1敗だった隠岐の海と明生がともに敗れ、優勝争いは2敗の5人が先頭に並ぶ大混戦となった。西前頭2枚目の朝乃山(25)=高砂=は志摩ノ海を寄り切り、初優勝した夏場所以来、2場所ぶりの勝ち越し。富山市出身で同郷のバスケットボール選手の活躍を刺激に、2度目の優勝を視野に入れた。
宝刀の左上手を抜くまでもなかった。朝乃山は初顔合わせの志摩ノ海との立ち合い、低く当たってからの右差しを生かして一気に前へ。相手得意の追っ付けでの抵抗を許さない速攻で寄り切った。6連勝で、上位総当たりの地位では初の勝ち越し。ついに優勝争いの先頭に並んだ。
土俵へ上がる前に1敗だった明生と隠岐の海が相次いで敗れ、付け人たちは「よしっ!」と大盛り上がり。一方、朝乃山は「ちょこっとテレビで見たけど、すぐに自分の相撲に切り替えました」と冷静そのものだった。
前へ前への攻めは、圧力を増すばかり。八角理事長(元横綱北勝海)が貴景勝、御嶽海とともに朝乃山の名前を挙げ「大関どころか、もっと上に行くくらいの気持ちでね」とべた褒めしたように、周囲の期待はうなぎ上りだ。
富山県出身のアスリートとの切磋琢磨(せっさたくま)が力になっている。この日、同じ富山市出身のバスケットボール男子日本代表・馬場雄大(23)=A東京=がNBA挑戦を表明した。「バスケは以前、あまり興味なかったけど…」と言いながらも「八村(塁)選手と馬場選手、2人とも富山出身。いい刺激になってます」と笑顔。最高峰に挑戦する後輩へエールの白星を届けた。
連勝街道で夏場所以来、2度目の賜杯も視界に入ってきたが「あと5日間、これからが勝負。何も考えず、自分の相撲を取りきるだけ」。終盤戦も右四つと自信を武器に暴れ回る。(志村拓)