いまさら聞けない系のお話です。「iPhoneの写真はキレイだからそれで十分!」とお思いの方は多いと思います。実際、下手なコンデジよりキレイですもんね。
iPhoneはそもそも電話です。さらに、インターネットに接続して便利なことがいろいろできちゃう現代の超万能アイテム。ついでに写真も撮れるわけですが、ついでとは思えないくらい高画質の写真が撮れるってところは、皆さんもよくよくご存じのことでしょう。
とはいえ、最近やたらと話題の「フルサイズミラーレス一眼カメラ」ってのが気になって仕方がないことも事実。そんな「iPhoneで十分」と我に言い聞かせて「物欲封印」をしているアナタに向けての記事となっております。
その違いを「カメラに詳しくない人」つまり「超初心者(ビギナー様)」でもわかるように、ご説明したいと思います。なので、詳しい人には「そんなこと今さら言うなよ!」的な内容となることをご了承いただきたい!(よく理解している人は、読まんでもいいかも)
今回使用する機材は、スマホ代表のアップル「iPhone X」とフルサイズミラーレス一眼機代表ソニー「α7 III」です。ご存じのとおり、その完成度の高さとコスパのよさで爆発的に売れているカメラですね。だから、比較するには持ってこいだと思います(ミラーレスの中でもこれが気になっている人が一番多しとみて、の選択)。
まあ、そもそもこの両者は「撮れた写真」だけで比較するようなライバルではないのは火を見るよりも明らか。なんですが、なんですが、電話だけどまずまず撮れるiPhoneの写真とフルサイズミラーレス一眼の画質はどれくらい違うのか、フルサイズミラーレス一眼だとどんな写真が撮れるのか、っていうあたりを知っていただけますと幸いなわけです。
「iPhone X」と「α7 III」、写真の質はどのくらい違うのか
ほぼ同じ位置から、同じ被写体(モデルちゃん)を撮影して検証します
今回の検証で、それぞれの設定は以下のとおり(「α7 III」は、ほぼデフォルトに近い設定です)。
iPhone X とおおよそ同じ画角に合わせるため、ソニーの純正単焦点28mmレンズ(SEL28F20)を装着して比較します。※「28mmレンズ」とは「少し広めに写る広角系レンズ」です。「iPhone X」の「1×カメラ」はこの画角に相当します
別売のレンズを装着します
「iPhone X」の撮画像データの大きさは、おおよそ「1200万画素」。対する「α7 III」は「2400万画素」と、「記録ピクセル比」では「倍」ほど違います
このため、今回は「iPhone X」の「記録ピクセル」に横幅を合わせて、「α7 III」の撮影データを画像編集時にダウンスケール(縮小)して比較することにします。また、「縦横比」も違うので「iPhone X写真」は天地をクロップして「α7 III写真」の比率に合わせます。
※iPhone とα7 IIIの写真は、縦横比(アスペクト比)が異なります(iPhone写真標準=3:4/α7=2:3)。
※全図は「基本ノートリミング」で掲載します(iPhoneは天地をカット)。
※お互いを合わせるため画像編集時に「明るさ」のみ調整していることがあります。
まずは、一般的に人物撮影でよく使われる距離「スナップスケール(横位置ウェイストアップ)」で比べてみることにしましょう。
大きな写真(4017×2678 pixel 2083KB)はこちら
大きな写真(4032×2688 pixel 779KB)はこちら
このように、同じ被写体を同じ距離から撮り比べていきます。
iPhone X写真の発色は、派手な印象ですかね。iPhone XのWB(ホワイトバランス)はAWB(オート)ですが、やや黄色っぽく偏る傾向があるように思えます。ちなみに「α7 III」の設定も「AWB(オート)」に設定しています。iPhone X写真と比べてみるとα7 III写真の発色が地味に見えますが、こちらのほうが「素直な発色」と言っていいのではないでしょうか。淡い色の「人肌」の表現は、皆さんが思っているよりはるかに微妙で繊細なものなのです。
肌の色の違い、どうでしょうか?
