社内でもカールの全国展開を維持してほしいと要望する声は強かったと、佐藤氏は明かす。
「(引き続き、全国で販売したいという声は)当然ありました。ですが、泣く泣く経営判断として決定したことです。
会社の商品開発というのは、数を打てば当たるというおもしろさを追求していく部分と、強いものをより強くしていく部分の両方があると思う。片方だけじゃ、会社はうまくいかなくなる。
今の明治は、どちらかというと、強いものをより強くという方針に、少しだけ比重がかかっている。ただし、おもしろい商品開発を止めたわけではありません。
商品を増やす時期があれば、絞る時期もある。今は絞る時期だということです。次の中期計画の時は、既存の商品を絞るだけではなく、新しい商品を考えていくことになるでしょう。
そのうち、カールに勝る商品を出しますから、応援してくださいよ。うちも商売ですから、ケンカ別れをしたわけではない。冷静に数字や会社の将来を考えた結果です。泣きながら、止めたんです」
そして、佐藤氏はこう締めくくった。
「今後、カールが爆発的に売れたら、(東日本での販売再開を)考えなければいけないですね。ただ、すぐというわけにはいかない。もちろん、僕はカールが再び売れて、復活することを期待しています。会社内でも期待している人は多いですよ」
社内外に長く愛されただけに、完全に撤退するのは忍びない。ほそぼそとでも製造を続け、将来の復活に賭ける――。この明治ホールディングスの決断は、吉と出るか、凶と出るか。企業が「看板商品」を捨てるのは、かくも難しい。
「週刊現代」2017年8月5日号より