ハムスターの顔に、“刺さった”ノミ

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ハムスターの顔に、虫のようなものが刺さっている、
という患者さんが来院です。
シラミかな?と思って、
「動いてます?」
と聞くと、刺さったまま直立不動だ、とのこと。

なんじゃそりゃ、と思いながら、
まずは診察室に入ってもらって、
モノを見てみることにしました。

どこにいるかと聞くと、顔の周りに付いている、だそうです。
カゴの中のハウスに閉じこもっているハムスターを引っ張り出すと、
首の後ろをつかんで持ち上げ、顔を見てみました。

「うわ~」;゚д゚)


見たこともない虫(?)、見たこともない光景に、
思わず声を出してしまいました。
プロとしては、常に平常心で診察に臨まなければいけないところですが、
今回は、正直びっくりしました。

首の後ろの毛が、ぞわぞわっと逆立つのが感じられました。
見ているだけで、体中が痒いような気分になってきます。

「これいつからあるんですか?」
と聞くと、
「ペットショップで買ったときからなんかついてるなぁ、
 とは思ってたけど、だんだん増えてきた」
とのことです。
ペットショップに相談したところ、
ほこりかなんかでしょうと言われた、とのことです。
買ったのが半年以上前だそうなので、
このハムスターはずっと、この虫を顔につけながら生活してたわけですか・・。

頭は下側を向いていて、お腹だけが見えているらしく、
動き回る気配はありません。
お腹をピンセットでつついてみると、
足らしきものをばたばたと動かしています。
・ ・足が動いても、宙をかいているだけで、
  あまり役に立ってはいなさそうですが・・。

ハムスターで時折見かける虫、というと、
シラミが思いつきますが、シラミはもう少し小さいですし、
わらわらと大量の真っ白な虫が動き回っていますので、
一目見れば分かります。
ノミは、さらに俊敏に動きますし、
ダニでも動きは遅いですが、動くのが見えます。

ハムスターの顔に食いつき、動かない虫・・・、
いくら考えてもさっぱり思いつきません。

とりあえずは一匹引き抜いて顕微鏡で見てみることにしました。
ハムスターを宙づりにして、ピンセットで虫をつかむと、
慎重に引っ張りました。
・・抜けません。
かなり、強力に食いついているようです。
なんなんだ、この虫は。

ハムスターも、つかまれて持ち上げられるのは平気でしたが、
顔の虫を引っ張られるのは痛いらしく、
前足でピンセットを払いのけようとしています。

でも、一匹抜いて顕微鏡で見てみないことには、
診断も付けようがありません。
ハムスター君には申し訳ありませんが、少し我慢してもらって、
何とか一匹、抜いてみることにしました。

さっきより力を込めて引っ張ると、
ブチッ、という感触と共に、虫が抜けてきました。
台の上に置くと、立つこともできないようで、
まん丸いお腹をさらけ出しながら、足をばたつかせています。

せっかく快適な生活を送っていたところ、申し訳ありませんが、
プレパラートの上に乗ってもらい、顕微鏡で観察です。
うーん、ノミっぽい・・・、
でも、よく見かけるような、イヌやネコのノミとは明らかに違う感じです。
ダニにしても、何か違います。

教科書を見てみても、まるで分かりません。
最初見たときは、虫を全部引き抜こうかと思いましたが、
先ほどの感触からすると、
一匹抜くごとに、かなり痛そうな雰囲気ですので、
とりあえずサンプル分を何体か抜いて、止めておくことにしました。

そして、何の治療が効くかもよく分かりませんので、
とりあえず、ダニの薬を塗っておいて
(写真の顔が濡れているのはそのせいです)、
次回の来院までに、なんの虫か調べておくことにしました。
ところが、友達の獣医師の、誰に聞いても、
そんな虫は知らない、という返事です。
しまいには、見間違いじゃないの、とか、
疲れてたんじゃないの、とかまで言われる始末です。

しょうがないので、獣医さん同士のコミュニティサイトの掲示板で尋ねてみることにしました。
教えて、エライ人・・。

返事が返ってくるかなと、期待しながら待っていると、
その夜のうちに、とある大学の寄生虫学研究室の人から、
それは、「ネズミフトノミ」じゃないの?
という返事が返ってきました。
おそるべし、コミュニティサイト!

その人も、実物は見たことがないようで、
サンプルを送ってくれないか、ということでした。
さっそく、喜んでサンプルを送っておきました。
インターネットで情報の載っているサイト(英字)があるからと
教えてもらって読むと、今回の症例と、
まさにどんぴしゃの内容でした。

なんでも、ネズミフトノミは、
未熟なときははい回り、宿主を捜しているけれども、
寄生する宿主を見つけると、頭を皮膚の中にめり込ませ、
それ以後、死ぬまで直立した生活を送る、ということです。

死ぬまで、仲間の顔を見ることもなく、
太陽の光を見ることも、歩くこともなく、
目の前の皮膚から、ひたすら血を吸って生きていくわけですか・・。
・ ・僕はそんな人生は嫌だな・・。

成長すると、運動能力はなくなるため、
抜かれてしまうと、歩くこともできず、
栄養をとることもできず、餓死して死んでしまうようです。
あわれというか何というか・・。

治療法は、全て抜くか、それともノミの薬を付けるか、
ということのようです。
ノミを全部抜く気にもなれないので、
次の来院の時に、ノミの薬を付けてみることにしました。

そして、初診から1週間後、
飼い主さんにハムスターを見せてもらうと、
ノミの数は、ある程度減ってはいましたが、
全滅はしていないようです。

そこで、あらためて、ノミの薬を付けることにしました。
ネコ用の製剤で、ハムスターにも付けて害がないモノを選びましたが、
ネコ用の量をハムスターに使うわけにはいきませんので、
微量注射器で製剤を吸って、それをハムスターに垂らすことにしました。
余った分は、病院の猫用です。

眼に入らないように、かつノミの近くにつくように、慎重に垂らします。
つけ終わると、あとはしばらく結果判定です。

さらに1週間ほどしてから、飼い主さんに電話をしてみると、
きれいに無くなった、ということでした。
薬が効いてくれたようで、良かった良かったというところです。

でも、ゴールデンハムスターは、
イスラエルのあたりがもともとの出身地ですが、
ネズミフトノミは、アメリカ大陸のノミです。

よく考えてみると、
イスラエルのハムスターがアメリカでノミを拾ってきて、
それから日本にやってきたということです。
ずいぶんインターナショナルな話だなーと思わず感心してしまいました。
でも、日本でこんなノミが増えると気持ちが悪いので、
日本で増えたりしないでくれよと、願うばかりです。

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