米国防総省、カタールでレーダー基地建設 ペルシャ湾で掃海演習へ

 米国防総省はカタールにミサイル防衛レーダー基地を建設しているほか、ペルシャ湾で過去最大規模の機雷掃海演習を計画中だ。懸念されるイランとの対立に向けた準備が加速していると米当局者らは語った。

 当局者らはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、レーダー基地はイランのロケットから米国、イスラエル、欧州同盟国の国益を守るために設計されたシステムの一部だと述べた。9月に予定されている掃海演習は、一帯で初の多国間演習。米当局は17日に計画を発表する見通しだ。

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イスラエル・ネゲブ砂漠の米軍施設

 米国防総省の動きは、イランの原油輸出を狙った全面的な制裁が続いていることから、イランとの緊張が増幅しかねないとの懸念を反映している。米当局者は、レーダー基地と海軍演習がともに防衛的な性質のものだと語ったが、イランは配備を挑発行為とみなしそうだ。

 今回の動きは、国防総省がイランに対処するための措置を講じていることを、米国としてあらためてイスラエルその他同盟国に示すことにもつながり得る。米高官らは、イスラエルがイランの核施設を攻撃しかねないとの懸念を口にした。イランは、核開発プログラムの狙いが核兵器製造ではないとしている。

 米国の動きは、国防総省当局者が最も懸念しているイランの2つの攻撃的能力に対処する狙いがある。つまり、弾道ミサイルと、石油タンカーの航路であるホルムズ海峡の機雷による封鎖だ。

 懸念を裏付けるように、国防総省は16日、予定より数カ月早く空母ジョン・C・ステニスを中東に派遣した。常に2隻の空母を配備しておくためだ。2隻のうち1隻が代替艦の到着前に出発する予定だったことからステニス派遣を決めたと同省報道官は語った。

 ペルシャ湾での緊張の高まりは、米海軍の給油艦ラッパハノックがアラブ首長国連邦(UAE)沖で小型漁船に発砲し、UAE当局者によると1人が死亡した事件を見ても明らかだ。

 国防総省が新たなレーダー施設の建設地にカタールを選んだのは、一帯最大の米空軍基地アルウデイドがあるためだとアナリストらは言う。同基地に8000人以上が駐留しているほか、別の基地もある。

 ワシントンとドーハのカタール当局者はコメント要請に応じなかった。カタールは、リビアやシリアの紛争で重要な役割を果たし、米国から称賛されている。イランに対してはもっと中立的姿勢を守っており、地域で最大の天然ガス田を共有する同国の政府と緊密な関係を維持している。

 当局者らによると、カタールのレーダー基地には強力なXバンドレーダー(「AN/TPY-2」レーダー)が配備され、イスラエルのネゲブ砂漠とトルコ中部に既に配備されている同様のレーダーを補完する予定。合わせて3つのレーダー施設で、イラン北部、西部、南部のミサイル発射を探知することができるという。

 イラン内陸深奥部から発射されたミサイルを米当局や同盟国の軍が追跡することも可能になる。同国には、イスラエルや欧州の一部に到達できるミサイルがある。情報当局は、イランが米国を脅かしかねない弾道ミサイルを早ければ2015年にも持つ可能性があるとみている。

 5月10日付の国防総省の文書によると、レーダー基地は月内に完成する予定。この文書では、Xバンド基地を建設中の国や地域は開示していない。

 当局者らは、カタールの新施設の場所について、UAEへの米軍配備を取り巻く情勢が微妙なことから秘密にされていると語った。

 国防総省は議会の委員会に対し、レーダーの台、道路、兵舎、保安装置などの建設費が1220万ドル(約9億6200万円)かかるとの見通しを示した。

 レイセオンが造った最初のXバンドシステムは06年、北朝鮮のミサイル探知用として日本に配備された。2つ目は08年、イスラエルのネゲブ砂漠。米国が最近トルコに3つ目を構築した。

 米当局者は、9月16-27日にペルシャ湾などで予定している掃海訓練に20カ国が参加すると述べたが、具体的な国名は挙げなかった。

 米海軍は一帯の掃海艇を8隻に倍増するなどして、繰り返しホルムズ海峡封鎖をちらつかせるイランのけん制に努めている。