幼い頃から才能開花!? 母が“脚本家”の将来を確信した三谷幸喜からのプレゼント

  • 小学2年生の頃、三谷少年は自作の人形劇を母親へプレゼント
  • 主宰劇団の資金繰りのためバラエティーの放送作家をしたが…
  • 大人気劇団の突然の活動休止…そして“最も頼りになる俳優”の死

数々の高視聴率ドラマを生み出す脚本家・映画監督の三谷幸喜さん。

映画8作品のうち4作品が興行収入20億円を超え、特に映画『THE 有頂天ホテル』は60億円を突破している。

9月19日放送の「直撃!シンソウ坂上」(フジテレビ系)では、三谷さんの母親を取材し、彼がどのように育ってきたのかを直撃。他にも、旗揚げした劇団の歴史と劇団員との固い絆などが明かされた。

小学1年生の時の作文ですでに片鱗…

奇想天外なストーリーを生み出し、役者の個性を最大限に引き出す三谷さん。その能力とセンスはどのようにして身についたのか、三谷さんの母・直江さん(84)が語ってくれた。

1961年、東京生まれの三谷さん。一人っ子だったが、当時一緒に暮らしていたのは、母の直江さんと祖父母、年が離れたおじとおばの7人。交わされる会話はすべて大人の言葉だった。

そのため、公園で近所に住むおばさんに「こんにちは」と話し掛けられると、4歳にも関わらず「こんにちは、奥さん。よくお会いしますね」と、大人びたあいさつをするなど、周囲を驚かせていたという。

ただ、大人びていたのは言葉遣いだけではなかった。

当時の様子を直江さんはこう語った。

「幼稚園の時にマンガを読んでいましたけど、小学校に入った時に物語の本を買ったら、それにハマって。自分で書店に行って買ってきて読んでいましたね」

お小遣い制ではなく、お年玉で1年間やりくりしていた少年時代。お年玉のほとんどを本につぎ込み、部屋はミステリー小説で埋め尽くされていた。そんな読書好きだった三谷さんは、早くから直江さんも驚く文才を開花させた。

それは、三谷さんが小学校に入って初めての授業参観の日だった。教室の壁にはクラスメイトが書いた作文が張られていたが、他の児童が原稿用紙1枚程度のものだったのに対し、三谷さんだけはびっしり3枚分の文章を書いていたという。

直江さんによるとその内容は『僕のお父さんは会社の人を電話で怒っている。けど、自分がいたずらしても何をしても自分のことは絶対に怒らない。人として僕のお父さんはおかしいのではないか。人間はみんな同じなのにおかしいんじゃないか』というもの。直江さんは当時を振り返り「自分なりの言葉で書いていました。だから、この人は書くのは上手いんだと思いました」と語った。

自作の人形劇の完成度に母親は驚愕

さらに、直江さんが息子の将来を確信することになったある出来事があった。

それは小学2年生の頃、人形遊びに夢中だった三谷さんが、母の日にプレゼントした自作の人形劇だった。

母親の部屋に手作りのジオラマを一人で製作し、音楽を流して、ストーリーに合わせて人形を動かしていく。場面に合わせて照明を変えるなど、まるで舞台のような演出をほどしこていて、直江さんにとっても驚愕の人形劇だったという。

「こんな小さい子がここまでできるのかと感動しました。『ママのために作った』と言って、すぐに壊していたので、それを知っているのは私と息子だけ。この人は脚本家としての道に行くんだなと思って見ていました」

当時のことを三谷さんは「学校の授業で『ペルシャの市場にて』というクラシックを聴いて、すごく情景が浮かんだんです。で、その音楽にのせて一つお話を作ってプレゼントしてみようって。僕は父を早くに亡くしていた分、母との関係は密接だった。母は僕の作った物を全部見ている唯一の地球人なんです。子どもの頃から今まで全部見ている。一回もネガティブなことを言われたことがない、毎回褒める。それでここまで来た感じはあります」と振り返った。

