倒産に瀕した企業を
補助金で支える愚かさ
新型レジを導入できないほど業績悪化しているような中小事業者は、遅かれ早かれ倒産してしまうだろう。そのような倒産カウントダウン中の零細企業を、補助金で支えて、手厚い保護政策でどうにか延命させたところで、果たしてそれは日本経済のためにもなるだろうか。そこで働く従業員はハッピーになるだろうか。
なるわけがない。それをわかっていただくには、先ほどの新潟のスーパーをイメージしていただければわかりやすい。
新型レジに設備投資もできず、金融機関への返済もできないくらいなので、25名の従業員の賃金が低いだろうことは容易に想像できる。最低賃金ギリギリ、いや最低賃金以下だったかもしれないし、下手すれば未払いもあったかもしれない。つまり、このスーパーが倒産しないで存続するということは、いつまでたっても25名が低賃金労働に縛られ続ける、ということでもあるのだ。
「それでも仕事があるだけマシだ」と難癖をつける人もいるが、今の日本は深刻な「人手不足」ではなかったのか。会社が倒産して失業する期間はあっても、仕事を探す気さえあれば、このスーパーよりはるかに賃金が高く、待遇のいい求人を見つけることはできる。実際、人材確保のために中小企業も緩やかながらも賃上げを余儀なくされている、というのは、日本商工会議所などの「中小企業三団体」も認めるところだ。
つまり、「レジ倒産」というのは、短期的には失業という悲劇を招くが、中長期的には、設備投資もできず、賃上げもできない零細企業でも文句ひとつ言わずに働く真面目な労働者たちを、労働市場へ流入させて、より良い環境で能力を発揮させることにつながるのだ。