多核種除去設備
福島第一原子力発電所で発生する「汚染水」を浄化する設備のひとつ。
汚染水に含まれる放射性核種のうちトリチウム以外の大部分を取り除くことができる設備です。
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撮影月 2017年4月撮影
福島第一原子力発電所では、多くの方のご協力を頂きながら、
事故に伴って発生した高濃度の放射性物質を含む「汚染水」への
対策を進めています。
当サイトでは、汚染水に含まれる放射性物質を浄化し、
リスクを低減した「処理水」について、データ情報や対応状況などを
皆さまにお伝えしてまいります。
福島第一原子力発電所では、発生した汚染水に含まれる放射性物質を多核種除去設備等で浄化し、処理水(ストロンチウム処理水を含む)として敷地内のタンクに貯蔵しています。
なお、敷地内には977基のタンクがあります。(多核種除去設備等処理水の貯蔵タンク834基、ストロンチウム処理水の貯蔵タンク129基、淡水化装置(RO)処理水12基、濃縮塩水2基/2019年8月22日現在)。
※2020年末までのタンクの建設計画は約137万㎥
多核種除去設備等の処理水
ストロンチウム処理水
現在、多核種除去設備等の処理水は、トリチウムを除く大部分の放射性核種を取り除いた状態でタンクに貯蔵しています。
多核種除去設備は、汚染水に関する国の「規制基準」のうち、環境へ放出する場合の基準である「告示濃度」より低いレベルまで、放射性核種を取り除くことができる(トリチウムを除く)能力を持っています。ただし、設備運用当初の不具合や処理時期の運用方針の違いなどにより、現在の告示濃度比総和別の貯蔵量は右図の通りになっています。
ストロンチウム処理水
福島第一原子力発電所では、敷地内で処理水をタンクに貯蔵する際の国の基準「敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年」を満たすため、2013年度以降、多核種除去設備等による浄化処理を進めた結果、2015年度末に敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年未満を達成しました。
多核種除去設備は、それ以降も発電所のリスク低減を踏まえた運転を実施しています。
セシウムのみを取り除いた状態の高濃度汚染水を敷地内のタンクに貯蔵していた2013年当時の敷地境界線量は、9.76ミリシーベルト/年に達し、国の定める基準である「敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年」を大幅に超過していた。
多核種除去設備による処理を2013年より開始し、敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年の早期達成を目標とし、稼働率を上げて浄化処理を実施。
多核種除去設備による浄化処理を進めた結果、2015年度末に敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年未満を達成した。一方、多核種除去設備の不具合などにより、核種別の告示濃度超過も発生した。
※1 サンプリング数に対する告示濃度超過回数の割合を核種別に示したもの
※2 既設・増設・高性能多核種除去設備による処理量の合計
多核種除去設備等による処理が進んだことにより、処理容量がタンクの建設容量を上回ったため、処理水を貯蔵するタンクが不足しはじめた。
処理水を貯蔵するタンクの建設を急ぐとともに、多核種除去設備の浄化能力をいかし、核種別の告示濃度を意識した処理を実施。
多核種除去設備の浄化能力をいかした処理を行ったため、2013年度~2015年度と比べ、核種別の告示濃度超過の発生割合が少なくなった。
※1 サンプリング数に対する告示濃度超過回数の割合を核種別に示したもの
※2 既設・増設・高性能多核種除去設備による処理量の合計
漏えいリスクの高いボルト締めのフランジ型タンクに貯蔵している水を早期に処理すること。
2018年度末までにフランジ型タンクに貯蔵している水を多核種除去設備で処理することを目標とし、敷地境界における実効線量1ミリシーベルト/年未満を維持しつつ、多核種除去設備の稼働率を上げて浄化処理を実施し、リスク低減をはかる。
フランジ型タンクで貯蔵するリスクを低減させることを意識し、多核種除去設備の稼働率を上げて処理を実施した。
その結果、2018年11月に、フランジ型タンク内のストロンチウム処理水(多核種除去設備等による処理前の水)については、全量処理が完了したものの、2016年度と比べ核種別の告示濃度限度超えの割合が多くなっている。
なお、2019年3月に、フランジ型タンクに貯蔵している多核種除去設備等処理水についても、溶接型タンクへの移送が全て完了した。
※1 サンプリング数に対する告示濃度超過回数の割合を核種別に示したもの
※2 既設・増設・高性能多核種除去設備による処理量の合計
福島第一原子力発電所1~3号機の原子炉内には、事故により溶けて固まった燃料(燃料デブリ)が残っています。燃料デブリは水をかけ続けることで冷却された状態を維持していますが、この水が燃料デブリに触れることで、高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」が発生します。また、この高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」は原子炉建屋内等に滞留しているため、建屋内等に流れ込んだ地下水や雨水と混ざることによっても「汚染水」が発生します。
この「汚染水」は、複数の設備で放射性物質の濃度を低減する浄化処理を行い、リスク低減を行った上で、敷地内のタンクに「処理水」として保管しています。