三谷さんと直江さんにはこんなエピソードも。小学5年生の頃、三谷さんが憧れているという理由だけで、会える確証もないまま15日間も学校を休み、2人だけでスイスにあるチャップリンの自宅に向かったという。

番組MCの坂上忍が「チャップリンに会えたんですか?」と聞くと、三谷さんは「家には行ったんですけど、会えなかったんです。そこで、僕がチャップリンの絵を描いて秘書に渡して、『チャップリンさんに渡してください』と言って帰ってきたんですけど、数ヵ月経って絵が送り返されてきて、そこにサインがありました」というエピソードを明かし、坂上らは驚きの表情を浮かべる。

ところが子供だった三谷さんは「せっかくあげたのに、なんで送り返してきたんだろう」と、当時は納得のいかない思いだったという。

「僕は放送作家に向いていない」

それから、演劇の道を志し、日本大学藝術学部で脚本作りを学んだ三谷さんは、在学中にその後の人生を大きく変える劇団の旗揚げをする。それは自身が主宰を務める「東京サンシャインボーイズ」。

そのメンバーは西村まさ彦さん、梶原善さん、相島一之さんなど現在、映画やドラマの第一線で活躍する役者たち。

念願の劇団旗揚げを果たした三谷さんだが、始めた頃は全く客が入らず、劇団の経営はいつも大赤字。そこで三谷さんは資金繰りのため、バラエティー番組の放送作家をすることに。

ところが、その放送作家時代はとてもつらいものだった。企画会議では周りの話に乗り切れず、『サザエさん』という大きな仕事のチャンスもものにできなかった。

当時を振り返って三谷さんは「僕は放送作家に向いていない体質。『こんなクイズはどうでしょう』とかコーナーを考えて見せるんですけど、自分の中で面白いことを考えても、それを面白く伝えることができなかった」と話した。

完全に心が折れた三谷さんは、すべての番組を降板。これで劇団の資金繰りを改善するアテがなくなってしまったが、その直後、人生を変える一本の電話が掛かってくる。それは、深夜ドラマ『やっぱり猫が好き』の脚本依頼。三姉妹が暮らすマンションを舞台に、せりふなのかアドリブなのか分からない掛け合いの応酬を繰り広げるコメディーだ。

このドラマをきっかけに、三谷さんは脚本家として大ブレイク。これをきっかけに、自分の作品に劇団の仲間を出演させてもらうよう、プロデューサーに働きかけたという。

当時の心境を三谷さんは「僕だけが階段を上がっちゃいけないと思った。みんなで一緒にやっているから。だから、深夜のドラマからちょっとスペシャルドラマをやることになったら、必ずこの人たちを使ってくださいとお願いしていました」と明かした。

こうして劇団員たちは有名になっていき、劇団の人気もうなぎのぼり。評判が評判を呼び、劇場公演は毎回満員御礼となり、個性派の劇団員たちもますます売れていった。

一方、三谷さんもドラマの脚本家としてテレビの世界でヒットを連発。

三谷さんにとって初のゴールデンタイムの連続ドラマ『振り返れば奴がいる』(1993年)を皮切りに実績を重ねていった三谷さん。特にNHK大河ドラマ『新選組!』(2004年)は、既存の歴史小説を原作としないオリジナルの脚本で、大河ドラマでは異例の続編放送もあり、自身も「人生最大のターニングポイント」と語る作品となった。

そして、三谷さんが手掛けたドラマの中で、歴代最高視聴率をたたき出したのが1994年放送開始の『古畑任三郎』。田村正和さん演じる、ひょうひょうとした刑事・古畑任三郎が難事件を解決する刑事ドラマで、放送開始から5年にわたって第3シーズンまでシリーズ化された。
毎回、大物俳優や有名人が犯人を演じ、古畑と繰り広げる心理戦が最大の見どころ。ちなみに、最高視聴率をたたき出した回の犯人役は、当時立て続けに大ヒットドラマで主演を務めていた山口智子さんだった。

