【ニューヨーク=宮本岳則】少女への性的虐待疑惑で起訴された米富豪ジェフリー・エプスタイン氏との関係を巡り、米名門大学の一つ、マサチューセッツ工科大学(MIT)が揺れている。傘下の研究所で所長を務める伊藤穣一氏がエプスタイン氏から資金援助を受けていたことが発覚し、一部の研究者による抗議の辞任に発展した。伊藤氏はすでに謝罪したが、混乱は収まっていない。
エプスタイン氏は7月、2002~05年に未成年に性的虐待をした容疑でニューヨーク南地区の連邦地検に起訴された。自宅に未成年の女性を呼び寄せ、性行為を強要したとされる。トランプ大統領など幅広い交友関係で知られ、事件は注目を集めたが、8月にエプスタイン氏が自殺し、真相は不明のままになった。
MIT傘下で先端デジタル技術の研究を手掛ける「MITメディアラボ」の伊藤所長は8月中旬、謝罪文を発表し、同ラボと伊藤氏個人の投資ファンドがエプスタイン氏から資金提供を受けていたと明らかにした。伊藤氏は13年にエプスタイン氏と知り合ったという。同氏の邸宅を訪問したこともあるが、未成年女性への性的虐待など犯罪行為については知らないと釈明した。
エプスタイン氏は08年に同様の罪で禁錮1年1月の実刑判決を言い渡され、性犯罪者リストにも登録されていた。伊藤氏は事件後の13年からエプスタイン氏と交友関係を始め、最終的に資金を受け入れた。米紙ニューヨーク・タイムズによると、学内には所長辞任を求める声もあるという。メディアラボとエプスタイン氏の関係が明るみにでたことを理由に、複数の著名研究者が同ラボを辞めると表明している。
一方、伊藤氏を支援する動きもある。インターネット上に同氏の功績を強調する専用サイトが新設され「どうか辞めないでほしい」と訴えている。すでに著名な研究者やメディア関係者など250人が署名をしている。日本経済新聞は伊藤氏にコメントを求めたが、6日時点で連絡がとれていない。