二・二六映画第1号の原作は直木賞受賞作
二・二六事件を扱った映像作品は数多い。映画では、1954年に公開された『叛乱』で初めて同事件がとりあげられた。その原作である立野信之の同名小説(1952年刊)は、当時未公開だった青年将校らの遺書などを駆使して事件の全貌を初めて描き、直木賞も受賞している。それだけに、映画でも事件の経過をかなり現実に即して描いている。たとえば、反乱軍鎮圧の勅命(天皇の命令)が下され、青年将校の多くが下士官・兵を原隊に戻して帰順する方向へと傾いたとき、当初は決起に慎重だった安藤輝三大尉が頑なに抵抗したことなど、事件の内実をこの映画で初めて知った観客も多かったのではないか。
終盤では、非公開・再審なし・弁護人なしの軍法会議により、事件を首謀した青年将校17名および事件に関与したとされた北一輝・西田税に死刑判決が下され、順番に処刑されるさまが描かれる。銃殺シーンが延々と繰り返されるのは、正直、陰鬱な気持ちにさせられた。つくり手の側には、事件の重大さを伝えるためには、ここまでしつこく描かねばならないという思いもあったのだろう。