西前頭10枚目の明生(24)=立浪=が18日、大相撲秋場所11日目、石浦を寄り切り、2敗を死守。2敗の力士が続々と敗れる中、貴景勝と並んで堂々の優勝争いだ。遠距離通勤を続ける好漢は「自分の実力じゃあ、優勝はまだまだ遠い」と控えめだが、そんなことも言ってられない状況になってきた。
茨城県つくばみらい市にある部屋の最寄り駅は、つくばエクスプレスの「みらい平」。車で通ってもいいのだが、高速道路が混むので時間が読めず、今でも電車通勤している。秋葉原駅で乗り換え、両国駅まで約1時間の道のり。今場所は、まだ誰からも声をかけられていなかった。
ところが「きょう初めて(国技館へ向かう)電車の中で話しかけられました。ちょっと有名になったんだって」と満面の笑み。男性から車中で「頑張ってるね。応援してるよ」と声をかけられ、乗り換えのJR総武線ホームでは女性から「頑張ってください」と激励された。場所へ向かう途中だったため「気合が入っていて、あんまり対応できなかった。帰りだったらいいんですけど…」と申し訳なさそうに話したが、そのくらい生真面目な男だ。
2敗目を喫した前日の10日目。つくばエクスプレスは帰宅ラッシュで混雑していたが「おっ、座れた」と座席を確保できた。すると、1駅目の新御徒町駅で目の前に妊婦さんが。「妊婦さんのキーホルダー(マタニティーマーク)をつけてる人がいたので、どうぞって」と譲ってあげた。「妊婦さんも大事。子どもも大事ですから」。負けた直後でも周囲への気配りを忘れることはない。
取組を見守った藤島審判部副部長(元大関武双山)は「ごまかして勝ってる相撲じゃない。電車で通えないくらいになるのも、そう遠くないんじゃないですか」と絶賛。ブレークの予感がプンプン漂ってきた。(岸本隆)