大人気劇団の突然の活動休止…そして“最も頼りになる俳優”の死

こうして脚本家としての地位を確固たるものにし、劇団もチケットが取れないほど大人気になっていたが、順風満帆にも関わらず三谷さんは「充電期間」と称して突然「東京サンシャインボーイズ」の活動を休止してしまう。

その理由について三谷さんは「劇団は大きくなりましたが、マネージメントはできなかった。そういうスタッフがいなかったから。どうしようと考えた時に、『これは売り時だ』『今だったらいろんな事務所が劇団員を引き受けてくれるんじゃないか』と思った。僕はみんなを集めて『1回バラバラになった方がいいと思う。その代わり、みんな入りたい事務所があったら教えて欲しい。絶対にそこに入れるから』と話して希望を聞いて、それぞれの事務所に一緒にお願いに行きました」と語り、それを聞いた坂上は驚きを隠せなかった。

人気脚本家になっても三谷さんが抱いていたのは「自分だけ売れても仕方がない」という思い。劇団員たちが売れ続けるようになるには、プロのマネージメントが必要で、仲間を路頭に迷わせないため劇団員一人一人を希望の事務所へと所属させることが自分の使命だと考えていたのだ。

こうして劇団が活動休止してからのメンバーたちは、ドラマや映画などで活躍。それぞれの現場で、自分の居場所を作っていった。

しかし、劇団の活動休止から8年後の2002年5月24日、誰も望んでいなかったある出来事がきっかけで、メンバーは再び集まることになった。それは、俳優・伊藤俊人さんの死。くも膜下出血だった。

伊藤さんは三谷さんにとって大学の同期であり、本番中、最も頼りになる俳優だったという。苦楽をともにした仲間の死は、劇団メンバーにとっても受け入れがたい出来事だった。

伊藤さんを偲び、多くの著名人が葬儀に参列する中、三谷さんは「人は二度死ぬと思います。一度目は、肉体的な死。そして二度目は友人が語らなくなった時。でも安心してください。ここにいる僕ら全員は、いつまでも君の事を語り続けます。伊藤くん、お疲れ様」と弔辞を読んだ。

そして、「東京サンシャインボーイズ」が再び一堂に会したのは、伊藤さんの死から7年後の2009年。拠点としていた劇場が閉館するのに合わせ、復活公演「returns」を上演。このステージに立てなかった伊藤さんのために、三谷さんは、伊藤さんの生前の声を舞台に流すという演出をした。

伊藤さんが亡くなったとき、劇団員みんなが最後のお別れをしたといい、その時の様子を三谷さんはこう語った。

「最後、みんなでお別れをしたんですけど、そこに甲本雅裕が遅れて入ってきて。彼はキャラクター的に感激屋ということもあって、突然『伊藤さん、順番が違うじゃないか!』って叫んだんです。その言葉って、家族が言うなら分かるけど『お前が言うことか?』って思ったらおかしくて。順番が違うということは、劇団の中で最年長の男がまず死ぬべきだって話になりますよね。それは、小林隆なんです。そしたら、小林隆が『俺か!』って。もう、おかしくて。
まだ、亡くなってから数分しか経っていないんですけど、笑いをこらえるのが大変だった。劇団員には今も僕の芝居やドラマや映画に出てもらうことはありますけど、やっぱり一番信頼できる人たちではありますね」

そんな三谷さんが脚本と監督を務めている最新作の映画『記憶にございません!』。中井貴一さんが主演を務める同作は、支持率史上最低の総理大臣が突然記憶喪失になるという、国家のありえないような一大事を痛快に描く三谷ワールド全開の政界コメディー。

坂上が三谷さんの作品について「全作品共通しているのは、一人として役者を無駄にしない。愛情溢れる監督で、それを強烈に感じる映画」と絶賛すると、三谷さんは「劇団をやっている時から、つまらない役をふられた俳優さんのことを思うとかわいそうというか、申し訳ないので、やりがいのある役、やりがいのあるシーンを作るのが僕の仕事だとずっと思っている。だから、長くなっちゃうんですよ、映画にしちゃうと」と熱弁した。

(「直撃!シンソウ坂上」毎週木曜 夜9:00~9:54)

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