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 一日も早く被害の全容を把握し、必要な支援を届けなければならない。

 千葉県に9日に上陸した台風15号による影響は、広範な停電にとどまらない。住宅家屋の損壊がかなりの規模に広がっていることがわかってきた。

 被害戸数は一部損壊を含め数千棟以上とみられる。だが、市町村の調査の手が回らず、いまだに全体像がわからない。

 屋根が飛ばされたり、壁が壊れたりしており、居住困難な家もある。多くの市町が避難所を設けたが、知らない人も少なくない。周知に努めてほしい。

 全容把握が遅れた原因の一つに、行政の初動対応のつまずきが指摘される。

 千葉県南房総市では翌日の10日、停電で市役所の全固定電話が不通になった。携帯電話やインターネット、防災行政無線も使えなくなった。固定電話が不通なら市町村は防災電話と防災情報システムで県と情報共有するが、システムがダウンした。市内の各支所との電話も通じなくなったという。

 停電時の連絡手段の確保は想定しているはずなのに、なぜ失われたのか。システム上の不具合なのか、他の自治体も含め、一段落した段階で「情報途絶」の原因を究明し、連絡手段を再構築しなくてはならない。

 県は市町村の連絡待ちではなく、積極的に被害把握に動くべきではなかったか。市町村が報告できない場合、県の地域防災計画では職員を派遣すると定めている。だが、県が南房総市などに派遣したのは12日以降で、人数も十分ではなかった。

 医療機関の停電や断水への対応など、仕事が多岐にわたるのはわかる。だが、17日になっても県の資料には、館山市や鋸南町など11市町村の被害状況が記されていなかった。これでは十分な被災地支援はできない。

 行政機関の業務で、電話やネットは欠かせない。だからこそ失った時の即応策を考えておく大切さを肝に銘じたい。

 政府にも、内閣改造で初期対応が遅れたのではないか、という指摘が野党から出ている。

 菅官房長官は昨日、「台風上陸前から迅速および適切に対応してきた」と述べた。だが、経済産業省が停電被害対策本部を設置したのは13日だった。新体制発足直後で、危機意識に甘さはなかったか。検証の上、結果を明らかにしてほしい。

 東京の伊豆諸島でも家屋が損壊し、横浜市でも護岸が数百メートルにわたって壊れるなど、台風被害は広域にわたる。災害ごみの問題や、農業被害も深刻だ。

 政府が主導し、目配りのきいた支援を、長期的な視点ですすめる必要がある。

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