「フォーカスポイント」のお顔の切り出し写真(ピクセル等倍近く)です。iPhone X写真は、ソフトウェア的に行う「シャープネス」が、かなり強めですね。α7 IIIは、光学的にちゃんと解像しているのがわかります。
「違いがわからない!」って方に向けて、掘り下げて解説しますね。わかりやすいところで「髪の毛」に注目してください。iPhone写真は、「ごまかし気味の髪の毛表現」ではないですか? 1本1本がちゃんと判別できず「ガシガシ」になっていますよね!? うら若き乙女の髪の毛として残念な感じでしょう。α7 III写真は、1本1本ちゃんと解像しており、しっとりやわらかな髪質が伝わるようです。
人物のはるか向こうにキックスケーターで遊ぶ男の子がいますが、等倍で切り出しをしてみた比較です。
背景を切り出してみます。α7 III写真右下のオレンジ色は、モデルちゃんの袖です
iPhone X写真では、男の子がこんなに離れているにもかかわらず、ピントが合っています。つまり、メイン人物にも背景にも全部ピントが合ってしまっています。立体感がないフラットな写真と言えます。α7 III写真では、男の子はボケまくっています。その結果、メイン人物が背景と分離して、浮き立って表現されています。広角28mmレンズにもかかわらず、この空気感の表現。これぞ「フルサイズカメラ」の最大の醍醐味といえる点でしょう!
※iPhone X(Wレンズの)にも「ポートレイトモード」なるものがあり、ソフトウェアを使って擬似的に背景をぼかすことができますが、光学的な本物のボケとは異なります。
次に、現場に猫様がいらしたので、慎重にギリ近寄って撮影してみました。
大きな写真(4032×2688 pixel 1447KB)はこちら
大きな写真(4032×2688 pixel 564KB)はこちら
拡大しなくても、この違いわかりますよね!? α7 III写真は、ふんわりとした世界の中に猫様が浮き立っていらっしゃるようです。
猫様のお顔を拡大してみます
さらに、拡大してみると、猫様特有のふんわりした繊細な毛が表現されていますよね。iPhone X写真は、一見しっかり写っているようですが「線が太く」みえます。たとえて言うなら、先端が丸まった2Bの鉛筆で描いた絵と、0.5mmのシャープペンシルで描いた絵くらいの違いがあるようです。
次に昭和の青春のように、渚を走りながら撮影してみました!
例によって拡大し、子細に観察してみます。
もう、おわかりですよね!? α7 III写真は、ピントが合うべきところはしっかり合って、遠くはボケています。なので、写真全体を見ると、人物が浮き立ってみえます。iPhone X写真は、相変わらず遠くまでピントが合っているようです。よく見ると主題はかなりごまかし気味な解像感です。
渚を走ったついでに、水をかけてもらうという、またまた昭和っぽい古い演出をしてみました。
こんな感じで撮っています
ここで、iPhone Xの、写り品質以外の弱点が……
思ったタイミングでシャッターが切れないのです……。なので、何回かやりましたが、全部、遅れ気味の残念なタイミングの写真に…….。
iPhone Xでは、ここぞ!というときにシャッターを押せませんでした……
いっぽうの「α7 III」は、快速AFにより、ピントはバッチリ!(何も考えなくてもピントが合う) そして、高速連写(8コマ/秒)ができるので、この程度のスピードの被写体でタイミングを外すことはありません!(1テイクだけで楽々ゲットできます)
※「α7 III」は「防水仕様ではない」ので、本気で水をかけないでください。
※あとでよくよく考えると「iPhone X」には「長押し」で連写ができる機能があります。それを使えばいいタイミングの写真を撮れていたかもしれません。反省……。
ボケや拡大したときの解像感では分が悪い「iPhone X」ですが、引き絵ならそこそこいけるんです!
大きな写真(4032×2688 pixel 1571KB)はこちら
大きな写真(4032×2688 pixel 1064KB)はこちら
と思いましたが、寄ってよく見ると、やっぱり比較にならないくらい画質が違うことがわかります。α7 III写真は、写真を大きく切り取っても使えるってことです。切り取らずそのまま使うなら、iPhone X写真もまあ、大丈夫かと。
人物に当たる光の明暗差が少ない「日陰のポートレイト」を撮ってみました。つまり、光の条件がよい条件下での撮影ってことです。
大きな写真(4032×2688 pixel 1552KB)はこちら
大きな写真(4032×2688 pixel 624KB)はこちら
いかがでしょうか?
