【その姿勢は本当に良い姿勢?】~良い姿勢と悪い姿勢の判断~

【その姿勢は本当に良い姿勢?】~良い姿勢と悪い姿勢の判断~

小さいころに「姿勢が悪い」「もっとちゃんと座りなさい」などと言われた経験はないでしょうか。もしかしたら大人になってからも周りの人から姿勢が悪いと指摘されたことがある方もいらっしゃるかもしれません。では、正しい姿勢とはどういった姿勢のことを言うのでしょうか。

 

人の姿勢には、それぞれ特徴があります。それは骨格の形状によるものであったり、筋力のバランスに影響されたりすることも多く、場合によっては精神面も姿勢には大きく影響することがあります。また、身体の疲労であったり、痛みがあったりする場合でも姿勢に変化をきたします。

 

つまり、姿勢とは単に一時的な姿形を表すものではなく、その人の遺伝的な特徴や性格までも表現しており、日常的にとっている姿勢を変えることは容易ではないということです。ここでは、一般的に良いとされている姿勢も場面によっては必ずしもそうではなく、悪い姿勢にも意味があるのだということを理解していただき、姿勢についての幅広い考え方を持っていただけると幸いです。

 

良い姿勢とは

立っているとき

立っているときの良い姿勢とは、一般的に下のような姿勢のことをいいます。頭が前に出すぎず、顎がやや引けた姿勢で、背中はしっかりと伸びている状態です。股関節や膝関節も伸びていて、足関節のやや前方に体重がのっている姿勢となります。

 

 

なぜこのような姿勢が良いとされているのかというと、この姿勢からなにか行動を起こそうとしたとき、効率的に身体を動かせるからです。姿勢を考える上では、股関節‐骨盤‐腰のラインがとても重要になってきます。この部分は身体の中心部分として、全身をコントロールするための基本部分となってきます。また、左右のバランスも姿勢では重要になってきます。偏りのない姿勢でいることで特定の部位に負担がかかることなく、首や肩のこり、あるいは腰痛などにもなりにくく、疲れにくい身体を手に入れることができます。

 

 

良い姿勢を保つためにはインナーマッスルが大切だというようなことを聞いたことがあるかもしれませんが、常にインナーマッスルを意識して生活するということはとても難しく、なかなかできることではありません。しかし、骨盤に対して体幹がしっかり乗っている状態であれば自然とインナーマッスルは働きやすくなり、腰や骨盤は安定しやすくなります

 

インナーマッスルが十分に働いていると内臓も引き上げられ、おなかがすっきりして見えるので、身体のラインもキレイにみられるようになります逆にインナーマッスルの働きが悪いと内臓の位置が下がってしまい、

おなかがポッコリしてみえてしまい、見た目も悪くみえてしまいます。体重が減っているのにお腹がなかなか凹んでこないといった方は、このインナーマッスルの活動性が低下してしまっている可能性が高いことが考えられます。

 

立っている姿勢を保つためには、他にもさまざまな筋肉が働いています。下の図のように、全身の筋肉が拮抗してバランスをとりながら姿勢をコントロールしています。立っているときの姿勢は歩くときの姿勢にもつながってきますし、さまざまな関節にかかる物理的なストレスとも大きく関係してきます。

 

 

姿勢を考えるときに、特に大切になってくるのが骨盤周囲の筋肉です。骨盤の位置や傾きに偏りができると、背骨のラインや足の開き方などにも崩れが生じてしまい、いわゆる悪い姿勢と呼ばれるような状態になってしまいます。「腹横筋」や「脊柱起立筋群」あるいは「腸腰筋」や「大殿筋」などは骨盤に付着している筋肉で、これらの筋肉が協調して働くことで良い姿勢を保つことができます。

 

また、立っているときは座っているときの姿勢と違い、足部からの影響を大きく受けることが考えられます。そのため、足部をコントロールするための筋力も良い姿勢を保つためには大切になってきます。普段から車移動が多いなど歩く機会が減ってしまっているようでしたら、意識的に歩く機会を増やすようにしましょう。

 

座っているとき

座っているときは立っているときと比べて骨盤が後ろに傾きやすく、自然と背中が丸くなりやすくなります。また、日中最も多く過ごしている姿勢が座っている姿勢だという方も多いかと思いますので、立っているとき以上に座っているときの姿勢は身体に与える影響は大きくなりますし、ケアが必要な姿勢でもあります。

