラン』の取りまとめに向けた基本的考え方の整理」及び「緊急に実施すべき対策」により構成されている。この「緊急に実施すべき対策」に基づき、2015年度補正予算及び2016(平成28)年度予算において必要な予算が盛り込まれた。(第1-2-6図、第1-2-7図)
また、2016年5月には、緊急対策において示された方向性を基に、「ニッポン一億総活躍プラン」を策定することとしている。(第1-2-8図)