お顔の拡大を見ると、iPhone X写真もまずまずいいように思えます。ですが、ひとつ戻って全図を比べると、まるで別の場所で撮っているかのように、「空気感」「立体感」が違うことは明白でしょう。
遠くの「Coca-Cola」の文字もハッキリ認識できてしまう始末です……
花ピン写真です。その後ろのお顔のボケ具合にも差が出ました。そして、iPhone X写真の背景の白飛び具合は、かなり極端です。
ここまでiPhone X写真(スマホ)とα7 III写真(フルサイズカメラ)との絵の差をお見せしてきました。読者の皆さまも、「ちょっとわかった」と思っていらっしゃるのでは!?
というわけで、ここからクイズです。
以下の写真、iPhone X写真、α7 III写真、どっちがどっちでしょう!? (写真は拡大できます)
ヒントです。同じ写真をクロップした絵です。どっちがどっちでしょう? (写真は拡大できます)
正解を言っちゃうとつまんないので、答えは伏せたままにしておきますね(てか、簡単でしょ?)。
最後に、今回のモデルさんに「α7 III」を渡し、羽田空港に着陸する飛行機を撮ってもらいました。もちろん、本格的なカメラは初めて使ったそうです(何も説明せずに、ひょいと渡して「撮って」といっただけです)。
飛んでくる飛行機を、パチリ♪
「露出」はオートですし、フォーカスも「AF」。ミラーレスだから「電子式ビューファインダー」で撮影結果がすぐわかるし、失敗はしません! だから、モデルちゃんが撮っても、このクオリティー。
撮影:モデルちゃん
大きな写真(4032×2688 pixel 496KB)はこちら
最近の本格的なカメラ(ハイアマチュア機)は、何も知識なくてもシャッターを押すだけで、かなりの完成度の写真が撮れます。もちろん、入門機でもいいんでしょうけど、ハイアマチュア機だからって、ビギナーが使えないってことないので、いきなりフルサイズのカメラを買ってもいいのでは!?
それでも「一眼レフ」にこだわっている方へ。「電子式ビューファインダー(EVF)」は粗くて信じられないって気持ちはわかりますが、少し昔のそれとは違い、「T*コートの有機EL(α7 IIIの場合)」の場合、「す抜けでそのまま見ている感覚」がするんですよ。
露光の値も反映されるし、「暗すぎ失敗」なんかは極端に減ります。ま、ミラーと異なり「光の速さ」で見えているわけではないですが、その分「レリーズタイムラグ」が速いので、速写性もほぼ変わらないと感じております。ちなみに私は普段「ソニーのミラーレス一眼+他社製マニュアルフォーカスレンズ」しか使わないのですが、一眼レフからミラーレスに変えてからというもの、ピントを外すことがほぼなくなりました。だって、ファインダーをのぞきながら、拡大できるんですもん。
この記事読んでも、全然違いがわからない方は、今のまま「iPhone」で十分だと思います。
※冒頭に申し上げましたが、今回掲載した「α7 III」の拡大写真は、iPhoneに合わせて「ダウンサイズ」していることを、くれぐれも忘れないでください。実際は、これ以上に「写真品質」がいいということなんです。
「α7 III」が、どんなに優秀でも「電話」はかけられません。フルサイズミラーレスカメラは画質がキレイかもしれませんが、iPhoneにかなわない点がいっぱいあります。「スマホ」はいつもポケットに入っているので、すぐに写真が撮れる「速写性」という点で大きなメリットがあることも忘れてはいけません。不意に訪れる「決定的なこと」を逃さない、フツーのカメラでは撮れない写真が撮れる(可能性が高い)ってことも重要なことだと思います。
「α7 III」を常にぶら下げて仕事や遊びの日々を送っている人はいないでしょう。
ちなみに、iPhoneの画角が好きで、画質向上のために「α7 III」を買おうと思っている人! 今回使った、広角単焦点純正レンズ「FE28mm F2(SEL28F20)」と一緒に買うってのはアリだとおもいます。ズームを無視するなんて、通でカッコいいじゃないですか!(一般的にズームレンズより単焦点レンズのほうが画質がよろしいものなのです。それにこのレンズ、F2と明るいのに割とリーズナブルですし、ファーストチョイスとしてはよろしいかと思いますよ。
有限会社パンプロダクト代表
中居中也(なかい・なかや)のショップとブログ
「使える機材のセレクトショップ」
「使える機材Blog!」
銀塩カメラマンとして広告や雑誌でキャリア開始。2010年より「唯一無二の撮影機材通販」にも参入。写真が上手になると定評があるブログを参考にするカメラマン続出中!