「多核種除去設備」は、福島第一原子力発電所で発生する汚染水を浄化する設備のひとつです。この設備にある、吸着材が充てんされた吸着塔に汚染水を通すことによって、放射性物質を取り除く仕組みになっており、トリチウム以外の大部分の核種を取り除くことができます。
なお、汚染水に関する国の「規制基準」は
①タンクに貯蔵する場合の基準、
②環境へ放出する場合の基準の2つがあります。周辺環境への影響を第一に考え、まずは①の基準を優先し多核種除去設備等による浄化処理を進めてきました。そのため、現在、多核種除去設備等の処理水はそのすべてで①の基準を満たしていますが、②の基準を満たしていないものが8割以上あります。
当社は、多核種除去設備等の処理水の処分にあたり、環境へ放出する場合は、その前の段階でもう一度浄化処理(二次処理)を行うことによって、トリチウム以外の放射性物質の量を可能な限り低減し、②の基準値を満たすようにする方針です。
「トリチウム」は水素に中性子が2つ加わったもの(三重水素)で、水素とほぼ同じ性質を持っています。
放射性核種のひとつであり、ベータ線という放射線を出しますが、そのエネルギーは小さく、紙1枚で遮ることができるほどです。
もともと「トリチウム」は、宇宙から降りそそいでいる放射線(宇宙線)と大気がまじわることによって常に生成されています。そのため、トリチウムが水素の代わりに酸素と結びつき、「水」のかたちで大気中の水蒸気や雨水、海等自然界に存在しています。
「トリチウム」は、日常生活でも飲水等を通じて体内に取り込まれていますが、新陳代謝等によって、蓄積・濃縮されることなく体外に出ていきます。
なお、国内外にある原子力施設(原子力発電所や再処理施設)では、核分裂等を通じてトリチウムが生成されており、各国が、それぞれの国の規制に基づいて管理されたかたちで、海や大気等に排出しています。
福島第一原子力発電所で発生する「汚染水」を浄化する設備のひとつ。
汚染水に含まれる放射性核種のうちトリチウム以外の大部分を取り除くことができる設備です。
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福島第一原子力発電所で発生する汚染水を浄化処理し、発電所内のタンクで貯蔵している水。
セシウムとストロンチウムを除去した「ストロンチウム処理水」と、多核種除去設備等によって、ストロンチウム処理水からトリチウム以外の大部分の放射性核種を取り除いた「多核種除去設備等の処理水」があります。
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福島第一原子力発電所で発生する汚染水の浄化設備である多核種除去設備等でトリチウム以外の大部分の放射性核種を取り除いた水
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汚染水に関する国の「規制基準」には、
①タンクに貯蔵する場合の基準(敷地境界における実効線量)
②環境へ放出する場合の基準(告示濃度)
の2つがあります。
国は法令※で、放射性物質を環境へ放出する場合の、核種毎の放射能濃度の上限(告示濃度)を定めています。複数の放射性物質を放出する場合は、核種毎に告示濃度が異なることから、それぞれの告示濃度に対する比率を計算し、その合計値を「告示濃度比総和」とよんでいます。
※東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関して必要な事項を定める告示
タンクに貯蔵されている多核種除去設備等の処理水を今後どのように取り扱うかということについては、処理水の扱いに関する国の小委員会での議論を踏まえ、地元をはじめ関係者の皆さまのご意見を伺いつつ、丁寧なプロセスを踏みながら、適切に対応してまいります。
多核種除去設備等の処理水の処分にあたり、環境へ放出する場合は、環境へ放出する際の国の基準(告示濃度比総和)で「1未満」となることが求められています。当社は、多核種除去設備等の処理水の処分にあたり、環境中へ放出する場合は、その前の段階でもう一度浄化処理(二次処理)を行うことによって、トリチウム以外の放射性物質の量を可能な限り低減し、上記の基準値を満たすようにする方針です。
国が法令※で定めた、福島第一原子力発電所から放射性物質を環境へ放出する場合の、核種毎の放射能濃度の上限のこと。
※東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関して必要な事項を定める告示
原子力規制委員会は、発電所の敷地内に保管されている、ガレキや汚染水等から敷地境界に追加的に放出される線量(自然界にもともとあった線量を除いて、発電所から新たに放出されて増えた分の線量)を「年間1ミリシーベルト(1mSv/年)未満」に抑えることを求めています。この「敷地境界における実効線量」は、敷地内で処理水をタンクに貯蔵する際の安全管理の基準になっています。
多核種除去設備等の処理水は、敷地内のタンクで貯蔵しています。タンクは、漏えいリスクを低減させるため、ボルト締めのフランジ型タンクから、順次溶接型タンクへのリプレースを行っています。2019年3月にフランジ型タンクに貯蔵している多核種除去設備等処理水について、溶接型タンクへの移送が全て完了しました。 また、タンク周囲には、堰を二重に設けて、万が一漏えいした場合でも堰の外に流れ出ることを防ぎます。
さらに、タンクのパトロールや水位監視(常時監視)等を継続的に行い、漏えいリスクに備えています。
多核種除去設備等の処理水の取扱いについて、科学的な安全性を確認するだけではなく、社会的な影響も含めた処分方法などの検討が必要であるとして、国が立ち上げた小委員会(多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会)。さまざまな分野の専門家の皆さまにより、技術的観点に加え、風評被害などの社会的影響も含めた総合的な議論が行われている。