手塚漫画「アポロの歌」は「火の鳥」なのだ。9 その9 視覚的な共通点①…タイトルロゴ 「アポロの歌」のタイトルロゴ(題名の字体)は、一般的な明朝体やゴシック体ではない。横線が縦線の倍以上の太さで、縦線は所々下にとがっている独特の字体で、黒フチどりの白文字(カラー時は、色文字)である。それは、とてもスタイリッシュな形状に見える。 大きさのバランスは、「アポロの歌」の両端の、最初の「ア」と最後の「歌」が大きく、「ポロ」はやや小さく、「の」は一番小さくなっている。 一方、「火の鳥」のタイトルロゴは、「アポロの歌」とは逆に縦線が横線の倍以上の太さで、所々とがった線がある独特の字体である。 大きさのバランスは、両端の「火」と「鳥」が大きく、中央の「の」は一番小さくなっている。 両者の文字数は違うが、両端の文字が大きく「の」は小さい、という点は共通している。 また、縦・横の線の太さは逆であるが、ところどころ鋭角的な線が含まれていることによって、両者の字体は非常に似て見えるのである。 さらに、「の」の文字に注目してみると、ほとんど同じ形なのである。 このことは、他に「の」が入っているタイトルロゴと比べてみると、明確に分かる。 「やけっぱちのマリア」「ガラスの城の記録」「あらしの妖精」「ピロンの秘密」「ぼくのそんごくう」「ユフラテの樹」「リボンの騎士」「海のトリトン」「鉄の旋律」「空気の底」「紙の砦」「地球の悪魔」「虹のプレリュード」「上を下へのジレッタ」「時計仕掛けのリンゴ」等々、画像が多くなるので掲示はしないが、これらのロゴは「アポロの歌」と「火の鳥」ほどは似ていない。 つまり両者は、見た目に、大げさに言えば大局観的に共通しているのである。 手塚治虫の両者に対する思い入れが、意図的なデザインの類似となって現われたのではないだろうか。 なお、タイトルロゴの作成をすべて手塚本人が手がけたかどうかは不明だが、仮にデザイナー等によるものであっても、最終的には手塚本人の許可や承諾が出ていると判断しての今回の意見である。 また、本によってはタイトルが普通の明朝体やゴシック体になっていて、連載時の味のあるタイトルロゴが使われていないものもあり、ロゴの実物を見たことのない方は、手塚治虫公式サイトの各作品ページのタイトル画像を参照されたい。 余談 ちなみに、横が太く縦が細い字体(縦が太く横が細い字体も)は、石森(石ノ森)章太郎が初期の頃からオノマトペ(擬音・擬態語)に多用していた。 トキワ荘時代に手塚治虫から影響を受けたのか、あるいは、元々好みの字体だったのか、当時の映画タイトル等からの影響なのか、詳細は分からない。(以下、次回) |
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