 

 

このように骨盤が後ろに傾かずに起きている状態で、背中が丸くならずに腰が伸びて軽く胸を張ったような姿勢が良い姿勢となります。座っているときも筋肉の働きは重要で、股関節周囲や体幹の筋肉が協調して良い姿勢を保つための機能を果たしています。

 

 

座っているときには足部から姿勢をコントロールすることが難しくなってきますので、より骨盤周囲の筋肉で姿勢を上手にコントロールしていく必要があります。必要に応じて腰の形を整えてくれる「ランバーサポート」といったものを利用してみるのも良いかもしれません。

 

悪い姿勢とは

立っているとき

高齢者で腰が曲がって歩いている方をみかけることがあるかと思いますが、悪い姿勢といわれる原因の多くは、姿勢を保つための筋力や可動域が低下してしまっていることが理由としてあげられます。下のように、頭が前に出て腰が曲がってしまっているような姿勢は、首や肩あるいは腰の筋肉にも負担がかかり、さまざまな場所に疲労や痛みを引き起こす原因になってしまいます。

 

 

しかし、関節を支えるだけの筋力がない場合、腰が丸くなってしまうのはある意味で効率的な身体の使い方であるとも言えます。というのは、背中をまるくすると背骨の表面を走っている「棘上靭帯」や関節を覆っている「関節包」といったものの緊張が高くなり、その張力で体幹を支えることができるため、筋力のない高齢者ではこういった姿勢をとりやすくなります。

 

また、膝を伸ばす筋力が低下してしまっている方や足の関節が硬くなってしまっている方でも、身体は前傾姿勢をとりやすくなります。先ほどお話したとおり、立っている姿勢では足部からも大きく影響を受けるので、足の筋力や可動域を低下させないことも大切になってきます。

 

 

若い方でも注意深く姿勢を観察してみると、どちらかに姿勢が傾いている方が多くみられます。特に女性で多くみられるのですが、若くても背骨が微妙に曲がっていたり、「外反母趾」や「偏平足」がある方が意外と多くいらっしゃいますそういった方は姿勢を偏りなく保つのが難しく、左右どちらかへの姿勢の偏りがみられます。例えば左足に偏平足がある方では、上の女性のように左側の方が下がっているような姿勢になります。これは偏平足により足部が潰れてしまい、体重を支えている状態では左足が短くなることから左肩が下がってしまうといった現象です。また、背骨が側方に曲がってしまっている「側弯」という状態では、背骨の曲がりに合わせて身体も傾いてしまうため、特定の部位にストレスが集中してしまう傾向にあります。

 

座っているとき

近年、仕事やプライベートでパソコンや携帯に触れている時間が長く、それが原因で筋肉に負担がかかっていることが問題になっています。また、筋肉だけの問題にとどまらず長時間スマホなどを操作していると首の骨の形状にも変化がみられ「ストレートネック」という状態になってしまうことも問題視されています

 

 

本来、首の骨はやや前方に弯曲していて衝撃を吸収するための機能を持っています。ストレートネックになってしまうと衝撃吸収機能が低下して、より首に負担がかかるようになってしまいます。そして、一度ストレートネックになると、もとの弯曲を取り戻すのは容易ではありません。そのため、普段から首に負担のかからない姿勢でいることが大切になってきます。

 

悪い姿勢はどこから始まるのかということに着目して考えてみると、重要になってくるのが目線です。人は何かをするときに、まず初めに目線が動いて、それに伴って頭や体幹が動き、身体全体の姿勢に変化がみられます。そう考えると、何か作業をしているときにどこに目線をおいて座っているかということが、姿勢を決定する上でとても大きな要素になってきます。例えばパソコンが目線よりもかなり下にあったり、下を向いて携帯をいじっていたりなど、下を向いて長時間作業をすることは身体全体の姿勢に悪影響を与えることになります。

 

 

また、座面の高さや硬さも骨盤の傾きに大きく影響してきます。もし座面が低すぎるようであれば骨盤は後ろに傾き、背中が丸くなってしまう要因になってしまいます。座面の硬さでいうと、柔らかい座面では同様に骨盤が後方に倒れてしまい、背中をまっすぐ伸ばした姿勢を保つのが難しくなります。そう考えると、ソファーは座面も低く、柔らかい素材でできているものがほとんどなので、姿勢という観点から考えるとこれほど好ましくないものはありません

