朝のNHK連続テレビ小説「なつぞら」が始まってから「これが宮崎駿さん、こっちは高畑勲さん、あっちが大塚康生さんで、そっちは森康二(やすじ)さん、この人はたぶん中村和子さんで、その人は保田道世さんかな――」てな具合に、登場人物のモデルが誰かをいろんな人に説明しました。朝ドラファンのカミさんや、社のデスクや同僚ら相手にですが、逆に教えられることも。関係者や当事者と会う機会もあるもんですから、「小原くん知ってる? 主人公なつの結婚相手って高畑さん(を思わせる人)だって」と、ドラマが始まって早々、盛大なネタバレを食らってしまいまして、「いかんいかん、カミさんには黙っておかないと」と思いつつ、その衝撃(?)の展開を受け止めました。
舞台のモデルは東映動画(現・東映アニメーション)草創期。長編漫画映画制作にかける若者たちの中で、北海道から上京した主人公なつ(演じるは広瀬すずさん)がアニメーターとして成長し、ちょっと偏屈な演出家・坂場一久(あだ名は「いっきゅう」、演じるは中川大志さん)と結ばれ、働く女性、働く母として道を切り開いていく物語。私はかねて、「おもちゃのCM」と低く見られていた巨大ロボットもので画期的な名作を作り上げ時代を切り開く男を支える女性が主人公の「トミノの女房」という朝ドラがいつかできないものかと夢想していましたが(2011年4月18日の本欄「富野監督、家族を語る」参照)、なるほどコッチが先か。NHKもいいところに目をつけたものです。
なつのモデル(のひとり)であるアニメーター奥山玲子さん(1935~2007)と、その夫で「なつぞら」のアニメーション時代考証を担当した小田部羊一さん(1936~)は、業界きってのおしどり夫婦。「なつぞら」のおかげでいろんなメディアでおふたりのエピソードを読むことができましたが、その決定版と言うべき「漫画映画 漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一」(講談社)が、9月4日に刊行されました。
小田部さんは本欄に何度も登場…
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1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。現在は大阪・生活文化部所属。2012年に日本評論社から「1面トップはロボットアニメ 小原篤のアニマゲ丼」を刊行。
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