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二・二六事件は映画・ドラマでどう描かれてきたか。大河ドラマでは「いだてん」で35年ぶり2度目の登場

二・二六事件を題材としながら“愛情映画”になったのは、製作した松竹の社風も影響しているのだろう。これが、上記の笠原作品を送り出した東映であれば、もっと違ったものになったかもしれない。事実、映画公開後、当時の東映社長・岡田茂は「なんで、お前ら、笠原に松竹で『226』をやらせてるんんだ」と社内で怒ったという(『昭和の劇』)。ただし、『日本暗殺秘録』や『仁義なき戦い』ばりにハードに二・二六事件を映画化したとして、バブルの絶頂期の観客に受け入れられたかどうかは、おおいに疑問が残るところである。

『226』はその筋立てはどうあれ、キャスティングは豪華なものとなった。事実上の主役といえる野中四郎大尉を萩原健一が演じたほか、青年将校には三浦友和・本木雅弘・竹中直人(これほど磯部浅一にそっくりな配役はないと思う)・加藤昌也(現・雅也)・佐野史郎・宅間伸など当時の中堅・若手俳優がそろえられるとともに、鎮圧する側に立った軍人や重臣を金子信雄・高松英郎・仲代達也・渡瀬恒彦・松方弘樹・加藤武・長門裕之などの大物が演じている。かつて『叛乱』や『陸海軍流血史』で反乱軍側の人物(後者では大川周明役)を演じた丹波哲郎が、ここでは青年将校の命運を左右することになった真崎甚三郎大将を演じるなど、二・二六映画の総決算という趣きもある。なお、本作では監修を、事件で牧野伸顕の襲撃に失敗したのち自決した河野寿大尉の兄・河野司が担当し、劇中にも根津甚八と本木雅弘演じる河野兄弟が登場する。(近藤正高)
(後編に続く)

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