サウジアラビアの石油施設が攻撃され供給能力の半分が失われた。原油価格は急騰し日本を含む世界経済に新たな不安定要因が加わった。今は原油の安定供給確保に向け全力を尽くす時だろう。
連休明けの東京商品取引所では、中東産原油の先物相場が急騰するなど原油価格は世界的規模で一時値上がりしている。急騰の最大の要因は、攻撃を受けたのがサウジだったからだ。
サウジの原油生産量は米国に次ぐ世界二位で約13%を占める。今回の攻撃によって、世界全体の生産量のうち5%超が一時的に失われた計算だ。
日本は九割近くを中東に頼っており、四割近くがサウジ産だ。中東に代わる調達先も事実上存在しない。
現段階で攻撃を受けた施設の復旧のめどは立っていない。数カ月以上かかるとの報道もある。
攻撃についてイエメンの武装組織が犯行声明を出している。しかし、米国は背後にサウジと対立するイランがいるとみている。
真相は不明だが、今後、米国とイランの関係が一段と緊張を高めることは確実だ。米国と緊密なサウジがさらなる攻撃を受ける恐れもある。ましてや無人機となればいつ再攻撃があっても不思議ではない。
事態が短期間で好転する見込みは非常に薄い。こうした状況を嫌気した市場で、原油価格の上昇圧力が高まる展開は容易に想像できるはずだ。
サウジ攻撃による供給不安は、消費税増税を直前に控えた日本にとって非常に悪いタイミングだった。火力発電や都市ガスに使う液化天然ガス(LNG)は原油価格と連動している。このため価格高騰は、電気やガス料金に波及し、家計や企業活動に影響を与える恐れがある。
さらに中東での危機の高まりが、金融市場で「安全資産」と見なされる円買いを引き起こす可能性も捨てきれない。急激な円高が国内経済の圧迫要因になることは言うまでもない。
現段階で直ちに供給不安に陥ることはないとの指摘はある。日本には約二百三十日分の石油備蓄もある。しかし、中東情勢の先行きが読めない以上、友好国と協調して備蓄を放出する体制を構築するなど、万全の構えを取る必要があるだろう。
同時に日本政府が、中東の安定に向け最大限の外交努力を尽くすことも当然だ。
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