《かつてこのように国を憂い、このように行動した青年群像があったという事実を、余分なものを切りそいで、一直線につたえようとしているのだ。昭和維新を夢見、その純真な心、一直線な行動。そのことの是非はさておいて、今日、失われてしまったダンディな精神と行動がここにはある》
『226』では青年将校たちの「純真な心、一直線な行動」をより強調するためだろう、彼らと恋人や家族との別離の場面が差し挟まれる。もっとも、脚本を手がけた笠原和夫としては、こうした志向について後年、《あれは、結局、変な愛情映画になっちゃってね》と語ったように(笠原和夫・荒井晴彦・すが秀実『昭和の劇 映画脚本家 笠原和夫』太田出版)、本作には不満が残るところがあったようだ。笠原は、前出の『日本暗殺秘録』をはじめ、『仁義なき戦い』『二百三高地』『大日本帝国』など多くの実録物を手がけた脚本家である。