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手塚漫画「アポロの歌」は「火の鳥」なのだ。3
 
その3 ダフネと変身
 
 「アポロの歌」は、報われない愛と、罰を受ける男の物語である。
 ギリシャ神話の英雄アポロが美女ダフネに恋をするが、ダフネはアポロを嫌い月桂樹に変身してアポロのものとなることを拒む。
 このアポロの報われなかった愛が、「アポロの歌」のタイトルの由来とのこと。
 「アポロの歌」の後半、医者の話の中に、このアポロの伝説が出てくる。その場面には、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ作の彫刻像の「アポロとダフネ」をオマージュした画が書かれている。
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  「火の鳥」にも、植物に変身するダフネとの類似点、つまり登場人物が植物に変身する場面が出てくる。
 変身と言えば、「未来編」のムーピーがすぐ思い浮かぶが、「望郷編」には、「宇宙編」(作品発表は「宇宙編」が先)にも出る牧村に追われたコム(ムーピー亜種)が、危機的状況でダフネのように植物に変身する場面が出てくる。なお、この時の牧村は、「宇宙編」で罰を受ける前の時代である。
 その「宇宙編」では、ナナが火の鳥に頼んで奇妙な巨大植物に変身させてもらっている。
 他に、「鉄腕アトム」の中にも、宇宙人が迫害を逃れる為に植物に変身して終わる話があったはずである。
 手塚治虫は、ダフネの変身譚がけっこう気に入っていたのかもしれない。「アポロの歌」と「火の鳥」は共通の影響下にあるのではないだろうか。
 ちなみに、前章で述べた転生・生まれ変わりも、時を超えた変身と言えるかもしれない。(以下、次回)
 
 
補足 

 手塚治虫は、主要キャラクター名や事物名がストレートに作品のタイトルになっていない場合は、「アポロの歌」のように、物語の後半か最後になるまで、タイトルの由来を説明しないことがある。
 例えば、「アドルフに告ぐ」、「陽だまりの樹」、「人間ども集まれ!」等が、それに該当する。物語が熟したから説明できる段階に入ったのか、元々の「引き」であったのか、それぞれであろうが…。

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