 

良い姿勢と悪い姿勢の捉え方

姿勢というものの考え方

これまでに良い姿勢と悪い姿勢について話してきましたが、常に良い姿勢でいなければいけないというわけではありません。常に良い姿勢でいろとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、私はそれは現実的ではないと思いますし、姿勢というのは個性でもありますので、必要に応じて改善すべきところは改善するという方向で考えるべきだと思っています。

 

では、姿勢において大きな問題点となるポイントとは何なのでしょうか。それは、とれる姿勢のパターンが限られてしまうことです。例えば長期間猫背の姿勢でいると、首や肩の筋肉が硬くなってしまい、さらにそれが長期間続くと骨の変形が生じるなどして、良い姿勢をとることが窮屈に感じる可能性がでてきます。姿勢において大切なことは、状況に応じてとれる姿勢のバリエーションが豊富にあり、状況に応じて使い分けられることです。

 

 

必ずしも悪い姿勢というものが駄目だということはありませんが、それを長時間あるいは長期間続けてしまうことが問題なのです。悪い姿勢というものは筋肉が疲れたときに筋肉を休ませる効果もあるのですが、そういった姿勢ばかりとっていると徐々に姿勢をキープする筋肉が衰えたり血行が悪くなったりして、身体のさまざまな不調をきたす原因になってしまいます。

 

悪い姿勢と言われている背景には…

座っているとき、どちらかの足を上にして組んで座ることはありませんでしょうか。多くの方は、そのような姿勢をとったことがあるかと思いますが、ではなぜ人は足を組んで座るのでしょうか。それは、足を組んで座ると筋肉を使わずに座っている姿勢を安定させることができるからです。

 

骨盤の関節には「仙腸関節」と呼ばれる関節があり、その関節を安定させるためには仙骨という骨が適度に固定されている必要があります。足を組むと、仙骨に付着している「大殿筋」や「梨状筋」といった筋肉が伸ばされて張力が高まり、仙骨の固定性が高まることで仙腸関節を安定させる作用があると考えられています。つまり、筋肉をコントロールして骨盤を安定させるよりも、筋肉の張力を高めて関節を安定させたり姿勢をキープする方が人は楽に感じられるのです。

 

また、椅子に座っているときに頬杖をつくことも場合によってはあるかと思います。本来、支えなしで座っている場合には「腹筋群」と「脊柱起立筋群」という体幹の筋肉が働いて姿勢を保持しているのですが、頬杖をつくと体幹の筋肉はほとんど使わなくてすんでしまいます。つまり、よく頬杖をつく人をみたら「あの人は体幹の筋肉が弱いんだなぁ」と判断できるということになります。

 

悪い姿勢を改善するためには

これまで必ずしもいわゆる悪い姿勢がデメリットばかりでなく、ちゃんと意味があるんだという話をしてきましたが、悪い姿勢を続けていると筋力も落ちてしまいますし、負担がかかっている筋肉は徐々に硬くなり働きづらくなってしまいます。それらの改善のためには、定期的なストレッチや筋力トレーニングが重要になってきます

 

もし身体に不調があれば、その不調に合わせて首や肩回りあるいは体幹のストレッチなどを行うと良いでしょう。特に体幹や骨盤、股関節周囲のストレッチや筋力トレーニングは重要で、骨盤の自由度によって姿勢のバリエーションも大きく増えてくるので身体に不調のある方は行っておいた方が良いかと思います。その方法に関しては「肩こり」や「腰痛」「股関節」などに関する記事をご参照ください。

 

また、姿勢は目線の位置によって受ける影響が大きいので、長時間下を向いている姿勢をあまりとらないような環境作りも大切になってきます。つまり、本や携帯をみるときにはなるべく高い位置でみるようにするなどの工夫をすることが、姿勢が崩れることを予防するためには大切なことになります。

 

 

おわりに

人にはそれぞれ楽な姿勢というものがあり、その楽な姿勢というのは主に筋力や可動域などによって決まってきます。しかし、長期間の不良姿勢は筋肉や骨の状態を悪化させてしまう要因にもなりかねません。周りの人からよく姿勢について指摘されるという方は、姿勢改善のためのストレッチや筋力トレーニング、環境整備などを行うようにして姿勢の改善を心がけてみてはいかがでしょうか。

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