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二・二六事件は映画・ドラマでどう描かれてきたか。大河ドラマでは「いだてん」で35年ぶり2度目の登場

『226』(五社英雄監督、1989年)は、久々に二・二六事件を本格的にとりあげた大作として注目された。しかし、『動乱』にはまだ、青年将校たちが農村の疲弊などへの憤りから決起するという筋立てがあったのに対し、『226』ではそうした動機すらほとんど描かれない。そのうえ、登場人物の名前が劇中ではテロップなどで明示されないため、事件について基本的な知識がないとわかりづらいところがある。だが、映画評論家の筈見有弘に言わせると、《この映画にとってはそれはどうでもいいことなのである》という(『226』映画パンフレット)。筈見はこの一文のあと次のように本作を評した。

《かつてこのように国を憂い、このように行動した青年群像があったという事実を、余分なものを切りそいで、一直線につたえようとしているのだ。昭和維新を夢見、その純真な心、一直線な行動。そのことの是非はさておいて、今日、失われてしまったダンディな精神と行動がここにはある》

『226』では青年将校たちの「純真な心、一直線な行動」をより強調するためだろう、彼らと恋人や家族との別離の場面が差し挟まれる。もっとも、脚本を手がけた笠原和夫としては、こうした志向について後年、《あれは、結局、変な愛情映画になっちゃってね》と語ったように(笠原和夫・荒井晴彦・すが秀実『昭和の劇 映画脚本家 笠原和夫』太田出版)、本作には不満が残るところがあったようだ。笠原は、前出の『日本暗殺秘録』をはじめ、『仁義なき戦い』『二百三高地』『大日本帝国』など多くの実録物を手がけた脚本家である。

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